第387話
リュートとの稽古に、無理やり付き合わされた面々を、忙しく周って、手際よく回復しているアニス。
稽古には参加しないで、終わった後の回復役として待機し、終わると同時に、アニスは酷い者から、順次回復に周っていたのである。
粗方、酷い状態の者たちを脱出させたところで、近くで座り込んでいたカレンが声を掛けてきたのだった。
「お疲れ」
カレンに双眸を巡らすと、稽古が終わると残っていた薬草で回復させ、話せる状態まで回復していたのだ。
リュートとの戦闘に意気込み、この面々の中でも、最前線で攻撃をし続け、数多の傷を受けていたのである。
そうした姿を、しっかりと、アニスが見届けていた。
「回復する?」
「大丈夫。アニスの方こそ、疲れているんじゃないの?」
「私は、大丈夫」
微笑むアニスだった。
まだ、まだ、ぐったりしている面々に、双眸を注ぐカレン。
同じようにアニスも、グランドから立ち去ることもできない面々を見つめていた。
「もう少し、できると思っていたんだけどな……」
やや悔しさを滲ませながらも、カレンの声音は、やりきった感を混じっていたのだ。
やれるだけやることができ、それなりに満足感は得ていたのだった。
「魔法だけじゃなく、剣術や体術もやろうって、ホント、バカみたい。それで、ものにしているんだから、やんなる。リュートは、一体、どこまで強くなれば、気が済むのかしら」
「そうだね」
素直に相槌を打っているアニスだ。
「自信……あったんだけど。あっと言う間に、終わっちゃった……」
稽古が始まると、やけ糞になった剣術の面々と共に、やる気を漲らせたカレンも飛び出していって、余裕でいるリュートと対峙したが、ものの数分で、一回目はやられてしまっていたのである。
やられたとしても、そこで諦めることもなく、すぐさま、回復して貰い、リュートとの戦闘に戻っていったが、最後には、仕留められてしまっていたのだった。
「粘っていたじゃない」
「でも……」
先程の、稽古と言う名の戦闘を振り返っていた。
飛び出していったが、慎重に、リュートにぎゃふんと言わせる攻撃をしたいと動いていたが、戦闘が終わり振り返ってみると、リュートに踊らされているような感覚が否めなかったのだ。
「リュートに読まれていた……。だから、もっと、違う動きをすべきだった」
「そうだね。不敵に笑っていたものね」
「うん……。ホント、まったく、隙がない。ホント、どこまで強くなるのよ」
目を眇めているカレンを見て、小さく笑みを漏らしている。
対峙している魔法科や剣術科の動きを見切っているリュートの姿にアニスも感嘆しつつ、自分なら、どう動くかと、頭の中でシミュレーションしていた。
「絶対に、一撃、加えてやる」
メラメラと、闘志を燃やしているカレン。
メチャクチャ、酷いやられ方したはずなのに、再選の灯が灯っていたのである。
「倒さないの?」
「倒させられる訳ないでしょう、リュートなのよ」
「そうだね」
「だから、一撃を喰らわせて、少しは、できるところ、見せてあげるんだから」
あれだけ、何度もボコボコに倒されたにもかかわらず、へこたれない姿に、アニスが笑みを漏らしていたのだった。
カレンの双眸が、アニスに注がれていた。
「ねぇ、アニス。見ていて、どうだった?」
「やっぱり、連携じゃない?」
「そう思う」
リュートと対峙している際、何度か、カレン自身も、剣術科との連携に苦戦していたのだった。
チャンスと言うところで、何度か、剣術科のメンツに阻まれ、攻撃が仕損じていたのだ。
「うん。剣術科の一部の子とは、それなりに、連携が取れていたけど、上手く合わせられない場面が、いくつかあったじゃない?」
「うん」
顔を曇らせていくカレン。
(……学院を卒業したら、いきなり、よく知らないもの同士で、組むこともあるだろうし……、こういうのは、経験なのかな……)
「だから、その辺を、もう少し改善したら、いいと思うし、後は、もう少し、リュートの動きを予測した方が……」
「変幻自在なリュートの動きを、予測するのが難しいのよね……」
嘆息を漏らすカレンである。
頭の中では、理解していても、リュートの動きを読むことが非常に難しく、無策で飛び出している感があったのだった。
「魔法の攻撃を読むのも、難しいのに、剣術や体術も加わったから、余計に、読むのが難しくって……」
「それでも、少しは、読まないと」
「うん……」
読むことに対し、消極的な姿勢をカレンが見せている。
「他だと、読んで動いているけど。リュートと、対戦となると、それが、できていない気がするよ?」
「難しいから、ついつい、その場の勘で、動いちゃって……、そのクセが……」
カレンの眉尻が下がっていた。
「そのクセ、直さないと」
「そうだね」
「それに、後、リュートの挑発に、乗らない」
居た堪れないカレンが、視線をはずしている。
リュートとの戦闘の中で、何度か挑発されてしまっていたのだ。
「気をつけます」
「冷静に」
「はい」
「数箇所、いい場面はあったんだから」
沈みかけていた気持ちが、一気に浮上していった。
「ホント!」
「嘘は言わない。ホント、一撃だったら、入っていたところはあったよ?」
アニスの言葉に、勇気付けられていた。
やる気になっている双眸。
クスクスと、アニスが笑っていたのだった。
リュートに対し、一撃を加えるのに、連携や技量が、更なる向上が必要だったし、さらに状況を冷静に分析する力が必要なことは言わない。
「頑張る。絶対に、リュートに一撃、食らわせてみせる」
「頑張って、カレン」
「うん」
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