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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第180話

 長老との話を終え、モーリスは仲間たちが待機している場所に戻ってきていた。

 何食わぬ顔で、配下の元に入っていく。

 周囲に、村人たちはいない。


 この辺一帯で、モーリスたち外に出た部隊が、拠点にしていることもあり、無闇に人が近づくことがなかったのだ。

 長老の命が、出ていたのだった。


 多くの村人たちが、モーリスが長老の息子だと、気づかずにいたのである。

 モーリスたちも、あえて、この村の出身だと公言していない。

 できるだけ、村人と喋らないようにしていたのだ。

 家族がいてもだった。


 外に出た者たちのリーダーを、現在、務めているのは、モーリスで、外に出た者の中で、長老の血筋で、強い者がなっていたのだった。

 配下の者たちを、グルリと見渡す。

 連れてきた全員が、揃っている訳ではない。

 現在、村の別な場所で、仕事をさせている者も多くいるので、一部しかいなかった。


 ここにいるのは、モーリスを慕っている者たちばかりだ。

 そうでない者や、不信感を抱いている者たちは、村の中心部ではなく、別な場所を任せていたのである。

 そういう者たちを、村に住んでいる長老たちに見せたくないと言う思惑も、モーリスの中であったからだった。


「問題は、ないか?」

「新たな冒険者が、うろちょろしている程度です。探っている連中は、遠巻きで眺めているだけで、こちらに近づこうとは、していません」


 モーリスに報告しているのは、モーリス同様に村を出た者で、モーリスの脇にいるのは、彼の祖父が外に出た者で、彼自身、村に来るのは初めてだった。

 何十年と、そうした系譜が受け継がれ、カブリート村のことを知らない世代が多くなり、次第に儀式に囚われ過ぎていると、離れていく者が多くなっていたのである。

 長老たちにも、そうした報告をしているが、それはごく一部しか告げていなかった。


「挑発は、したのか?」

 窺う眼差し。

 以前から、遠巻きにしているだけで、動きがないことを受けていたのである。

 そのため、相手の動向を見定めるために、挑発することを容認していたのだった。

「しましたが、動きませんでした」


 訝しげているのは、報告した者だけではなく、モーリスも顔を顰めていた。

 何度か、挑発を試みていたのだ。

 だが、結果は同じで、こちらに向かってこないで、静観しているだけだった。


「……どういうことだ?」

 ますます、探っている者たちが、何を考えているのか、わからなくなっていった。

 思わず、嘆息を漏らしている。

 頭が痛いことばかりで、少々げんなりしていたのだ。


「どうします。仕留めますか?」

 村に来たのが初めての男が、挑戦的な眼光を注いでいた。

「いや。ことを大きくして、学院側の者を過激に刺激するのは、よくない」

 モーリスの言葉に、残念そうな顔を滲ませている。


 冒険者たちを追い払う仕事に、飽き飽きし始めていたのだった。

 そうした彼らにも、モーリス自身、気づいていた。

 自分も、血が滾るような戦闘ができないことに、若干、面白さがないと憶えていたからだった。

 けれど、さらに、気持ちを律する。


(……最優先は、儀式を滞りなく、終わらせることだ)


「挑発しても、全然、こちらのテリトリーに、入ってくる様子は、ないんだな?」

「全くです」

「……」

 逡巡している、モーリス。


(なぜ、様子見だけなんだ? 村の者だけではないと、わかっているはずなのに……。一体、学院側は、何を考えているんだ? いくら揉め事を起したくないと言うだけで、ここまで、静観するものなのか……)


 モーリスの双眸は、配下の者たちに戻されていた。

 彼らは、真摯にモーリスの指示を待っていたのである。


「……とりあえず、探っている連中を見張る者を、さらに、動員するように」

「はい」

「それと、後、どれぐらいで、残りの部隊が、入ってくる?」

「二日後です」

「そうか……」

 モーリスの胡乱げな眼光。


(……読めない以上、もう少し、人員を増やしたいが……)


 人員は、限られていたのである。

「早めますか?」

「いや」


(村長たちも、俺たちの存在に気づき始めたようだし、困ったものだな……)


 人員の少なさを補うために、出身ではない者を雇おうかと、過ぎらせたこともあったが、父親である長老たちが許さないだろうと抱き、諦めたのだった。

 そして、自分たちの士気の悪さも、知られる訳にはいかなかったのだ。

 モーリスの矜持のために。


「外を任せている者たちは、どういう状況だ?」

「不満を持っているようですが、今のところ、支障はないです」

「今のところか……」

 不安げな表情を、モーリスが漂わせている。

 ここに来る前も、彼らと、ひと悶着あったからだ。


 窺うような、配下の男の双眸だった。

「……つれてくるべきでは……」

「しょうがあるまい。人手が、不足していたからな」

「「「「「……」」」」」


 もう一度、ここにいる者たちに、視線を巡らせている。

「お前たちに、苦労をかけるが、連中のことも、気を配ってくれ。そして、何か、動きを見せようならば、俺に、至急知らせてくれ。俺がケリをつける」

「「「「「はい」」」」」


読んでいただき、ありがとうございます。

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