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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第189話

 穏やかな保健室では、グリンシュとカテリーナによる、スカーレットの慰労会を開催されていた。

 平和な時間が流れている。

 下級生が数人、訪れただけで、グリンシュたちは、のどかな時間を楽しんでいたのだった。


 その中で、スカーレットだけが、曇よりと暗い顔をしている。

 カップに注がれている紅茶が、ほぼ減っていない。

 目の前に置かれているお菓子も、手つかずのまま残っていた。

 デュランによる、連日の実験体が続けられ、ようやく解放されてから、カテリーナに捕まり、ここへつれられてきたのだった。

 体力には自信があるスカーレットも、ヘトヘトに疲れていたのだ。


「酸っぱい、ケーキなんて、どうですか? 身体が癒えますよ」

 ニッコリと微笑んでいるグリンシュに勧められ、食欲がないものの、言われるがままにスカーレットが一口運んでいる。

「! 上手い」

「よかった」


「相変わらず、上手いな」

 グリンシュの料理の腕前に、素直に賞賛していた。

 もう一口、食べている。

 疲れた身体が、スッととれる感覚を味わっていたのだ。

 疲労しているスカーレットの身体や心を癒やしてあげようと、ケーキには特別なポーションが、混ぜ込まれていたのだった。


「デュランは、実験の精査に入っているのですか?」

「ああ」

「今回の実験は、順調に進んでいるんですか?」

「そういうのは、私にはわからん」


 少しブスッとした顔を、スカーレットが覗かせている。

 スカーレットの双眸が、デュランがいる方向へ、巡らされていたのだ。

 研究室にこもり、今まさに、実験のまとめに入っていたのである。

 そうなってくると、誰も邪魔できなくなり、デュランの研究室に近づかなくなっていたのだった。

 邪魔されたデュランの報復が、誰も、恐れていたのだ。


 笑みを漏らしているグリンシュに、戻していた。

「あいつは、決して、そういうのは、私には教えないから」

「そうでしたね」

 デュランは、実験している内容を、無闇に教えるタイプではない。

 結果が出てから、詳細をまとめ、レポートにして、発表をしていたのだった。


「デュランは、カブリート村の件で、動くことがありますか?」

 お茶をしていたカテリーナが、突如、口を開いて、聞いてきたのだ。

「いや。若い者たちに、譲ると」

「そうですか」

 安心した顔を、カテリーナが覗かせている。

「デュランも、静観するのですか」

 口角が上がっているグリンシュに、眼光を注いでいるスカーレット。


「……デュランもってことは、ラジュールも、動かないつもりなのか?」

 大きく、目を見張っていたのだ。

 スカーレットは、ラジュールだけは、動くのかと抱いていたのだった。

 次第に、眉間のしわが増えていく。

「……大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ」

「はい。大丈夫です」

 自信満々な二人。

 スカーレットだけが、怪訝な顔を滲ませている。

「いくら、リュートたちでも、カブリート村に関しては、厳しいんじゃないのか? それに、剣術科の生徒も、混じっているんだろう」

 スカーレットも、ある程度の状況を聞かされていたのだ。

 だから、純粋に、カブリート村にいった生徒たちのことを案じていたのだった。


「そうですね」

 他人事のような、カテリーナの言葉。

「カイルの胃に、穴が開くんじゃないのか?」

「丈夫ですよ」

「……カテリーナが言うなら、いいが……」

 まだ納得できない顔をしていたのだ。


「グリフィンの部隊が、後方に控えていますよ」

 グリンシュが、カブリート村の状況を口にしていた。

「後方って……言っても、証拠集めするためだろう?」

「そうですよ」

 余裕でいるグリンシュに、さらに、訝しげていくしかない。


「スカーレットは、心配し過ぎです」

 カテリーナが、困ったような顔を注いでいたのだ。

 カテリーナとグリンシュは当初より、静観する立場をしようと抱いていたのだった。

 これまでも、静観した立場をとっていたが、カブリート村に関しては、明確に、動かないと決めていたのである。

 ただ、少しばかり、リュートたちが、動きやすいようにするために手伝いをしただけだ。


「当たり前だろう。あの子たちは、まだ子供だ。それに、剣術科に関しては、経験が浅すぎる。相手をするのは、現役の冒険者たちなんだろう?」

 相当の数の、現役の冒険者たちが入り込んでいると聞いて、スカーレットの中で、不安要素が膨れていたのである。

「そのようですね」

「だったら……」


「グリフィンも、カブリート村の件に関しては、何か、思うことがあったんでしょうね」

 グリンシュの言葉で、デュランやラジュールの顔が、スカーレットの脳裏に浮かんでいたのである。

 スカーレットも、カブリート村に関しては、グリフィン同様に憤りを感じていたからだった。

「上層部の考えは、気に入らないが……、ただ、生徒を巻き込むのは……」


「リュートがいますから」

「そうですよ。心配しないで、ゆっくりと待ちましょう」

 笑顔を絶やさない、カテリーナだ。


(どこから、そんな自信が……。それに、リュートがいるからこそ、危ないんじゃないのか? あれはリーブの子だぞ)


「カイルは、どうしているんだ?」

「モヤモヤしているようですが、グリフィンが、最後に知らせてくれたようで、身動きが取れないみたいです」

 リュートが、カブリート村に興味を持っていることを、最後に伝えたのは、カイルで、リュートたちを追いかけようとしたのを、食い止めたのもグリフィンだった。

 グリフィンとしては、リュートたちの邪魔をさせたくなかったため、最後に、カイルに知らせたのである。


「当たり前だろう。相当、イラついているんだろう」

「そのようです」

 盛大な嘆息を、スカーレットが吐いていた。


「スカーレットも、どうしたんですか?」

「いった後に、伝えるなんて……」

「いいじゃないですか、一応は、伝えたのですから」

「逐一、報告はしているのか?」


「カイルには、大まかに伝えているようです」

「ラジュールには、きちんと、報告しているようです」

 カテリーナが、愛らしく首を傾げていたのだ。

「……カイルにいかれると、困るからだな」

「「そうです」」


「カテリーナはいいのか? カイルのこと」

 窺う眼差しを傾けているスカーレットだが、カテリーナの表情が、変わることがない。

「大丈夫です。後で、慰めてあげますから」

 ニッコリと微笑んでいる。

「……」


「スカーレット。今回は、静観していてくださいね」

 グリンシュに、念を押される。

「……わかっている」

「なら、結構です」

 ハーブティーを優雅に飲むグリンシュに、ついついジト目になっているスカーレットだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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