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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
始まりは突然に
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第23話

あけましておめでとうございます。

今年も投稿し続けたいと思います。


 放課後、用事のあるセナと別れ、一人になったリュート。

 三人で昼食を済ませた後、いつものようにトリスがどこかへ消えてしまった。

 結局、稽古以外の用事がないリュートは一人になったのだ。


 素振りの稽古をしようと歩いていると、村に向かって歩いていたクラインの姿を見かける。制服は着ておらず、私服だった。

 どこか声をかけるのを拒む背中をしている気がする。

 周囲に見知った顔がない。


 躊躇する気持ちよりも、先に口の方が動く。

「一人か?」

 リュートの声に気づき、背の高いクラインが立ち止まった。


 相手のことなど考えず、無造作に距離を詰めていく。

 程よい距離で立ち止まり、何気ない表情でクラインが答える。

「ああ。そっちもか?」


「一人だ」

「稽古か」

「おう。カーチスやキムたちは?」


 魔法科から剣術科に転科してから、魔法科時代の友達と顔を合わすことが少なくなっていた。同部屋のカーチスとは朝夕に顔を合わせるが、元同部屋であるキムやブラークとは、顔を合わせることが少なくなってしまったのだ。だから、最近の近況を知りたくなり、ちょうど居合わせたクラインに尋ねたのである。


「キムたち? 確か……合コンとか言って、村に行っているはず。カーチスは……多分、学院のどこかにいるんじゃないのか」

 カーチスの部分だけは濁したが、相手は気づいていない。

 それ以上、カーチスのことを聞かないので、それ以上話さない。


「クラインも、合コンか?」

 村の方へ歩いていたから、そう考えたのだった。

 けれど、珍しいこともあるものだと巡らせている。それはクラインが、最近キムやカーチスたちが計画している合コンに、めったなことでは参加しなくなっていたからだ。


 少し前まではリュートやトリス、クラインも足りない頭数として、どこか無理やりに参加させられていた一面があった。たびたび学院を抜け出すトリスや、興味がないと不参加を表明したリュートに続いて、クラインも不参加を表明することが多かったからである。


「いや。俺は買い物と散歩だ」

「そうか。いつもそうなのか?」

「ま、な。図書館で読書と言うのもあるし、いろいろだ」

「ふーん。そうなのか」


「合コンは顔を出してくれと言われたが、即座に断った」

「あれのどこが楽しいんだ?」

「ま、人それぞれだろう」

「そうだな」


「稽古もいいが、無理はするなよ。気分転換も兼ねて、顔を出したらどうだ?」

「いやだ」

 渋面しているリュートに、クスッと笑う。


「そんな顔するなよ。キムたちには必死なことなんだから」

「必死か……」

 脳裏に以前行った合コンの光景が蘇っていた。

 学院では見せたことがない必死さが窺えたのだ。


「頭の中は女しかないのか」

「そう言うなって」


 魔法科の同級生たちは、彼女の作ろうと頻繁に村に行っては合コンして、羽を伸ばしていたのである。ナンパして酒場で喋ると言うパターンもあり、そのたびにいろいろと嗜好が変わっていた。

 村の娘たちだけでは人数に限りがあり、旅をしている人や学院を見学する若い娘を誘って、学院の学生たちは学院生活を楽しく謳歌していたのである。


「楽しい時だって、あっただろう?」

 納得いってなさそうな呻き声を上げる。

「俺だって、楽しい時はあったぞ」

「どこが?」


「どこって言われてもな……」

 返答に困り、苦笑するしかない。

 やれやれと首を竦めるクライン。


「じゃ、頑張っているリュートに、ご褒美でも買ってきてやるか。シフォンでいいか」

 頭の中はシフォンケーキでいっぱいだ。

 無邪気に顔を綻ばせる姿に、クラインの口角が上がる。


 今にもよだれが垂れそうな口から言葉が漏れる。

「楽しみだ」

「一つでいいか」

 物足りないと顔が訴えていた。


「一つ……」

「一ホールの半分はリュートで、残りの半分は俺たち三人で分け合う」

 割合を聞いても、不満げに口を尖らせる。

 いたずら心がクラインの中で芽生えた。


「半分は多いのか」

「違う!」

 噛みつくリュート。


「冗談だよ。リュート用にちゃんと一ホール買ってくればいいんだろう」

「それならいい」

「ホント、食いしん坊だな、リュートは」

 まだまだ子供のようなリュートに、小さく笑みが零れてしまう。


「そうだ、いつまでも子供のように合コンなんてやるなって、キムたちに言った方がいいぞ。真面目にだな……」

 一瞬、クラインは面を喰らってしまう。

 次の瞬間、ゲラゲラと腹を抱えて笑った。

 笑うところかと訝しげに見下ろしている。


「なぜ? 笑う?」

「な、なぜって……」

 笑い過ぎて、言葉が出てこない。

 憮然としているリュート。


 だいぶ笑いが過ぎてから、ようやく目尻の涙を拭いながら答える。

「リュートの口から、そんな言葉が聞けるとは思ってもみなかった」

「どういうことだ?」

 さらに眉間にしわが寄っていく。


「怒ったのか」

「バカにしただろう」

「違う」


 バックの中から砂糖がついた菓子を取り出し、機嫌が悪いリュートに弧を描くように投げ渡した。

 不機嫌な表情は瞬く間に消え、砂糖のついた菓子を喜んで食べ始める。

「どっちも、どっちだと言うことだ」

「?」


 視線を傾けるが、食べることも忘れない。

「俺に言わせると、合コンで遊ぶやつも、菓子一つで喜ぶやつも、同じ子供のように映ると言うことだ」

「……」

 モグモグと食べていた口が止まる。


「気にするな」

「気になる」

 しょうがないなと頭を掻いた。


「悪いとは言っていない。そんなこと学生のうちだからな、存分に楽しむといい。リュートも、トリスも、カーチスも、キムたちもな」

「クラインはいないのか?」

「俺か?」

 何気ないリュートの言葉に目を見張る。


「考えてみなかったな。……俺にとっての楽しみは、そんなお前たちを見ることだな。面白いからな、お前たちは」

「それ楽しいのか」

「ああ。楽しい。リュートたちを見ていると飽きないからな」

「……楽しいならいい」


「けど、昔みたいなことはごめんだからな」

「……肝に銘じておく」

「助かる」

 話が見えたところでクラインが締める。

「じゃ、俺は行く」


「忘れるなよ、シフォン」

「忘れたら後が怖いからな。忘れないさ」

 村へ続く道を、クラインが歩き始める。

 リュートもシフォンケーキが来るまで稽古しようと、足取りも軽く歩き始めたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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