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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第174話

 トリスたちが出かけた後、クラインから、剣術科のメンバーと、いろいろと話し合いが必要だからと、下でヒューイと話していていいと言われ、そそくさと、リュートが降りていったのだった。

 ユルガやソルジュ、ミントを誘ったが、断られてしまっていた。

 降りると、先ほどと変わらない位置で、ヒューイが魔導具を弄っている。

 リュートの口が、ムニュムニュと動いていたのだ。


 二年以上、ここに訪れていない。

 ただ、遊び回っているブラークたちから、ヒューイの話を聞いていたので、久しぶりに会ったと言う気はしていなかった。


 しばらく、リュートの双眸は、ヒューイが手にしている魔導具に、注がれている。

 見られていると察知しながらも、ヒューイの口も開かない。

 黙々と、慣れた手つきで、魔導具を直していったのだ。


 ようやく、メドが立ったところで、伏せていた視線を、近くで見ていたリュートに巡らせていた。

「いいのか?」

「大丈夫。クラインがやっている」

「お前らしいな」


 ニコッと、笑っているリュートだ。

 そして、キラキラした瞳は、ヒューイが手にしている魔導具を捉えている。

「いいもの、見つけたな」

「だろう」


 リュートと、後、二人しか、気づいていなかったが、ヒューイが手にしている魔導具は、古代の代物で、とても貴重で、生きている間に見ることは、不可能ではないかと言われるほど、とても珍しいものだった。

 気づいていないメンバーの多くが、ただのガラクタと、巡らせていたのである。


 縫い止められている、漆黒の瞳。

「ダメだからな」

「ケチ」

「これは、俺のものだ」


 ヒューイが、手にしている代物は、売り物ではない。

 個人の所有物だった。


「少しぐらい、貸してくれても、いいじゃないか」

「ダメだ」

「ヒューイ」

「お前に貸したら、壊される。別のものにしろ」

 不満タラタラな顔で、口を尖らせていた。


 以前にも、これはと言うものを、貸したことが、何度かあったのだ。

 そのたび、壊したりしていたのである。


「これがいい」

「ダメだ」

 せがまれても、ヒューイの意思は変わらない。

 ぶつかり合う、眼光。

 互いに、反らそうとはしなかった。


「……しょうがないな」

 折れたのは、リュートだった。

「好きなものを、持っていけ」

 ヒューイの双眸が、ぐるりと店内を眺めていた。

「そうする」

「後で、感想を聞かせろ」

「了解」


 この店にあるものは、貴重な魔導具から、面白い魔導具、壊れている魔導具など、様々な魔導具が揃っていたのである。

 見る目があるのならば、決して損がない店だった。

 そして、好奇心をくすぐられたのだ。

 そうした客の一人がリュートで、いつしか、遊ぶ際の拠点の一つになっていたのである。


「カブリート村は、どうなっているのか、知っているか?」

 ムスッとしているヒューイに、注がれていた。

「カブリート村に、行くのか?」

「ああ」

 隠そうともしない。

「だったら、『蒼き流星群』に聞け。あいつらも、カブリート村の洗礼を受けたようだ」


「わかった。で、ヒューイは、何か持っていないのか?」

 目の前にいるヒューイを、捉えたままだ。

 小さく、ヒューイが息を吐く。

「……カブリート村と言うことを伏せて、村人たちが魔導具なら、武器防具、薬草など、いろいろと仕入れていたらしい。それも、少しずつな」


「今もか?」

「そのようだな」

「ヒューイのところには?」

「いや。俺のところには、来なかった」

「以前から、いろいろと、揃えていたのか」

「そうなるな」


「学院の外からも、仕入れた可能性は?」

「ある。外の連中からも、聞いたからな」

「カブリート村であることは、伏せていたんだな?」

「そのようだ」

「学院の上の方は、知っているのか?」

「さぁな」

 首を竦めていた。


「なぜ、カブリート村であることを伏せている? それに、大量に、武器や防具、薬草が必要なんだ? 長老たちは、絶対に、何かをやろうとしている。それも、学院側の者を排除しようとしても」

「知らん」

 興味がないと、突き放すヒューイ。


 基本的に、古い魔導具しか、興味を持っていない。

 ただ、ヒューイの元にも、いろいろな情報が入り込んでいて、リュートたちは彼の情報を、いろいろと利用していたのだ。


「きな臭くなってきたな」

 ほくそ笑んでいる、リュートである。

 楽しそうに頬を緩ませているリュートに、やれやれと呆れていたのだった。

「あまり、無茶をするなよ」

 冷めた目で、窘めていた。


「しないさ」

「そういう時の方が、危険だな」

「向こう次第だ」

「だったら、無茶をしそうだな」

「準備を、ちゃんとしているさ」


「見慣れない顔もあったが、大丈夫なのか?」

 僅かに、ヒューイの視線が、上に傾けられていた。

 その脳裏には、戦闘向きではない、ユルガやソルジュが浮かんでいたのだ。

 ひと目見て、ユルガやソルジュが、激しい戦闘に向いていないことを、察していたのである。


「大丈夫だ。全部、トリスたちが、何とかするだろう。でなければ、置いていくだけだ」

「トリスたちが、大変そうだな」

「チビは、噂の妹か?」

 ミントのことは、ここまで流れていた。

「妹だ」

「そうか」


「それに、セナやダンたちもいる。面白くなりそうだな」

「剣術科の連中か? 使い物になるのか?」

 胡乱げなヒューイの眼光だ。

 彼らのことも、ある程度、力量を見極めいていたのだった。


「……大丈夫だろう」

 首を傾げている、リュートだった。

 そんな姿に、盛大な嘆息を漏らしていた。

「訓練は、するからさ」

 ようやく、リュートの言葉で、納得するヒューイだ。


「あそこに、行くのか?」

「ああ。情報収集と訓練を、兼ねてな」

「精々、使い物にならなく、するなよ」

「大丈夫だ。俺の回復魔法が、あるから」

「それはそれで、可哀想だな」

 しわのある頬を、上げていた。


読んでいただき、ありがとうございます。

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