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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第187話

「リュート。いつも、こんなことしているの?」

 ソルジュの呆れた双眸があった。


(これで、何度目だろう? リュートたちと再会して、同じことを言うのは……。でも、聞かずにはいられない。こんなハチャメチャなことして……。よく、家に戻されないな……と言うか、リュート自身は、戻りたくないはずなのに……。行動が……伴っていないよ。なら、何で、こんなこと、しているんだろうか? もっと、おとなしくしていれば、いいのに……)


「そうだ」

 自信満々に、胸を張っているリュート。

 ソルジュの考えなんて、いっこうに思考なんてしない。

 ただ、思うがまま、突き進むだけだった。

 クラインだけが苦笑し、ミントが肩を竦めていた。

 ユルガも、好奇心旺盛な瞳を輝かせている。


 この場に、ブラークやキムの姿がない。

 トリスたちが、ハンナを送りに行った後、ブラークとキムは、周囲の警戒を窺ってくるため、姿を消していたのだった。

 そうとは知らない、セナたち剣術科だ。

 ブラークたちは、口に出さなくっても、自分たちの役割を理解し、そして、互いに把握しているクラインは、何を言わなかったし、ミントやユルガ、ソルジュも、何となく察していたのである。


「面白いだろう」

「……周りが、大変そうだね」

 呟くソルジュだ。

 ここにいない、兄トリスのことを、真摯に案じていた。

 いなければ、素直に、心配することもできたのである。


「そうか」

 首を傾げているのは、リュートだけだ。

 ソルジュの視線の矛先は、好奇心旺盛な師匠であるユルガを捉えていた。

 注がれているユルガは、小さく首を傾げている。

 嘆息を漏らすソルジュ。


(ここにもいる。……うちの家系って、もしかして、苦労性なのか、いや、苦労性だな)


 訝しげている顔を、ユルガが覗かせていた。

 けれど、ソルジュよりも、考えることが、別にあったのだった。

「……リュート。あなたは、このカブリート村に、何が隠されていると、思いますか?」

 キラキラと、瞳を輝かせながらのユルガの問いかけ。

 ずっと、カブリート村に関する思考をしていたのである。


「わからないが、楽しそうだ。ワクワクが止まらない」

 はっきりと、断言できるものを持っている訳ではない。

 だが、勘が何かあると、訴えていたのだ。

「私もです」

 意気投合している、リュートとユルガ。


 がっちりと手を組み、語らっている姿に、ソルジュだけが頭を抱えていたのである。

 ソルジュ自身、好奇心がくすぐられているが、暴走する者を止める役目も、担っている立場としては、心が赴くままに、素直に言動を繰り広げることができない。


 不意に、隣にいるミントを見ると、何かを逡巡している姿を捉えることができたのだった。

 何となく、二人の話を耳にしながら、自分の見解を導き出していると思えたのだ。

 自由がままのミントの姿。

 羨ましいと抱く、ソルジュだった。

 そして、熱く語らっている二人を捉えている。


(やっぱり、凄いなリュートは。師匠についていけるんだから)


 二人して、旅をしていて、ソルジュは豊富なユルガの知識に、ついていけないことが、時より生じていたのだ。

 そんなユルガの膨大な知識に、ついていっているリュート。

 羨望の眼差しを、巡らせていたのである。


「ソルジュ。君の好きに、思考していいよ。辺りの警戒は、しておくから」

 クラインの言葉に、一人で感動している。

「ありがとうございます。でも、師匠を止められるのは、僕だけですから」

「そう?」

「はい。これ以上の迷惑は、かけられません」

 強い意志が、ソルジュの眼光に宿っていた。

 二人して旅をしてきて、ソルジュは、学んでいたのである。

 好奇心が高まっている時が、一番危険だと言うことを。

 そして、リュートも、好奇心が強くなっている時は、何を仕出かすか、わからないと言うことをだ。


「これぐらい、平気だよ。今回、警戒するのは、リュート一人だけで、いいからね。魔法科には、リュート同様に、警戒するべき人がいるから、ホント、割と、ラクな方だよ」

 何でもないような顔を、クラインが覗かせていた。

 リュートの次に、好き勝手なことをするバドの顔を、思い浮かべていたのである。

 そして、他の顔が、数人掠めていた。


(バドがいないだけで、ホント、ラクだな)


「……」

 クラインの話を聞き、ソルジュは顰めっ面だった。


(どんだけ、好き勝手にするやつが、多いんだ)


「研究気質の者が、多いから」

 笑っている、クラインである。

 魔法科の中でも、A組は、曲者が揃っていたのだ。

 その中で、ほとんど、顔触れが変わることなく、過ごし、揉まれていたのだった。

「大変ですね」

「ありがとう」

 ニコッと、柔和に笑っているクライン。


「旅しているのは、大変じゃない?」

「大変ですけど、楽しい方が、先に来るので」

「そうなんだ」

「旅したこと、あるんですか?」

 何気なく、ソルジュが口にしていた。


「……昔ね」

「そうなんですか」

「楽しいこともあったけど、やはり、大変だったと、感じることが多かったかな」

「そうなんですか」


 クラインの話を、聞いていたのである。

 リュートとユルガは、互いの意見を出し合い、議論を交わしていた。

 夢中になって、手振りを加えている状況だ。

 ふと、二人の傍で、聞いていたミントの姿がないことに気づく。


「ミントだったら、奥の方へ入っていったよ」

「……さすがだな」

 知らぬ間に、移動していたミントに、目を丸くしていた。

 クラインの双眸は、セナが率いている剣術科の方へ、傾けられていたのだ。

「剣術科も、余念がないね」


「結構、力が入っていますけど、大丈夫ですか?」

 気合いが入り過ぎて、空回りしないかと、ソルジュは純粋に心配していたのである。

「大丈夫だと、思うよ。それに、僕たちが、サポートするから」

 経験の浅い剣術科が、機能不全にならないように、サポートすることは、クラインたちの頭に、しっかりと刻まれていたのだった。


「リュートは、どうするんです?」

 怪訝そうな、ソルジュの顔だ。

 兄トリス一人に、任せてもいいのかと、抱いていたからだった。

「自由にさせるから」

「野放しにするんですか?」

 大きく、目を見張っている。

 小さく、笑っているクラインである。


「リュートだって、成長しているんだよ。昔と比べると」

 信じられないと言う顔を、ソルジュが覗かせていた。

 村にいた頃の、いろいろな出来事が掠めていく。

「ソルジュは、後方で、リュートの成長振りを見てみると、いいよ」

 揺るがない、クラインの眼光。


「そうします……。けど、ホントに、大丈夫ですか?」

 胡乱げな眼光に、必死に、笑いを堪えているクラインだ。

「大丈夫」

「ホントに?」

 まだ、不安そうなソルジュの姿に、それだけのことを、生まれ育った村でして来たのだろうかと、逆に心配になるクライン。


「……信用して。ある程度は」

「……わかりました」

「でも、少しは、暴走しちゃう時もあるけど」

「……やっぱり」

「でも、昔ほど、酷くないと、思うよ」

「……成長振りを、確かめます」

「そうして」

「はい」


 二人が話をしていると、突然、リュートとユルガが動き出したのが、視界に飛び込んでくる。

 勝手な行動をしそうな二人。

 ソルジュとクラインが、敏感に動き出していた。

 止めに掛かっている、二人の声。

 ようやく、セナたちも、勝手に動き出したリュートたちに、視線を巡らせていたのである。


読んでいただき、ありがとうございます。

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