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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第6章 邪魔するものは、吹っ飛ばせ
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第142話

本日から、新章に入ります。

 リュートの剣術科の授業が終わり、空き時間となっていた。

 トリスと共に、自分たちの寮に向かって、歩いていると、同じ寮の部屋であるクラインと、出くわしたのだ。

「クライン」

 元気よく、声をかけるリュート。


 有り余る元気さに、トリスも、クラインも、首を竦めている。

 先ほどまで、激しい授業を、受けていた者とは思えない。

 クラスメートたちのほとんどが、疲弊していたからだ。

 その中でも、リュートは、ひと際、元気だった。


 心地よい風が吹き、火照った身体が、癒されていく。

「リュート。それに、トリス。授業は、終わったの?」

「ああ」

「空き時間になったから、少し、村に出かけようと、思ってさ」

 息抜きと、買出しを、兼ねていた。


「トリスは、ソルジュと、一緒じゃないんだな」

 ソルジュに張り付いていないことに、クラインが、目を見張っていたのだった。

 微妙な顔を、トリスが、覗かせている。

「ついてくるなって、言われたらしいぞ」


 小さく、笑っているクラインだった。

 ありありと、その情景が、浮かんでいる。


「だろうね。あれだと」

 ソルジュに対し、同情する双眸を、クラインが巡らせていたのだ。

 クラインの耳にも、トリスが、弟ソルジュに、付きまとっている話が、しっかりと届いていたのだった。


 どこか、面白くない顔を、トリスが、滲ませていた。

 煙たがられ、行き場所を失っていたのだ。

 リュートに愚痴を零しつつ、行動を一緒にしていたのである。


「で、クラインは、どこへ、いっていたんだ?」

 制服を着ていたが、授業を受けていた雰囲気がなかったからだ。

 だから、容易に、どこかへ、出かけていたと、導き出した。

「カブリート村」

 苦笑している、クラインだ。

 トリスは、眉間にしわを寄せている。


「カブリート村って、あの変な村の?」

 面を喰らっている、リュートだ。

 そして、かつて、何度か、訪れたカブリート村を、思い返していた。


(随分と、変わっている村だよな)


「そうだよ。リュート」

「何で、そんなところに?」

「欲しい薬草があって。あそこじゃないと、手に入らないから」

 クラインも、行く気がなかった。

 だが、贔屓にしている店で、在庫が、なかったせいもあり、その足で、カブリート村まで足を運んでいたのだった。


「他の村には、なかったのか?」

「ちょうど、在庫を切らしてみたいで、それで……」

「大変だったな」

 気遣う眼差しを、リュートが、注いでいた。

 隣に立つ、トリスも同じだ。


 フォーレスト学院の敷地の中に、四つの村が、点在していた。

 その中でも、カブリート村は、学院ができる以前より、村があり、ここに学院を作る際も、強硬に反対し、いざこざがあったと、言われていたのである。

 そうした経緯もあり、他の三つの村と比べ、閉鎖的で、他の村や学院とは、一線を引いていたのだった。


 学院としては、決められた仕事を、きちんとしてくれることもあり、学院や、他の村とも、交流を持たないカブリート村に、いささか言いたいところがあるが、静観する立場を取っていたのだ。

 わざわざ、諍いを、再燃させたくなかった方が、大きかったのである。

 そして、交流を持たないこともあり、他の村からも、カブリート村は、敬遠されていたのだった。


「前、行ったよりも、酷い状態に、なっているよ」

 やれやれと言う顔を、クラインが、覗かせている。

 リュートたちは、何度か、カブリート村に行って、それなりに、問題を起こしていた。


 出禁しても、来るリュートたち。

 音を上げたのは、カブリートの村の村人の方だった。

 カブリートの村の村人たちは、かかわらないことを決め、リュートたちが来ても、無視を決め込んでいたのだ。


「酷い?」

 首を傾げているトリス。

「用が済んだら、さっさと帰れって、感じ?」

「随分と、嫌われているな、俺たち」

「でも、俺たちだけじゃ、ないみたいだよ」

「どういうことだ?」


「村に来ている、旅人なんかにも、冷たいし、来るなって、感じを出している」

「それ、変じゃないか?」

 クラインの話に、トリスが、渋面していく。


 理解不能な行動でもあったのだ。

 学院との取り決めの一つとして、旅人や冒険者のもてなしをすることに、なっていたからだった。

 リュートたちが、村にいっていた際は、他の三つの村と比べると、質素だが、それなりのもてなしを提供していた。


「そうなんだよね」

 逡巡してみせるクライン。

 同じことを、抱いていたのである。


「何をしている、そんなところで?」

 突如、校舎の方から、バドが、姿を現した。

 堂々とする振舞いに、風格さえも、備わっていたのである。


「バドか」

 頬を上げている、リュートだ。

「そうだ」

「ところで、バドは、何をしていたんだ? コンロイ村の新種の魔獣は、どうなった?」


 新種の魔獣を見にいって以来、バドとは、顔を合わせていない。

 トリスから、帰ってきている旨は聞いていたが、互いに忙しく、顔を合わせていなかった。


 新種の魔獣の話になり、トリスの表情が、顰めっ面だ。

 クラインは、困ったなと言う顔を、滲ませていた。

 コンロイ村から戻ってきて、傷が癒えてからは、もう一度、探索に行こうとするリュートを止めるのに、トリスたちに、ひと苦労あったからだった。


 見る見る面白くないと言う顔に、なっていくバド。

「……どうやら、あの一頭しか、いないようだ」

「そうなのか?」

「隈なく、捜してみたが、見当たらなかった」


 捜索している際に、各国の諜報員などと出くわし、一戦交えていたのだ。

 勿論、相手に対し、引くことをしない。

 アクティブな攻撃を、仕掛けていった。

 普段なら、実験結果が得られると、喜々するところだが、今回は、新種の魔獣が目的だったので、幾分か、気持ちが、落ち込んでいたのだった。


「そうか……。それは、面白くないな……」

「ああ」

「でも、バドは、新種の魔獣の件を、聞きつけたやからと、遊んだんじゃないの? それだけじゃ、満足できなかったの?」

 クラインが、話しかけてきた。


 少しでも、気持ちが向上させておかないと、後々、面倒になると思ってのことだ。

 実験に付き合わされる身としては、最も、避けたかったのである。


「途中で、ラジュールと、出くわした」

 ご愁傷様と言う顔を、見せているクライン。

 トリスに至っては、自業自得だろうと言う顔だ。

 リュートは、そうなのかと、首を傾げていた。


「どれくらい、課題は、出されたの?」

「六つだ」

 課題の多さに、トリスも、クラインも、瞠目していた。


((機嫌、悪っ))


「俺も、それぐらいは、出されるな」

 リュートの、のん気な声音。

 呆れ顔を、トリスやクラインが、滲ませている。

 問題を起こすたびに、数多くの課題を出されていた。


「それはいい。すぐに、片付くからな」

 トリスも、クラインも、ラジュールから、課題を出されていた過去を振り返るが、どの課題も、簡単なものではなかった。

 それを、すぐに片付くと言うバドの発言に、開いた口が塞がらない。

「「……さすがだな、バドは」」


 天才であるリュートの背後に、隠れてしまっているが、バドも、天才だったのだ。

 こうした発言を聞くたび、改めて、バドの優秀さを、二人は、感じてしまっていた。


「リュートは、剣術科にいっていたとして、クラインは、どこかへ、行っていたのか?」

「リュートたちにも、聞かれたけど、カブリート村にいって、帰ってきた帰り」

「また、陰険な村に、いっていたな」

 陰険と、はっきりと、口にするバド。

 トリスとクラインは、苦笑していた。


 リュートたちに、説明したように、クラインが、カブリート村の出来事を話して、聞かせたのだった。

「……。何か、あるな」

 逡巡していたバドの口が、動いていた。

「バドも、そう思うか?」

 同意見を持つバドに、楽しそうなリュート顔だ。

 しっかりと、頬が、上がっていたのだった。


 二人のレーダーが、感知していた。

 トリスとクラインは、遠い目をしている。


((コンロイ村から、戻ってきたばかりなのに……))


 リュートとバドが、話し込んでいた。

 楽しげにお喋りが進んでいる。


「とりあえず、バドは、早く課題を提出した方が、いいよ」

 少しでも、行動を遅らせようと、クラインが、口を開いていた。

「リュートも、村に買い物に、行くんだろう」

 そうだったと、二人が抱く。

「じゃな、バト」


 無理やりに、トリスが、リュートを連れ、寮へと歩き出した。

 バドの方も、研究部屋に戻っていく。

 バドを見送ってから、クラインも、寮へと帰っていった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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