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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第148話

 空き時間を利用し、セナとローゼルが、グランドに来ていた。

 このところ二人で、稽古をし、互いに、切磋琢磨して、腕を磨いていたのだった。

 勿論、リュートやトリスとも、セナは、訓練をしていたのだ。


 けれど、それだけでは足りないと、ローゼルとも、手合わせしていた。

 さらに、貪欲になり、あまり交流していなかった、クラスメートとも、手合わせする機会を増やしていたのだった。


 だが、稽古をしないで、剣術科のクラスメートと、お喋りをしている。

 他の生徒たちも、同じように、お喋りしていたり、各々で、稽古に励んでいたのだった。


 話し込んでいるセナたち。

 視線を巡らせてくる者なんて、一人もいない。

 だからと言って、セナたちは、気を緩めていなかった。

 ある程度、神経を尖らせ、周囲に、気を配っていたのだ。


 セナとローゼルの元には、ビンセントたちと、同じ班のガルサとニエルがいる。

 近頃、やる気のないビンセントたちが、見るに耐えないこともあり、早々に、彼らと離れていた。

「もう、いい加減にしてほしいわよ」

 憤慨しているガルサだ。


 班のリーダーとして、何度も、注意を行っていた。

 けれど、改善される傾向がない。

 むしろ、段々と、下降していったのだった。


 怒りに合わせるかのように、ガルサの長めで、一つにまとめられている髪が、激しく揺れている。

 彼女の性格を、現したかのように、髪はストレートで、艶やかだ。


「大変そうね」

 気遣うセナだった。

 リュートが加わったことで、班に乱れが生じ、悩んでいたのだ。

「やる気がないなら、ほっとけばいいのよ」

 冷めているローゼルである。


「でも、班行動も多いし、もう少し、何とかしてほしいんだけど」

 ニエルも、どちらかと言えば、ローゼル寄りなのだが、班行動が多く、何かと、連帯責任がある剣術科では、安易に、放置することも、できなかったのだった。

 ガルサとは、対照的に、長めのくせっ毛を、みつあみで一つにまとめてある。


「追い討ちを掛けたのが、きっと、魔法科のバドってやつね」

 ガルサは、リーダーを務めていることもあり、ビンセントたちの様子を、日頃から窺っていたのである。

「「確かに……」」

 苦々しい表情を、浮かべている、ローゼルとニエル。


「ねぇ。セナは、バドってやつを、知っているんでしょう? どうなの?」

「みんなよりも、少しだけ、聞いているだけで……。深く知っている訳じゃないわよ」

「でも、セナの目からしても、ヤバい感じなの?」

 追究の眼差しを、ガゼルが注いでいる。


 今は、叶わなくっても、いずれは、強くなり、上を目指したいと言う気持ちが、心の奥底にあったのだ。

 勿論、目の前にいるセナも、越えてだった。

 そのため、日々の稽古を欠かさない。


「魔法科で、リュートに次いで、二番目みたい」

「リュートは、規格外でしょ」

 ローゼルが、突っ込んでいた。

 同じ班と言うこともあり、常日頃から、バカモノ染みた姿を、垣間見ていることもあり、リュートの強さは、別物だと、ローゼルの意識の中で、除外している。


「バドも、その類に入るみたい」

 セナの言葉に、三人とも、軽く絶句していたのだ。

「リュートほどでは、ないけど、バドは、底知れないって、トリスが、言っていたわよ。それに、クラインやカーチスたちも、絶対に、バドとやり合うことは、しないって、とにかく、回避することを、常に、考えているって」


「「「何、それ」」」

 渋面になっている、ローゼルたち。


(A組は、バケモノの巣窟じゃない)


「とにかく、かかわらない方が、賢明かも。だって、テロスたち、未だに、何があったのか、言わないんでしょ?」

 窺うような双眸を、セナが、ガルサに巡らせている。

 何度か、ガルサは、威圧だけで、クラスメートを押さえ込んだ、バドの能力を把握しようとし、バドとかかわりを持ったテロスたちに、話を聞こうとしていたのだ。


 けれど、誰一人として、口を割る者がいなかった。

 ただ、気をつけろ、かかわり合うなって、言うだけで。


「魔法科の連中って、どんな変わり者が、多い訳?」

 呆れた顔を、ニエルが、滲ませていた。

「まだ、いるかもしれないわね」

 逡巡しながら、ローゼルが、呟いていたのだ。

「確かに。その可能性も含めて、見ておいた方が、いいわね」

 僅かに、顔を顰めつつ、ガルサも、思案中だ。


「魔法科の中でも、A組は、特に、気にしていた方が、いいかもよ。油断していなくっても、あっさりと、やられるから」

「セナ。私たちのこと、見くびっていない?」

 ニエルが、僅かに、目を細めている。


(剣術科の女子って、どれだけ、血の気が多いのよ)


 傾けられた双眸を、セナは、そらすことをしない。

 平然とした顔で、受け取っていたのだ。


「……見くびっているかも。だって、一年生の時から、とんでもなく強いリュートと、一緒にいたのよ。それに、あのバドもね。それに、いろいろと、仕出かしているわよ、彼らは。噂以上にね」

「何か、聞いているの?」

 窺うような眼光で、ガルサが尋ねた。

 魔法科の出来事は、剣術科の方でも、流れていたのだ。


「たぶん、ほんの一部だけどね」

「「「……」」」

「聞きたいって、顔しているけど。カイルに、止められているから、話せないから」

 不満げに、口を尖らせている面々。


 リュートたちと、かかわりと持つようになって、セナは、カイルからリュートたちから聞いている話を、すべて剣術科に、話すなと、強く口止めされていたのである。

 学院に、入り込んでいる諜報員たちと、戦闘をしていると知られると、自分たちもと言って、真似され、無茶する可能性があると、踏んでいたからだった。


「そんな顔しても、無駄よ」

「「「……」」」

「言えるとしたら、A組は、すべてにおいて、経験値が、高いってことよ」

「経験値?」

 訝しげな表情を、ニエルが、注いでいた。


「そう。経験値が」

「私たちだって」

「想像しているよりも、上よ。リュートたちと、一緒に行動して、特に、思うから」

 リュートたちと、行動することが、多くなったセナ。

 一番、痛感させられたことだった。


 そして、ローゼルも、同じ班と言うこともあり、同じことを、薄々と、感じ取っていたのである。

「「「……」」」

 自分たちよりも、優秀なセナの言葉に、ギリッと、歯を噛み締めていた。


 伏せていた顔を、ローゼルが上げ、セナを捉えている。

「……もしかして、このところ、顔色が優れなかったのは、そうしたことを、気にしていたの?」

 ローゼルから、注がれる視線に、セナが驚かされていた。

 まさか、気づかれているとは、思ってもみなかったのだ。


 ガルサとニエルが、瞠目している。

 二人は、セナの様子に、全然、気づいていない。

 ローゼルやダン、パウロだけが、気づいていたのである。


「……気づいていたの?」

「当たり前でしょ。一緒の班なのよ。気づかない訳がないでしょう。言っておくけど、ダンやパウロだって、気づいているわよ」

 甘くみないでよって顔を、ローゼルが、覗かせていた。

「……」


「リュートだけね。気づいていないのは」

「リュートは、興味がないことは、気づかないからね」

「リュートを見ていると、天才なのか、バカなのか、わからない時が、あるわね」

 ローゼルの言葉。

 ガルサも、ニエルも、苦笑いだ。


「そうね。つくづく、自分の経験値のなさに、呆れていたわ。だから、もっと、稽古して、経験値も増やして、強くなるつもりよ」

「そう」

 闘志を燃やしている、ローゼル。

 そして、ガルサも、ニエルも、負けていられないと、気持ちを改めたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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