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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第165話

 カーチスとカレンは、いつも二人で過ごすことが、多い湖に、足を運んでいた。

 湖の周囲には、小動物から大きな動物たちがあふれている。

 人がいるからとって、逃げ出す動物たちはいない。

 ここでは、共存していたのだった。


 魔獣なども、時折、顔を見せることも多い。

 そうしたこともあり、生徒も、この辺りに、顔を出すことが少なかった。

 そして、オラン湖よりも少ないが、精霊も、ちらほらと、姿を見せていたのだ。

 けれど、二人が来たことにより、小動物や精霊たちが、遠巻きに二人の様子を窺っている。




 カブリート村の話が、出始めた頃から、カーチスの言葉数が、少なくなっていたことに、密かに付き合っているカレンは気づいていたが、黙って、様子を窺っていたのだった。

 なぜ、おとなしくなったのか、察しがついていたからだ。


 何も喋らず、地面に座り込んでいる二人。

 綺麗な湖を、意味もなく、眺めていた。

 カーチスの眼光は、湖ではなく、遥か遠くを見つめている。


「……大丈夫?」

 心配げに、カレンに声をかけられたのに、気づかない。

 ここまで来る間も、カーチスは、どこか上の空だった。

 ただ、カブリート村の件があったので、カレンも、剥れることはなかった。

 ますます、カーチスのことが、心配になっていったのだ。


 先ほどよりも、声を高くするカレン。

「カーチス?」

 ようやく、カレンの存在に気づく。

 ハッとし、ぎこちない顔を、不安そうなカレンに巡らせていた。


「ごめん。何?」

「大丈夫って、聞いただけよ」

 自分らしくない行動を、カーチス自身も、気がついていた。

 だが、ふとした瞬間に、別なところに、意識がいってしまい、不甲斐ない自分に、さらに落ち込んでもいたのだった。


「……大丈夫」

 力がこもっていない、カーチスの声音。

 じっと、見つめている、カレンの双眸だ。

「そうは、見えない」

「……ごめん」

「ずっと、謝ってばかりよ」


 何とも言えない顔を、滲ませている。

 カーチス自身も、情けないと抱き、モチベーションを上げようと試みるも、カブリート村のことを考えるだけで、どうしても、気持ちが下がってしまっていた。


「カブリート村に、行ける?」

 狼狽えているカーチス。

 すぐに、返事が返せない。

 胸の奥では行きたくない、見たくないと巡らせていたのだ。


 食い入るように、カレンの眼光が注がれている。

 カレンの言葉に、瞬間的に、心の中が、揺れ動いていた。

 だが、それも、僅かだった。

「……行くよ」


「別に、行かなくっても、大丈夫よ」

 まだ、まっすぐに、見つめられている。

 そして、その双眸を、しっかりと、カーチスが受け止めようとしていた。


「……面白そうだろう?」

「カーチス……」

 無理している、カーチスを窘めていた。


 カブリート村に、カーチスが行くことに、躊躇いを抱いている。

 カレン自身では、行く気ではあったのだ。

 軽く、首を振っているカーチス。


「大丈夫だよ。それに、興味もあるし……」

「大丈夫なの? 何かあったたら、瞬時に、動けるの?」

「心配性だな」

「カーチス」


 カーチスだけの問題では、ないからだ。

 僅かな遅れが、大きなミスに繋がることは、これまでの経験で、把握済みだった。

 だから、その危険性があるカーチスを、今回、動向することに、一抹の不安を抱えていたのである。


「大丈夫。しっかりと、反応するさ」

「本当に?」

 カーチスの奥底を、見定めようとする眼光。

「ホント」

 先ほどは違い、揺るがないカーチスの瞳だった。


「……なら、いいけど」

 だが、まだ、納得できていない、カレンがいた。

「もう、はっきりさせないとな」

 カーチスの眼光が、遥か遠くに巡らせている。

「……どうするの?」


「はっきり、決着をつけるだけだろう」

 おどけるような顔を、カレンに傾けていたのだ。

 それに対し、カレンが、眉を潜めていたのだった。


「無理だと思っているのか?」

 何度も、決着をつけようと言いつつ、カーチス自身、悩んでいたからだった。

 そうした姿を、カレンは幾度も、見てきたのである。

「……そうじゃないけど……」


「大丈夫さ。父さんたちに、はっきりと言うさ」

「いいの?」

「いいさ」

「後悔しない?」

「しない。決めていただろう」


「でも……」

 不安そうな顔を覗かせているカレン。

 小さな笑みを、カーチスが零していた。

 そして、真剣な眼差しを巡らせていたのだ。

「大丈夫だ」

「……」


「俺には、カレンもいるし、リュートやトリス、クラインもいるんだ。困ったら、助けて貰うからさ」

「メチャクチャな面々ね」

「それが、いいんだよ」

 先ほどまでの、辛気臭い雰囲気がなくなり、笑っている、二人がいたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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