第392話
明けましておめでとうございます。
今年、最初の投稿となります。
いつものように学院を抜け出し、カテリーナは通い慣れたリーブの屋敷に訪れていたのである。
リュートとミントは知らなかったが、時々、学院を抜け出し、屋敷にいることが多いリーブの元に、よく遊びにきていたのだった。
テラスで、二人と一羽でお茶会をしている。
テーブルには、カテリーナが持参したグリンシュ手作りのケーキやお菓子が並べられていたのだ。
友達との語らいの時間を楽しんでいた。
お喋りの合間に、優雅な所作で、食べている二人。
その様子を、リーブの使い魔である黒い鳥であるゴードンが眺めている。
「こんな時期に、抜け出してもいいのか?」
当たり前のようにいるカテリーナに、冷めた眼差しを注いでいるゴードン。
気まぐれで、学院から出てくるカテリーナに慣れていたとは言え、この非常識な時期に、来てもいいものなのかと巡らせていたのだった。
「こんな時期?」
首を傾げているカテリーナ。
大きく嘆息を漏らしていた。
「『バトル』の時期だろう? 生徒たちに、推薦を出す時期に入るんじゃないのか?」
「えぇ、そうですね。でも、他の先生たちが、頑張ってくれますから。それに、魔法科は実力主義ですし、上から順番に、声をかけていくだけですから、簡単ですよ」
何でもないような顔を覗かせている。
魔法科は実力主義で選ばれるからと言って、カテリーナが言うような簡単ではない。
他の教師たちが、苦労しているに過ぎなかった。
全然、仕事をしようとする気配が、感じられなかったのだった。
のほほんとしているカテリーナに、ゴードンがまた嘆息を零していたのだ。
「いつものことじゃない」
あっさりと、流してしまうリーブに、ゴードンが半眼している。
「リュートは、出る気になっているんだろう?」
以前、遊びに来た際に、カテリーナが教えていた。
だから、密かに、ゴードンも、リーブも、『バトル』を楽しみにしていたのである。
お喋りをしながら、カテリーナが持参したグリンシュお手製の菓子を食べていたのだ。
「えぇ」
ニッコリとした顔で、カテリーナが認めている。
「で、剣術科の方では、どうなんだ?」
「真面目に、稽古していますよ」
「そうか。カイルも大変だな。リュートの面倒を見させられて」
安易に、問題を引き起こすリュートたちの姿を、ゴードンの中で想像できていた。
目の前にいるリーブも、学生の頃も、今も、問題を起こすことに、天才だったからだ。
「苦労しているカイルの姿が、目に見えるよ」
「苦労していますよ」
ふふふと笑っているカテリーナだった。
リーブ同様に、問題児であるリュートの担任を任せられたカイルのことを、非常にゴードンは案じていたのである。
「カイルだから、大丈夫だろう」
信頼している声音で話すリーブ。
学院時代の同期であり、一緒に遊んだ仲間であるカイルを信頼していたのだった。
「そうですね」
フワフワした雰囲気を醸し出しているカテリーナが笑みを漏らしていた。
「お前たち……」
ジト目になっているゴードンである。
「でも、出るのなら、見たいな……」
やや悲しげな顔を、リーブが覗かせていた。
「水晶で、見ればいいのでは?」
時折、水晶を使い、リュートたちの姿を、リーブは見ていたのである。
リュートやミントの様子が気になり、遠隔操作して、リュートたちの様子を遠くから眺めていたのだった。
リーブが住むアミュンテ村から、常に、リュートたちの様子を見ていた。
ゴードンが、引くぐらいに。
「直に、見たい」
口を尖らせているリーブだ。
水晶を通して見ることに、飽き飽きしていた。
魔物たちが活発になっていることから、同じ〈法聖〉のジジイたちから、監視するように命じられていたのである。
「ジジイ共め……」
恨めしげな双眸を、注いでいたのだ。
「大変ですね」
クスッと、カテリーナが笑っていたのだった。
「こんなこと、したくない」
「頑張ってください」
「カテリーナはいいな……」
羨ましい顔を向けているリーブに対し、カテリーナが楽しげな顔を滲ませていた。
「楽しいですよ」
口を尖らせているリーブ。
「真面目なリーブなんて、ヘンですよ」
「わかっている」
「なら……」
「ジジイ共が言う通り、魔物たちが活発になっている」
「そんなに?」
「ああ」
「そうでしたか……。なら、真面目にしたくては、いけませんね」
「〈法聖〉なんて、ほしくなかった」
子供のように、リーブが不貞腐れていたのだ。
帰省しなかったせいで、リュートの成分が少なかった。
「しょうがありません」
大きく溜息を吐いていたのだ。
「この前、帰ってこなかったから、リュートの成長した姿を、直接、見ていないんだ。カテリーナは、いいな、直に見られて……」
「楽しいです。いろいろと、お話しますし……」
カテリーナが微笑む。
それに対し、リーブがムッとした顔を覗かせていた。
「リュートやミントと、話がしたい。反抗期のせいか、このところ、話をしてくれない……」
ぼやきが止まらない。
駄々を捏ねているリーブの姿を、ゴードンの双眸が捉えている。
「自業自得だ。リーブが気絶させるから、悪いんだろうが……」
ゴードンが突っ込んだが、リーブは聞く耳を持たない。
「早く、リュートやミントに、会いたい」
さらに、ごねていたのだった。
「成長していますよ?」
ますます、カテリーナが煽っていった。
「知っている」
「水晶で、見ていますものね」
「当たり前だ。私の愛する子どもたちだぞ?」
「知っていますよ」
楽しそうに笑っているカテリーナである。
リュートやミントの傍にいられるカテリーナが、羨ましくて仕方がない。
大きく頬を膨らませている。
「カイルも、元気そうだな」
「元気ですけど……」
困った顔を、カテリーナが滲ませていたのだ。
頑張り過ぎるカイルの姿に、やや心配をしていた。
「グリフィンやスカーレットがいるんだ。そう心配することもないだろう」
カイルの性格を、心得ている二人がいることを告げても、カテリーナの表情が晴れない。
「ですが……」
さらに、翳り出すカテリーナ。
やれやれと言う顔をしているリーブとゴードンだった。
「だったら、気晴らしに、どこかへ、連れて行けばいいだろう?」
ゴードンの意見に、首を傾げていたカテリーナ。
徐々に、嬉しそうな顔をし始めている。
「それは、いいアイデアですね」
「だろう」
「だが、それは、『バトル』が終わってからで、いいだろう」
リーブの話に、頷くカテリーナ。
さすがの二人も、『バトル』の時期が近づく、この忙しい時期に、連れ出すのは、不謹慎だと抱いていたのだ。
「そう言えば、グリフィンの部下たちが、以前よりも、増えたのではないか?」
水晶を通してリュートたちの姿を見つつ、グリフィンの部下たちの様子も、しっかりと見えていたのだった。
リュートを観察する延長戦で、苦労をしているグリフィンやその部下たちの様子も窺っていたのだ。
「そうなんですか?」
僅かに、目を瞠っているカテリーナである。
グリフィンやスカーレット、カイルからも、そんな話を聞いていなかった。
「増えているぞ」
「知りませんでした。でも、リュート君たちを調べようとする人たちが、絶えないとぼやいていたので、増やしたのかもしれませんね」
「そうか。調べて、どうするだ」
鼻で笑っているリーブに、半眼しているゴードン。
(お前の子供だからだろうが)
「そのせいもあり、他の先生たちも、大変みたいです」
同じ教師でありながらも、我関せずと言う口振りに、小さくゴードンが息をついていた。
(お前も、その先生なんだから、少しは頑張れば、他の者たちが、助かるだろうに……)
「もっと、痛めつければ、少しは減るんじゃないのか?」
「そうですか?」
「そうだ。グリフィンに容赦なく、叩けって伝えてくれ」
「わかりました。伝えておきます」
「そうしてくれ」
(ラジュールたちも、参戦すれば、いいだけの話ではないのか……)
遠い目をするゴードンだった。
その後も、リーブとカテリーナの話は、それぞれの話の近況に変わって、楽しいひと時を過ごしていたのである。
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