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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第2章 幽霊騒動
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第49話

 無事に試験を終え、掲示板に成績が張り出されていた。

 いつもと変わらず、セナは上位をキープし、剣術科に移り、初めての試験を、リュートは中盤の成績を収めたのである。

 それは誰も思ってはいない成績で、剣術科では話題に上がっているほどだ。


「信じられない。何で、こんなやつが、あそこの位置にいるのよ」

 不機嫌な足取りで、セナが歩いている。

 こんなやつと名指しされたリュートの試験結果に、こんなところだなと、余裕な態度を窺わせていたのだった。

 ますます、そんな姿勢にぼやかずにはいられないセナだ。

 セナを初めリュート、トリスの三人が、保健室に向かっていたのである。


「妥当だろう」

「そうだな。まずまずのところだな」

 二人は、どこが変かわからないと言う顔つきだった。

 剣術科の試験結果について、剣術科では、どよめきが起こる中、魔法科では、まずまずのところじゃないかと、生徒たちが平然とした様子をみせていたのである。


「転科したばっかりなのに、中盤なのよ。凄く変じゃない」

 思いっきり、セナが眉を潜める。

「筆記は、上位につけていたぞ」

 試験をしたリュートより、トリスの方が詳しい。

 筆記のテストで、上位をつけていたリュートだった。

 だが、実技の方が、他の生徒と比べ、少し大差があり、中盤の成績に落ち込んだのである。


 そうだったのか……と、一人呟くリュート。

 順位を気にしていたが、他のことに、つくづく無関心である。


「実技がなかったら、セナといい勝負だったな」

 憤慨しているセナに目を細め、トリスがボソッと呟いた。

「……いい勝負じゃないわよ。余裕で、私が勝っているわよ」

 筆記の順位は、大して変わらなかったが、点数にそこそこの開きがあった。

「そうか」

 意味ありげな含み笑いを、トリスが滲ませている。

 ジト目で睨むセナ。


「ところで、トリスは、どうだったのよ」

「一応、俺たちのクラスは、五十位以内に入っている。ラジュールとの条件だからな。つまり、俺も、五十以内に入っている訳だ」

 当たり前な顔を、覗かせていたのである。

 優秀な成績に納得できず、セナがブスッとしていた。


(何で、勉強もしていないトリスが、そんなところに入れるのよ)


「ホント、信じられない。どうしたら、フラフラしていて、五十位以内に入れるのかしら?」

「実力だろう」

 ケロッと、即答した。

 さらに、セナの癇が触る。


 トリス初め、魔法科の実力は、認めざるをえない部分を感じ始めていた。

 ただ、素直に、それを認めることが、できなかったのだ。

 単に、矜持の問題である。


「強運でしょ」

「好きに、想像してくれ」

「えぇ。ただの強運だけよ。実力じゃないわ」

「強運も、実力のうちだと、思うけど?」


 三人が喋っていると、目的地の保健室に到着した。

 二人の言い合いを尻目に、リュートが扉を開くと、そこにグリンシュと、幽霊のフィーユが話していたのである。

 瞬時に、硬直するセナとトリス。


 友達感覚のリュートが、二人に気軽に挨拶を交わす。

「よっ。グリンシュ、フィーユ」

「試験は、どうでした?」

 フィーユとの会話を中断し、開放感に慕っているリュートに窺った。


「中盤の位置だな。それに面白かった」

「それは、よかった」

 青白い顔で、フィーユが微笑んでいる。

「おう」

「二人は?」

 ホクホク感のリュートの背後にいて、強張っている二人。

 チラリと眺め、フィーユが声をかけた。


 フィーユと言う幽霊の存在に、まだ慣れていない。

「「……」」

 答えない二人に成り代わり、リュートが答える。

「いつもと、同じみたいだ」

「そう。それはよかったね」


 二人の態度に、気を悪くする様子もない。

 セナとトリスは、何で幽霊のフィーユが、保健室にいると逡巡していた。


「さぁ。そんなところにいないで、入ってください」

 ありふれた日常のごとく、振舞うグリンシュ。

 促されるように、二人が保健室に入ってきた。

 けれど、一定の距離は、保っている。


「どうした?」

 声をかけるリュートに、訝しげながら二人は同時に、いやと返すのみで、他に何も言わない。

 違和感もなく、話しかけようとするリュートより先に、意を決した顔色が優れない、トリスが尋ねる。

「グリンシュの知り合いか」

「フィーユとですか」

「ああ」

 心の中で、他に誰がいると突っ込む。


 それと同時に、もしかすると、他にもいるかもと、周囲を窺う。

 それはセナも同じで、トリス同様に周囲を捜していた。


「フィーユしかいませんよ。今のところ」

「今のところって、まさか……」

 いやな予感に、口をあんぐりと開ける。


(普段から、出入りしているのかよ)


 三人の会話に、入っていくリュート。

「他にも、よく来るのか」

「えぇ。保健室は、間口が広いですから」

 頭を押さえ込む二人。


((いたのかよ))


「俺、会っているのかな」

 しみじみと、リュートが過去を振り返っている。

「会っていますよ。たまにリュートの話が、出てきましたから」

「そうか」

 さらに、顔色の悪くなった二人。

 グリンシュが面白げな視線を巡らせていた。


「具合悪そうですね。寝ていきますか」

「「結構です」」

 脱兎のごとく、二人が保健室を出て行ってしまった。

 それを呆然と、リュートが見送る。


「あいつら、どこへ行ったんだ? 保健室で、休憩しようって言っていたのに」

 唐突に出て行った二人に、首を傾げた。

「気にすることないよ」

「そうだな」


「聞きましたよ。フィーユと、張り込みしたそうですね。楽しかったですか?」

「勿論」

 久しぶりに、面白かったと、笑顔を滲ませていた。


「グリンシュが、君たちに来る頃だろうからって、ケーキを焼いていたよ。僕は食べることできないけど、一緒にいていいかな? お喋りをゆっくりしたいし」

「当たり前だ、フィーユ。俺たちは友達だろう」

「そうだね」

「では、早速焼き上がったケーキを、用意しましょう」

「頼む」

 出て行ってしまった扉を、グリンシュが見つめる。


「二人は、きっと戻ってきませんね」

 いたずらな笑みを覗かせ、下がっていった。


 試験のことについて喋る、リュートの言葉を耳にしながら、二人はテーブルへ向かっていった。

 談笑する姿は、他の生徒と変わりはない。

 人間と幽霊だと言うこと以外はだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

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