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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第9章 魔法なんて大っ嫌いだぁー
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第388話

 滴る汗を、無造作に拭うセナ。

 リュートとの稽古を終え、その場に座り込んでいたのだ。

 誰よりも、激しく打ち込んでいったこともあり、消耗が激しく、アニスに回復して貰っても、動くことがままならない。

 対峙したリュートは無傷で、自分たちの方がボロボロで傷だらけと言う状況に、唇を小さく噛み締めてしまっていた。


 誰一人として、リュートに傷をつけることができなかった。

 そして、セナ自身も、その一人であることを自覚しているものの、剣の他に、魔法を混ぜ込む戦法になったリュートに、一太刀も入れられなかったことに矜持が傷つけられていたが、周りに仲間がいる以上、感情を押さえ込んでいたのだ。


 セナの近くに、ローゼルやダン、パウロがいた。

 最初は、バラバラに切り込んでいったが、途中から、連携した方が効率的だと判断し、ローゼルたちと連携を駆使する戦法で挑んでいったのである。

 けれど、なす術がなかった。


 一息、セナがついていた。

 少しずつ、身体は癒えてきているが、まだ、動かせない。

 さらに、周囲に双眸を巡らせている。

 他の班のメンバーや、魔法科も混じっていた。

 ここに集められたメンツは、魔法科七年A組の生徒と、剣術科七年一組の生徒だった。

 どちらも、リュートのクラスメートだ。

 これだけの人数が束になっても、リュート一人に、傷一つつけることができなかったのである。


 もう一度、息を吐いていたのだ。

 稽古を終えた直後に、稽古に参加していなかったアニスから回復して貰っていた。

 身体の具合としては、まだ、横たわっていたいところだが、『十人の剣』の称号を持つ矜持で、セナは起き上がっていたのである。

 チラリと校舎の方へ、視線を巡らせていた。

 戦闘を終えてから、時間だけが過ぎていく。

 本来であれば、次の授業にいかなければならない時間だったが、起き上がることが精いっぱいで、立ち上がり、歩くことが億劫だった。

 大きく、息を吐くセナ。


「……大丈夫?」

 班のメンバーの様子が気になり、セナが声を掛けていた。

「……あれだけの人数を相手に、平然としているなんて」

 眉間にしわを寄せ、ローゼルが不満を口に出していたのだ。

 セナよりも、回復していた。

 無理して動こうとすれば、動くことができたが、無理をしないローゼルだった。

 スッキリした顔で、立ち去っていったリュートの姿を思い返していたのである。

「リュートだからな」

「だよね」

 このところ、リュートたちと行動を共にすることが多いダンとパウロは、これがリュートだからと、悟りを開いたような、淡白な口振りだった。


「麻痺し過ぎよ」

 半眼しているローゼル。

 やれやれと、二人が首を竦めている。

 回復したとは言え、疲労が抜けないローゼルが盛大な溜息を吐きながら、まだ、動けないでいる面々を見渡していた。

 全滅した状態だ。

 ローゼルのように、ある程度、無理をすれば動く者もいたが、精神的なダメージも酷かったので、その場に止まっていたのだった。

「今日一日、使い者にならないんじゃないの? これじゃ」

 冷静に状況を見て、ローゼルが口に出していた。

「……」

 誰も彼も、動かない姿に、先生たちからの苦情が、頭の中を掠めていくセナ。


(リュートが来てから、小言ばかり貰っている……。リュートのせいだ!)


「俺も、無理だな。今日は休む」

「うん」

 お前は、どうするんだ?と、渋面になっているローゼルに、双眸を巡らせているダンだった。

「私も、無理よ。で、セナは?」

「……出たいけど、さすがに……」

 視線を彷徨わせている。

 この後の授業のことを逡巡しているが、身体が上手く動かすことができない。

 自身の魔法の耐性に弱い体質を隠すには、授業に出るべきだと抱くが、身体が言うことを利かなかったのだ。

 そして、このところ、リュートたちと遠出することが多く、授業が休みがちになっていたので、これ以上、休む訳にはいかないと、いろいろと揺れ動いていた。

 だが、思う以上に、身体が機能しない状況に、明日の授業のため、休むべきかと思い悩んでしまっていたのだ。


「リュートのやつ、一段と、動きのキレが増していたな……」

 先程の稽古を、真面目に振り返っているダンである。

 ローゼルとセナが話している間に、持っていた薬草を使い、さらに回復していたのだった。

「そうね」

 ダンの言葉に、ローゼルが素直に頷いている。

 ローゼルも、稽古の最中に、何度もリュートに対し、舌打ちを打つほどのいい動きをされ、戦闘をしつつも、対峙しているリュートを分析していたのだった。

 パウロも混じって、戦闘後の考察をしている三人。

 リュートが加入する前は、ダンとローゼルは頻繁に衝突することが多かったが、このところは、衝突することは少なくなり、戦闘後の考察をし、さらに自身の能力がよくなるように、互いにいろいろと考察していたのである。


「よく考察しているわね、あんだけ、戦って」

 呆れ顔で、ガルサがセナに声を掛けてきた。

 その間も、ローゼルたちの考察は、ヒートアップして行く。


(私たちも、負けていられないわね……)


「戦ったばかりだからでしょう」

 見慣れている光景になっているセナだ。

「セナは、いいの?」

「私は……、疲れた」

 同じ班長であるガルサに、本音を吐露していた。

「そうね。私も、疲れた」

 疲労が抜けていない顔を、ガルサも覗かせている。

 顔を見合わせ、互いにボロボロの姿に苦笑していたのだった。


「前よりも、いい動きするようになったじゃない?」

 稽古の際、奮闘していたガルサを賞賛していたのだ。

 的確な指示を出しながら、リュートに仕掛けていく姿を目にし、以前よりも、腕を上げている姿に負けられないと、戦闘中に抱いたことを思い出していたのだった。

「鍛えられたからね、魔法科に」

 立ちはだかる壁のようなトリスたちに、ボロボロになるまで、鍛えられたことを思い返しているガルサ。

「いい刺激になっているわね」

「それでも、リュート一人を、傷をつけられないなんて……、どんだけ、凄いのよって感じよね」

 呆れているガルサ。

 小さく、セナが笑ってしまっていた。

「ホント」


「七年生だし、『バトル』の予選に出るために、推薦を狙っていたけど……」

 僅かに、ガルサが顔を曇らせている。

 『バトル』に出場するために、推薦を貰えるように頑張っていたガルサの姿を目にしていたので、ガルサが何を落ち込んでいるのか、セナは理解していたのだ。


(あれだけ、トリスたちに鍛えられたのに、一矢も報われなかったことで、落ち込んでいるんだろうけど。リュートを見て、考えることは、やめた方がいい……。でも、私も未だにリュートを基準に見ちゃうこともあるんだけど……)


「本選は、無理かもしれないけど、予選には……出られるんじゃないの?」

「そう思う?」

 真剣な顔をセナに注いでいる。

「リュートは別格。リュート抜きで、考えないと」

「……」

「ガルサ。自信家のあなたは、どこにいったの?」

 励ましてくれるセナの姿に、沈んでいた気持ちが少しだけ浮上していった。

「結構、腕、上がっているわよ」

「私、推薦は、貰えそう?」

「このまま、鍛錬をおこたらず、精進すれば、いけると思うけど?」

 本心を口に出していたのだった。

 世辞ではなく、セナの本心を読み取ったガルサの口元が上がっている。

「頑張る」

 ガルサの眼光が、爛々と輝かせていたのだ。

読んでいただき、ありがとうございます。

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