第383話
カーチスたちが、学院に帰る当日。
ナナエラは昨日の夜から、カーチスたちに持たせる物を、いろいろと作っていたのである。
朝早く起きてからも、まだ、作っていたのだ。
忙しなく、カーチスたちが好きなものを、ある程度、作り終えようと見えかけたところで、嫁いでいった娘クラリスが来ていたのだった。
レナも手伝っていたが、先に部屋に戻っていた。
台所には、ナナエラしかいない。
「お母さん。大丈夫?」
当たり前のように、顔を出すクラリス。
「クラリス。お義父様たちのところに、挨拶してきたの?」
ミゲルのところに挨拶もしないで、こちらに来たのかと心配していたのだ。
過去に何度かして、ミゲルから小言を貰っていたのである。
「ちゃんとしてきたわよ。ワイズと話があるみたいで、挨拶をして、こっちに来たの」
カーチスたちが学院に戻るので、顔を見るため、夫ワイズと共に、実家のディアマンテ家に来ていたのだった。
ワイズと一緒にミゲルやウォルターに挨拶し、ワイズと話をすることがあるから席をはずせと言われ、母ナナエラのところに来ていた。
「それなら、いいけど……」
胸を撫で下ろすナナエラだ。
「心配性ね」
呆れているクラリスに対し、ナナエラがジト目になっていた。
「何度か、やらかしたからでしょう」
「その節は。ごめんなさい」
「気をつけてね」
「はい」
嫁いでも、娘のことを案じるナナエラである。
「カーチスが、やらかしたみたいね」
こちらに来る前に、カーチスたちが儀式で騒動を起したことを聞き、気が気ではなかったが、嫁いで家を出て行ってしまった以上、気軽にディアマンテ家に行くこともできず、この日を待っていた。
「そうね」
「聞いた時は、びっくりしたけど。意外と、落ち着いているようでよかった」
「えぇ」
「騒いでいるのが、シャミック家だけだけど、思っていたよりも、おとなしいからびっくりしちゃった……」
(……立場を考えると……、同意してもいいも……。でも、思っていたよりもシャミック家がおとなしいのは事実だし……)
「……そう……ね」
微妙な顔で、ナナエラが答えていた。
「それに、爺様の機嫌、そんなに悪くなかったわ」
微かに、クラリスが驚きをみせる。
夫ワイズと共に、挨拶に行く時、ある程度の機嫌の悪さを覚悟していたのだ。
けれど、大して機嫌が悪くないミゲルの姿に、内心では、驚愕していたのだった。
「カーチスにも、注意で止めたみたい」
母ナナエラの言葉に、クラリスが絶句している。
予想以上な出来事に、フリーズしてしまっていた。
そんなクラリスの姿に、小さく笑っていたのだ。
ナナエラ自身も、注意だけに止めたミゲルに、驚きを隠せなかったからだった。
これまでのミゲルの態度から、想像できなかったのである。
「それと、カーチスは学院を卒業しても、家にも戻ってこないことになったわ」
「えっ。爺様の命令」
「違うわ。カーチスの答えよ」
「……」
寂しそうな顔を、クラリスが滲ませていたのだ。
「あの子自身が、決めたことだから、とやかく言わないこと」
「……わかった。でも、いいの?」
探るような眼差し。
「いいのよ。でも、お義父様の命で、たまに、顔を出すことになっているから」
ナナエラの言葉に、大きく目を見開いていた。
「爺様が、そんなこと、言ったの?」
「言ったらしいわよ。カーチスからも、お父様からも、聞きました」
信じられないと言う顔を、クラリスが覗かせている。
そんなクラリスの姿に、ふふふと笑い、二人から聞いた時の自分の姿を思い返していたのだった。
「街の改革があるようだから、旦那様を助けてあげなさい」
「……わかりました」
返事を聞き、ニコッと微笑むナナエラの姿に、クラリスも笑顔を滲ませていたのだ。
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