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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第188話

 校舎の近くで、カブリート村を探らせている部下からの報告を、受けているグリフィン。

 生徒たちは、誰もいない。

 授業を終えたグリフィンは、学院の周囲を、見回りを行っていたのだ。

 勿論、彼の当番ではなかった。

 ラジュールの当番で、代わりに見回りをしていたのだった。

 そこへ、報告しに、現れた部下である。

 立ち止まり、報告に耳を済ませていた。


「……リュートたちは、順調に、カブリート村に入ったのか」

「はい」

 持っている部隊の一部を、カブリート村周辺に配置させ、窺わせていたのである。

 カブリート村に興味を持った、リュートたちを止めることなく、遠くで静観しているように命じていたのだった。


「リュートたちは、どうしている?」

「また、おとなしく動いております」

 グリフィンの問いに、真摯に答えて行く部下。

 彼は、グリフィンよりも、やや年上で元冒険者だ。

 冒険者としての活動に、見切りをつけたところで、学院側からのスカウトもあり、学院側の警備の仕事に当たっていたのである。

 彼のようにスカウトされ、学院側の仕事に携わっている者も多くいたのだった。

「そうか……」


(リュートたちの動き次第では、もう少し多く配置することを考えていたが、現状維持でいいか。それにしても……)


「いつまで、持つかな」

 黙っている部下である。

 グリフィンの下について、もう、五年は経っていたのだ。

 ある程度のグリフィンの思考を、読むことは容易だった。


「ラジュールたちの話を、無視したからだ」

「……」

「上層部も、少しは、あたふたした方がいい」

 グリフィンの眼光に、ほの暗い光が灯っていたのである。


 以前に、カブリート村に関して、ラジュールやデュランが進言したにもかかわらず、今まで放置してきた、上層部のやり方に、ずっと憤りを抱いていた。

 だから、カブリート村に、興味を持ったリュートたちを止めることなく、放置することを選んだのだ。

 勿論、上層部には、報告していない。

 リュートたちが、カブリート村で、動き回っていることを。


「ホントに、いいのですか?」

「リュートたちのことか」

 視線の矛先が、部下に巡らされている。

 心配げな眼差しを注いでいたのだ。

 リュートたちの、問題行動の後始末などをしていた彼らにとり、リュートたちを放置することが、どれだけ危険か身に沁みていたのだった。


「はい。これまでのことを考えると、大きな騒動になるかと」

「なるだろうな。リュートたちがかかわっているし、人数も多い」

「はい」

「ま、バドは、加わっていないんだろう?」


「はい。研究室にこもっているようです」

「なら、このままだ」

「……」

「バドがいないだけ、少しは、マシだろう?」

 不敵な笑みが零れていた。


 何とも言えない顔を覗かせているのは、部下だった。

 これまでの後始末の、あれやこれが、走馬灯のように流れていたのだ。

「……」


「それに、リュートたちが、好き勝手に動くことによって、カブリート村の膿も出るし、何より、長老たちが、何をやっているのかも、解明できる可能性が、大だ。だから、絶対に、リュートたちの邪魔だけはするな」

「はい」

「剣術科の連中は、どうだ?」

「リュートたちに、ついていくのが、やっとのようです」


 脳裏に浮かぶのは、カイルの生徒たちである、セナたちの姿だ。

 今後、自分も、担当する可能性もあるので、セナたちの実力は、以前から眺めて、把握はしていたのである。


「だろうな。経験のさもあるし、何より、リュートとの付き合いが、断然、剣術科の方が、短いからな。その分だけ、どうしても、実力に開きが出てしまう」

「はい」

「トリスも、クラインもいるから、その辺は、大丈夫だろうな」


(あれたちは、ラジュールが、鍛えた生徒だからな)


 トリスとクラインに、ある程度の信頼を置いていたのである。

 どちらかが欠けていれば、グリフィンも、静観すると言う行為を、行っていなかったほどだ。


「ただ、危なくなった時だけ、手を貸してやれ」

「はい」

「後、証拠は、手に入れておけ」

 強い眼光で、部下を見つめている。

 頼もしい部下の姿に、口角が上がっていた。

「はい」

「確実に、言い逃れができないようにな」

「はい」


 ジト目になっている部下に、苦笑していた。

 部下が、グリフィンのことを理解できているように、グリフィンも、部下の思考を読むこともできたのだ。


「そんな目で、見ないでくれ。ちゃんと、カイルには、少しだけ、話している」

「なら、いいです」

「さすがに、話さないのは……、な」

「勿論です」

「とにかく、この後も、監視を頼む」

「了解しました」


 報告をした部下が、グリフィンの前から立ち去っていた。

 一人残ったグリフィンは大きく背伸びをし、まだ残っている見回りの仕事に戻っていったのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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