第391話
クラスメートの友達たちと、ミントが歩いていると、慌てふためいているカイルの姿を見つけていた。
辺りを、キョロキョロしているカイル。
友達と一緒にいるミントの姿を捉え、ミントに近づいていった。
ミントのクラスメートの友達は、突如、教師のカイルが近づいてきたので、萎縮して立ち止まっている。
「俺の生徒たちが、どこにいるのか、知らないか?」
「稽古だよ」
あっさりと、ミントから告げられた。
「稽古?」
訝しげな顔を、カイルが覗かせている。
授業の担当教師から、生徒たちが来ていない知らせを受け、何かあったのかと、来ない生徒たちを探していたところに、友達と談笑しているミントに出くわし、ミントに尋ねてみたら、容易く解答を得られたが、答えの内容をすぐに理解できないでいたのだ。
「そうだよ。お兄ちゃんの稽古に、つき合わされているの。剣術科と魔法科で」
「……」
何でもないような顔でいるミントを、捉えたままでいるカイル。
「私も、誘われて出るつもりだったんだけど、友達と、お出かけするから、断ったんだよ」
ふふふと笑っているミントだが、友達たちは困惑の顔を滲ませていた。
「……自ら、志願したのか?」
渋面のまま、カイルが聞いてきたのだった。
「違うよ。承諾した子もいれば、承諾しなかった子もいるから、トリスたちが、罠を仕掛けて、捕獲して、連れて行ったと思うけど」
とんでもないことを、口に出していると言う自覚がない。
ミントの友達たちは、それって、不味くない?と言う顔を覗かせていたのだった。
だが、ミントは気づかなかった。
てへへと、笑っているトリスたちの悪ガキの顔を、カイルが掠めている。
「あいつら……」
低い声音で、怒りを燃やすカイルだ。
ミントの友達たちが、怖がっていたのだ。
きょとんと、カイルを見上げていた。
何で怒っているのか、わからなかったのだった。
「ちなみに、どんな稽古だ?」
冷静に務めようとしているが、なかなか、上手くいかない。
ますます、ミントの友達たちが怯えている。
「簡単だよ。お兄ちゃん対みんなだよ」
「リュート一人に、全員で、突っ込むのか?」
カイルが、顔を引きつらせていた。
(それを、稽古と呼ぶのか? 稽古じゃなく、リュートを相手にした、戦闘だろう、それは……)
「うん」
「で、剣術科と魔法科の全員か?」
「剣術科は、全員みたいだけど。魔法科は、バドが外されているみたい。バドがいると、収拾がつかなくなる可能性があるから、最初から、除外みたい」
トリスから聞いた話を、そのまま教えている。
「……」
ミントの言葉を聞き、確かにと巡らせているのだ。
(こんな真似、普通はしないぞ。だが、リュートだから、できてしまうのか……。ま、バドまで加わったら、派手になって、相当の怪我人が、続出しているはずだ……。トリスたちも、その辺は、考慮したようだが……、だが、『バトル』を前に、こんな大掛かりなことを計画しなくとも……)
ますます、カイルの顔が歪んでいく。
「どうしたの?」
「何で、こんなことを?」
やや声音が、低くなっていた。
「この前のアガールの街で、あんまり、いい戦いができなかったからね。みんな、弱いんだもん」
ぷっくりと頬を、含まらせていたのだ。
面白みに欠ける戦闘に、ミント自身も不満を抱いている。
「……」
ある程度、グリフィンから報告を受けていた。
けれど、物足りないからと言って、発展途上の生徒を巻き込むなと、突っ込みたいカイルだった。
『バトル』の前に使えなくなったら、どうするつもりだと、落ち着き始めた怒りがワナワナと浮上していったのだ。
「トリスが言っていたよ。これで、少しは、大人しくなるって」
「大人しくさせるために、俺の生徒を使うな」
険を帯びた眼光で、愚痴を漏らしている。
「そお? 剣術科にとっても、いい稽古になるんじゃないの?」
首を傾げて、どこが、カイルの不満なのか、理解できないミントだった。
「ミントたちは、まだ、知らないだろうけど、『バトル』が近づいているんだ。そのため、みんな頑張っているのに、身体が使い物になっていなかったら、推薦が……」
思案する顔を見せている。
「知っているよ。チェスターから聞いているし、私に、推薦を出すから、出ないかって、言われているから、出るか、検討中なんだ」
ニッコリ笑っているミントの姿に、視線が注がれていた。
(前にも言っていたが、結局、ミントにも、出す気なんだな……。魔法科の基準は、確かに……実力主義だが、これは、意趣返しも、含まれているな……)
心の中で、盛大な溜息を、カイルが漏らしていたのだ。
「……そうか」
「うん。たぶん、もう終わっているんじゃないの?」
のんびりと話している暇はないと、ようやく、気づくカイルだった。
「どこだ?」
「グランド」
「どこの?」
「どこだったろう?」
首を傾げているミント。
「わかった。とにかく、グランドを回ってみる」
「そうして」
「じゃ」
「じゃね」
ミントに別れを告げ、近くのグランドから、回ってみようと駆け出す。
読んでいただき、ありがとうございます。
今年、最後の投稿となります。




