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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第2章 幽霊騒動
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第48話

 久しぶりにすっきりとした気分で、仮眠を取ったリュート。

 謎を解明できた満足感から、堂々とカイルの授業を、居眠りしていたのである。

 怒りに震える拳で、熟睡している頭を殴った。

 だが、決して、目を醒ますことがない。

 ピクリとも動かず、昼食のチャイムが鳴るまで、眠っていたのだった。




 一日の仕事を終え、お疲れモード全開のカイルが、自分の部屋へと戻ってくる。

 教師専用の寮は、生徒たちの寮と仕組みが同じで、女性教師の寮に、男性教師は出入りできない。

 特別な許可が出ない限りはだ。


 重たく、だるい身体で、ゆっくりと扉を閉じた。

 伏せていた顔を上げ、思わず、身体がフリーズする。

 部屋にいておかしい人物が、のほほんとした雰囲気で、楽しげに花を生けていたからだ。


「カテリーナ!」

「はい」

 呼ばれ、ニコニコとする顔を、部屋の主であるカイルに傾けている。

 目の前に、置き手紙を残し、ふらりと出て行ってしまったカテリーナがいたのだ。


 生徒以上に、セキュリティーが難しい教師の部屋へ、入り込んでいたのである。

 目を丸くし、愕然としているカイルに、気づく様子もない。

 自分のペースで、話しかける。

「ただいま。カイル」

 ニッコリと、愛らしく微笑む。


「お帰り」

 脱力感が否めない。

 問いただすよりも、挨拶の返しが先だった。

 長年の癖でもある。


「今日は、早かったのね」

「ああ。ところで、どうやって、部屋に入った? カギだって、掛かっていただろう?」

 花瓶に、摘んできた花を、生けている。


 女性教師の寮へ入るより、簡単だが、入るに許可が必要だった。

 カギが掛かっている部屋に入ることなんて、部屋の主である者が入れない限り、不可能だった。

 けれど、すでにカテリーナは、カイルの許可なしに、部屋へ入り込んでいたのである。


「グリフィンに、入れて貰ったの」

 あっけらかんと、素直に吐露した。

「あのヤロー。簡単に、寮へ入れるなよな」

 同じように剣術科の教師で、同期生でもあり、つるんでいた仲間の一人であるグリフィンが、カテリーナを寮へ招き入れた光景を想像し、ギュッと拳を握り締める。

 想像は、当たっており、カテリーナの入れての一言で、意図も簡単に寮へ招き入れたのだった。


「部屋のカギは、どうした? 掛かっていたはずだが?」

 カギを開け、部屋へ入っていたのだ。

「えぇ。掛かっていたわ。でも、ちょうど通りかかったラジュールに、開けて貰ったの」

 部屋へ入った経緯を、悪びれる様子もなく語った。


 訝しげに、カイルが眉を潜める。

「何で、ラジュールが、俺の部屋のカギを、持ってる?」

 疑問、そのままに口をついた。

 不審な事実に、頭を悩ませる。


 寮の部屋のカギは、本人が一つ、管理人がもう一つを管理しているのだ。

 カギは、二つしか存在しない。

 手に持っているカギに、視線を下ろした。


「簡単よ。ラジュールは、三つ目のカイルのカギを、持っているの」

「なぜ?」

「私が、いつでも、入れるように」

 眩しすぎる微笑みを振りまく。

「……」


「みんな持っているわよ。さっきも話したラジュールでしょ、それにデュランにグリフィン、後は……」

「そんなに、俺の部屋のカギを、持っているのか……」

 自分の知らないところで、部屋が出入り自由だったことを思い知る。

 そして、頻繁に自分の物がなくなっていたことを、思い出していた。

 出入り自由な部屋へ、入り込んでは、自由に、カイル不在の中で物を借りていたのだ。


「えぇ。困らないように」

 天使の微笑みに、見惚れる。

 呆然と立ち尽くすカイルだった。

「カイル?」


 これまでの不可思議な事実と、今回知った事実が合致し、大きな嘆息が零れた。

「カギを掛けても、意味ないな」

「そうね。でも、大概忘れているわよ。カイル」

 更なる追い討ちをかける。

 みんながカギを所持していても、カギを掛け忘れるのが頻繁だった。


「だから、誰かに頼まなくても、よく入れたわ」

 思わず、自分の無頓着さを呪うカイル。

「……そうか」

 渇いた笑いしか出てこない。


 話しながらでも、カテリーナは摘んできた花を、生ける手を忘れることもなかった。

 話している間に、ちょうど生け終わったのである。

「さぁ、できましたわ」

 完成した生けられた花を、満足げに眺めていた。


 鮮やかに、黄色系で統一された花々である。

 その視線を、生け花から落ち込んでいるカイルに、視線を巡らせた。

「疲れていたでしょ。花を見ると、気持ちが落ちつくわよ」

 無邪気に微笑むカテリーナと、生け花を捉えている。


「そのために、出掛けたのか?」

「えぇ。だって、近頃のカイルったら、目にクマができているのよ」

「……ありがとう」

 小さく笑みが、カイルから漏れていた。


「じゃ、帰るね」

「送っていく」

「ありがとう。カイル」

 カテリーナが微笑み、それにつられるように、カイルも穏やかに微笑んだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

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