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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第150話

 剣術科の授業を、トリス、カーチス、カレン、アニスが、見学していたのである。

 カレンが誘って、アニスも、訪れていたのだった。


 トリスたちは、堂々と、科が違う、授業を眺めていた。

 他の科の授業を見て、少しだけ、新鮮さを憶えている。

 けれど、次第に、そうした気持ちが、霧散していく。


 剣術科の生徒たちも、幾度も、トリスが見学していたこともあり、耐性ができ、ある程度は、授業に意識を持たせていたのだった。

 だが、上手く、できない生徒も、ちらほら存在はしている。

 カイルの方も、トリスたちがいても、注意をしない。

 それぐらいで、気がそれるならば、失格だからだ。

 後で、追加で課題を出すだけだった。




「疲れそうだな」

 汗を滲ませている生徒たちを、カーチスが窺っていた。

「これが、授業なんじゃないの?」

 同じように、眺めているカレンが、返していたのだ。


 ここ数年、カレンは、真面目に授業に参加していることも多いが、未だに、カーチスたちは、ごくたまにしか、授業に参加しない。

 苦笑しているアニスに関しては、一年生の時から、真面目に授業に参加していたのだった。

 真面目に、参加している生徒にとって、この光景は、ごく当たり前の光景なのである。

 なんら、変わりが、なかったのだった。


「な、トリス。これのどこが、楽しんだ?」

 カーチスの双眸が、隈なく様子を窺っているトリスに、巡らされている。


 汗を流しつつ、二人から三人で組んで、黙々と、剣で打ち合いを繰り返していた。

 誰一人として、お喋りする者がいなかった。

 止め処なく、続けられる光景。


 カーチスからしたら、シュールでしか思えない。

 面白みの欠片が、一つもなかったのだった。


 寮で、常々、リュートが、剣術科の授業は、楽しいぞと、公言していた。

 だから、いつかは、剣術科の授業を、覗きに行こうと、抱いていたのだった。

 そして、クラインは、別行動をとっているが、ようやく、念願叶って、剣術科の授業を見学に来ていたのである。


「リュートにとっては、面白いんだろう」

 素っ気ないトリスだ。

 トリス自身も、面白みがなかった。

 だが、リュートが、無茶していないか、監視の意味と、剣術科の情報集めていると言う一環もあり、時々、見学していたのだった。


「……私も、面白いって、思えないんだけど?」

 首を傾げているカレン。

 僅かに、顔を顰めている。


 魔法科の授業は、もっと、賑やかだった。

 爆音が、響き渡っていたのである。

 まるで、教室で、学科を受けているような感覚を、憶えていたのだ。


「魔法の反復練習と、同じじゃないのかな」

「それにしても、飽きないのかしら?」

「たぶん。セナたちは、必死に、向き合っているんじゃないの」

 反論できないセナたちに代わり、アニスが代弁していた。


(これが、普通なんですが……)


 これまで、カレンから、A組の授業をことは、話を聞いて、知っていたのである。

 普通では、あり得ない授業内容に、内心、開いた口が塞がらなかったが、指摘したことは、これまで一度もない。

 知らない方が、いいこともあるかもと、言えなかったのだ。


 A組と、他のクラスでは、授業内容が、全然、違っていたのである。

 A組の中で、少しだけ、違っていると言う認識しかない。


「そうなのかな」

「そうだと、思うけど」

「それにしても、単純な行動は、つまらない」

 不満げな言葉を、カーチスが、濁していた。


 もっと、派手なことを、想像していたのだ。

 それが、地味な反復な練習に、肩透かしを食らったような気分を、カーチスが味わっていたのである。


「これが、七年生の授業かよ……」

 二年生の時から、ラジュールに、鍛えられた彼ら。

 目の前に映っている光景に、とても、ユルく、思えてしょうがなかったのだ。


 ラジュールの授業は、普通の教師が、教えるものと、大きく違っていた。

 そして、長年、ラジュールの教えに、馴染んでいた彼らは、それが普通であると信じ、力をつけていったのだった。

 もう、卒業しても、やっていけるぐらいにはだ。


「体力をつけることに、重きを置いてあるんだろうな」

「だけどよ……」

「カーチスは、昔から、単純な行動が、嫌いだったからな」

 チラリと、窺っているトリス。


「ホント。未だに、嫌いなんだから」

 咎めるような、カレンの眼差し。

 ラジュールから、課題や試験などで、付っきりで、カレンが教えている時でさえ、集中を途切れ、何度も、注意を受けていたところだった。


「……昔よりかは、マシになったぞ」

「確かに、昔よりかは、マシになっているな」

「だろう」

「トリス。甘やかさないで」

 はっきりとした口調で、カレンが、窘めていた。


 ここで、甘やかせても、いい結果にならないと、巡らせたからだ。

 厳しいカレンの姿に、アニスが、微笑んでいる。


「わかった」

「トリス……」

 友達を見捨てたトリスに、ジト目になっているカーチスだ。

「頑張れ、カーチス。カレンの行動は、カーチスのことを、思っている行動だからな」


「「……」」

 あわあわと、慌て動き出す、カーチスとカレン。


(これで、俺たちが、気付いていないと、思っているとは……)


「……ホント。カレンは、友達思いだな」

「そ、そうよ。友達思いよ」

 カレンの脇では、コクコクと、頷いているカーチスの姿がある。


 ニタッと、笑っているトリスだった。

 アニスは、小さく笑っていたのだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

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