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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第9章 魔法なんて大っ嫌いだぁー
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第385話

今日から、新章に入ります。

 広いグランドで、息も絶え絶えなトリスたち。

 魔法科や、セナたち剣術科の生徒が入り混じって、あちらこちらに座り込んだり、横たわっていたのだった。

 用意していた回復要員であるアニスが、次々に、状況が酷い者たちから回復させている。

 辛うじて動ける者は、薬草やポーションを使い、自分たちで回復していたのだ。


 先程まで、この広いグランドにはリュートがいたが、稽古が終わると、颯爽と離れてしまっていた。

 リュート対その他大勢で、模擬戦と言う名の稽古が行われていたのだ。

 剣術科の生徒や魔法科の生徒の面々をものともせず、リュートは剣や魔法を自在に操っていたのだった。

 カーチスに実家があるアガール街の帰り道、リュートとトリスたちの間で稽古が決められ、セナたちやブラークたちもつき合わされていたのである。

 それでも、人数が足りないと言うリュートのために、魔法科、剣術科のクラスメートに声をかけていった結果、素直に応じる者や、応じない者も数多くいたので、トリスやクラインたちが稽古の生贄を増やすため、リュートとの稽古を拒否するクラスメートを、次々と捕獲し、待ち合わせ場所につれてきたのだった。


 勿論、この場には、魔法科でリュートの次に、強者であるバドの姿がない。

 バドを捕まえてつれてくると言う考えが、最初からトリスたちの頭の中になかったのである。

 リュートの次に、ある意味、研究バカであるバドがいれば、経験則から、ただでは済まないと感じていたからだった。

 バケモノ二人を相手にしたくなかったのだ。


 長く、息を吐くトリス。

 そして、緩慢な動きで周囲を窺っていた。

 今日一日は、使い物にならないだろうなと苦笑している。

 トリス自身も、いつものように身体が動くのは、難しいと、感じ取っていたからだった。

 座り込んでいることも、億劫なほどだ。


(これで、少しは落ち着くといいんだが……)


 若干の不安を、トリスは過ぎらせている。

 アガール街で、冒険者たちと戦ったものの、思う存分戦った気分が得られなかったため、不満なリュートの要望を聞き入れ、この稽古が行われたのだ。

 不満を募らせれば、後で酷いことになると、過去の出来事からトリスやクラインが想像できたからだった。

 不満が溜まり過ぎないように、リュートの様子を見定めながら、トリスやクラインたちが不満を排出させていた。


 トリスの身体から、滴る汗。

 億劫そうに、汗を拭うトリスだ。

 これだけ人員をぶつければ、もう少し、手を抜けるかと期待していたが、嬉々としたリュートはトリスの想像を遥かに超え、結局のところ、立つことも億劫なほど、疲労感を漂わせていたのである。


(今度は……、難しいが、他のクラスから捕まえてくるか……)


 深く、トリスが息をついた。

 そこへ、クラインがゆっくりとした足取りで寄ってきて、ヘロヘロなトリスの前に腰を下ろす。


(……クラインのやつ。もうここまで動けるのか……)


 持っていたポーションを渡したのだ。

「最後の一個」

 受け取ったトリスは一気に飲み干し、先程までの疲労感が僅かに薄らいでいった。

「ラクになった? 少しは」

「ああ。よく残っていたな」

 リュートとの稽古の途中で、手持ちの薬草やポーションをトリスは全部使い切ってしまったのだ。

 いつもよりも様々な回復薬を多く所持していたが、次からは、もっと用意しようと心の中で誓っている。

 軽く、息を零していた。

 稽古が終わっても、動くことができず、その場に座り込んでいたのだった。

「残しとかないと、後が大変だろう? だから、必死に残しておいたんだ、いくつかは」

 ニコッと笑みを漏らしている。

 その笑みの中に、僅かに疲れも滲んでいたのだ。


「そうか……」

 残しておく技量に、トリスが感心している。

「この後の授業、出れそうもないね」

 クラインの双眸が、回復できていない面々を巡らせていた。

 まだ、多くの生徒が、動くこともできず、横たわっていたのだ。


(無理だな)


 この時間帯も、授業を取っている者もいたが、それを無視し、捕獲して連れてきたのはトリスやクラインたちだった。

「でも、アニスがいてくれて、助かったね」

「そうだな」

 回復役に徹しているアニスは、この稽古に参加していない。

 見学に回っていたのである。

 そして、稽古が終わると、即状況の悪い者たちの回復に当たっていたのだ。

 当初、ミントも、この稽古に加わることになっていたが、直前になって、稽古をキャンセルし、友達と遊びに出かけてしまった。


(もう一人、回復役を用意しておくべきだったな)


「もう少し、かかるかって思っていたが……」

 リュートとの稽古の時間を、もう少し掛かると見込んでいたトリスだったが、思いの外、想定していた時間より、早く終わってしまい、自分の分析力が悪さに反吐が憶えている。

「そうだね。想定より、早く終わったね」

 リュートがいってしまった方向へ、クラインの眼光が注がれていたのだった。

「ま、楽しそうに稽古していたから、当分の間は、持つと思うけど、早く、終わった分だけ、少し早くなる可能性もあるから、気をつけないと」

「だな。魔法だけじゃなく、剣を使うようになったから、さらに、動きに磨きが掛かっているしな……」

 さらに強者になっていく姿に、どこまで強くなるんだと呆れているトリスだ。

「前よりも、魔法の速度も、威力も、上がっているし」

「ああ。剣に固執しなくなったから、柔軟性もまして、さらに厄介になったな……」


「カイルのアドバイスが、利いたね」

「魔法嫌いだったが、このところは、よく併用しているからな」

 苦笑しているトリス。

 魔法が大っ嫌いだと言うことも忘れていて、トリスとしては安堵感もあったのだ。


(このまま、忘れてくれると、助かるんだが……)


「剣と魔法を使われるから、ホント、大変だよ」

「大変だけど、いい経験にはなる」

「そうだけど。その分、こちら側の疲労や苦労が……」

 遠い目をしているクラインだった。

 捕獲していった記憶を思い返していたのだ。

 トリスとクラインが中心となって、拒否していった者たちを捕まえていたのである。


「このまま、魔法嫌いを忘れて貰うと、いいけどな」

「バドも、参戦して貰う? 今度」

「……まだ、早い」

 時期早々だと、トリスは抱いている。

「それに、後が面倒だ。各方面から、苦情が出るぞ」

「確かに」

「だから、バドを投入するにしても、もう少し後だ」

「これじゃ、足りないよ」

「他のクラスから、捕獲するしかないな」

「大変だな、それは……」

 ぼやきながらも、クラインの頭の中では誰を選び、どのように捕獲しようかと案を巡らせていたのだった。

 二人で喋っている間に、多少、動ける程度に回復した者たちが増えていった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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