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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第191話

 リュートたち一行は、堂々と、カブリート村の正面から入っていった。

 先頭を歩いているのは、足取りも軽やかなリュートで、ユルガ、ソルジュ、ミントが続き、その後に、魔法科のメンバーが歩いていたのだった。

 魔法科の後に、剣術科のメンバーが続き、居た堪れない顔を滲ませていたのである。


 村人の多くは、リュートたち、魔法科の顔を見て、眉を潜め、歓迎している者なんて、誰一人いない。

 長老側、村長側、両方にとっても、リュートたちに、以前、痛い目にあっており、警戒心を膨らませていたのだ。

 穏やかな日々が、壊されるのではないかと。


 さらに、進んでいく彼ら。

 リュートたちに、なかなか、近づく者なんていなかった。

 冷たい視線に、セナたち剣術科のメンバーだけが、居た堪れなさを覗かせていたのである。

 眉間にしわを寄せながら、いつもとは違う対応に、ビンセントが戸惑いを隠せない。

「どうした?」

 トレーシーが声をかけていた。


「いや。村の様子が……」

「こんなんじゃないのか?」

 トレーシーたちは、カブリート村のことは、話でしか聞いたことがなかったのだ。

 だから、こういうものだと、半ば諦めていたのだった。

「確かに、そうなんだが……」

 ビンセントの双眸が、先頭を歩いているリュートに傾けられている。


(……こいつら、一体、何をしたんだ?)


 いつもの対応と違うことに、何となく、感じ取っていたのだった。

 この辺一体は、村長側で、ここまであからさまな態度を取ることがなかったのだ。

 村の者以外を見れば、すぐさま、警備する者たちが現れ、対応していたのである。

 だが、いっこうに、警備する者たちが姿を現そうとはしない。

 遠巻きに、見ているだけだ。


(何で、警備しているやつも、見ているだけで、出てこない)


 ビンセントの視界に、きちんと警備している者を捉えていた。

 どの顔も、見知っていたのである。

「……いつもなら、警備をしている者が、姿を見せて、誘導するはずなんだが……」


 トレーシーや、話を聞いていたチャールストン、ガルサ、ニエルが辺りを窺っているが、村人は誰一人として、近づいてくる者がいなかった。

 ほとんどが、冷ややかな眼差しを向けていたのだった。

「いないな」

「いないわね」

 トレーシーやガルサが、口にしていた。


「いやそうに、みんな、こっちを見ているわよ」

 ニエルの言葉に、長老側だったら、そうした表情にも、納得できたのだが、この辺一体は、まだ村長側で、大歓迎とはいかなくっても、いやそうな顔を浮かべることもなかったはずなのだ。

 それにもかかわらず、馴染みある人たちから、物凄くいやそうな顔を浴びせられ、ビンセントの心が、徐々に沈んでいった。


(……何で、誰も、出てこない)


「私たち、大丈夫なの?」

 ガルサの双眸が、村の出身であるビンセントに巡らされている。

「知るか」

 どこか、投げやりな態度をしているビンセント。

 無理やり、つれてこられたことを、未だに根に持っていたのである。


 不安がっているガルサたちに気づき、トリスがいつの間にか、彼らの元に下がっていたのだ。

「大丈夫」

 突如、自分たちのところにトリスがきて、虚を突かれた顔を覗かせている面々だった。

 全然、トリスの気配を察知できていなかった。

「「「「「……」」」」」

 セナに言われたはずなのに、気を抜いていたことに、もう一度、気持ちを入れ替え、神経を研ぎ澄ませ始めていたのである。


「そっちに、向けている視線じゃないから、俺たちに、向けられたものだから、気にする必要はないよ」

「……一体、どうしたら、こういう対応になるの?」

 ムスッとした顔で、ニエルが突っ込んでいた。

「少しだけ、遊んでいただけだよ」

「少しって……」

 胡乱げな眼差しを傾けているニエル。


「ホント、少し」

 苦笑しているトリスだ。

 ここまで酷い対応されると、少しとは言えないのではと、ジト目でガルサたちが過ぎらせていた。

「俺たちにとっては、少しだが、ま、村人にとっては……」

 ガルサたちから、僅かに視線を、そらしているトリス。


「ビンセントは、聞いていないの?」

 何やっているんだよと言う顔を、滲ませているビンセントに、ガルサの双眸が注がれている。

 突如、振られ、渋面しつつ、ビンセントが考え込んでいた。

「……入り込んでくる生徒たちの話を聞いているけど、誰かってことは……聞いたこともないし、話してもくれない……」

「そうなの?」

「そうだ」


 反抗期で、両親と、余り話していないとは言いたくなかったのだ。

 このところは、完全に父親を拒絶し、ロクに話をしていない。


「ねぇ、トリス。リュート、ただ、歩いているって、だけじゃないわよね?」

 ニエルの問いかけに、話がそれたと、ビンセントは、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 村の中にある広い道を、ひたすら歩いていたのである。

「歩いているだけだよ」

「「「「「……」」」」」

「大丈夫。もうすぐ、誰かが、来るから」

「ホントに?」

 疑っている視線を、流しているニエルだ。


「ホント。そうだろう? ビンセント。誰かが、出てくることになっているんだろう?」

「……ああ」

「だったら、誰かが出てくるよ。カブリート村に、顔馴染みが何人かいるから、俺たちが話をつけるから、安心してくれ」

 清々しく、笑っているトリス。

 溜息を零している、ガルサたちだった。

 ビンセントだけは、顰めっ面で、トリスを捉えていたのである。


「リュート。お前たち、また、何しに来たんだ?」

 遠くの方から、リュートたちに、声をかけているアセンがいた。

 村長から、また、面倒ごとを頼まれ、顔を出していたのだ。


「アセン。久しぶり」

 気軽に、挨拶しているリュート。

 父アセンの登場で、ビンセントは顔を歪めていたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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