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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第5章 ささやかな頼み事は大忙しに
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第129話

 リュートたちを窺っている者たちは、コンロイ村に、購入目的で、訪れる冒険者たちを狙い、金を荒稼ぎしていたのだ。

 その手口は、手荒いものの、巧妙でもあった。

 何度も、取締りを試みても、証拠が乏しく、未だに、捕まえることができなかったのである。

 村で、頭を悩ませる問題でも、あったのだった。


「金に、糸目をつけずに買えるとは、ホント、いい身分だね」

 三十代中盤の女が、妖艶な笑みと共に、ワイワイと、騒いでいるリュートたちを眺めている。


 纏っているローブにより、隠されているが、しっかりと、戦闘モードのいでたちになっていた。

 子供相手だろうが、手を抜くことがない。

 使い込まれた防具をつけ、切れ味、抜群の剣を、携えていたのである。

 顔が整っている女は、何人もの冒険者たちを、手玉に取り、騙してきたのだ。


「だな。結構な高価なものを、身につけているのに」

 相打ちを打つ男。

 彼女たちが、所属するグループで、両者は、中核を担っていたのである。


「どこぞの坊ちゃんと、嬢ちゃんだろうな」

 男の眼光の奥には、蔑むような光が宿っていた。


 男にとって、最も嫌うタイプの集団だった。

 そのせいもあり、若干、いつもよりも、内に秘める闘志を、燃え上がらせていたのだ。

 容赦することなく、嫌いなタイプの集団を、執拗に嬲り者にしていたのだった。

 そうした餌食になっていた者が、多くいたのである。


「あれを売っても、相当な額になるだろうね」

「それに加え、持っている金も、多そうだ」

 互いに、厭らしい笑みを、漏らしている。


 コンロイ村に、リュートたちが入ってきた時点で、ターゲットとして決め、ずっと付け狙っていたのだった。

 他に、狙っているところを、現在、仲間たちが、蹴散らしていたのである。

 自分たちだけの、獲物にするためにだ。


「みんなは?」

「次第に、揃うだろう」

「だったら、この機会を逃さない方が、いいね」

「そうだな。上手い具合に、あいつらしか、いないし」


 不敵な笑みを携え、のん気に喋っているリュートたちを、捉えている。

 彼らがいるのは、木の上で、気づかれないように気配を消し、後をつけていた。




 リュートたちは、長い時間をかけ、森の中を、ひたすらに、歩き回っていたのである。

 襲い掛かってくる、弱い魔獣を倒しながらだ。

 この辺には、基本的に弱い魔獣しかしない。

 そうした理由もあり、初心者の冒険者たちが、訪れていたのだった。


 訝しげな表情を、滲ませたセナ。

「ところで、頼まれた物は、いつ、取りにいくのよ? 目的、忘れていない?」

 突如、黙り込むリュートたち。

「「「「「……」」」」」

 すっかり、忘れていた面々だ。


 セナに指摘され、ようやく、コンロイ村に来た意味を、思い出していたのだった。

 何も、言わない面々。

 盛大な溜息を、セナが吐いた。


「今、行く?」

「後でも、大丈夫だろう?」

「そうだな。帰る前に、取りにいっても、問題ないだろう」

 トリスが、リュートの言葉に、賛同していた。

 勢いよく、カーチスたちが、同意している。

 のん気な彼らを、見ずにいられないセナだ。


「徐々に、集まってきているな」

 彼らだけに、聞こえる程度の声で、クラインが、周囲の気配を探っていたのだ。

 クラインの言葉に、それぞれ少しだけ、身を引き締めていた。

 だからといって、身体が強張ることはない。

 程よい緊張に、包まれていたのだった。


「そろそろか」

「だろうね」


 最初から、自分たちが、見張られることを把握し、面倒臭いと言うこともあり、泳がせていたのである。

 それと、村の中で、目立つ行為も、避けたかったのだ。

 勿論、襲ってくれば、すぐ対応できるように、準備だけはしていたのだった。

 そして、ここで、歩き回っていたのも、うるさいハエを、ある程度、減らすためだ。


「そうね。どうして、リュートと一緒だと、いつも、こうなるのかしら?」

 険しい形相のカレン。

 何とも言えず、視線をそらす、トリスとクラインだ。

 いくつもの余罪を、持っていたからだった。


 小さく、笑っているアニス。

 カーチスは、カレンの様子に、落ち着きがない。

 呆れた顔を、セナが、覗かせている。

 そして、リュートだけは、きょとんとした顔を、滲ませていた。


「何がだ?」

 首を傾げ、本当に、わかっていない姿に、カレンが、溜息を漏らしている。

「リュートは、考えないで。きっと、理解できないから」

 こと細かく、説明することが、鬱陶しくなり、放棄してしまったのだ。


「わかった」

 素直に応じ、楽しげに、集まってくる様子に、手ぐすね引いていたのだった。

 指で、合図を送るトリス。

 手馴れている動作だ。


 誰もが従い、その場には、リュートと一人を残し、散っていく。

 鮮やかな、連係プレーである。


 突然のリュートたちの行動に、一瞬の動揺を窺わせたが、すぐさま、落ち着きを取り戻し、散っていったトリスたちに、仲間を分散させ、向かわせたのだ。

 リュートの元に、残っていたのは、五人だった。


「随分と、面白い行動をしたな」

 目を眇めている男だ。

 女と共に、ずっとリュートたちを、見張っていた男が、残っていたのである。


「そうか」

 首を傾げ、その場に残った顔触れを、確かめていく。

「……これだけか」

 つまらなそうな顔を、覗かせているリュートだ。


(もっと、残っていれば、楽しめたのに)


「舐めたガキだな」

 嫌悪を隠さず、顔を歪ませているリュートよりは上だが、残ったメンバーの中では、若い男が呟いていた。

 だが、リュートの表情が変わることがない。

「舐めたら、汚い。俺は、事実を言っただけだ」


 平然とした顔をしていた。

 そうしたリュートの姿に、さらに、残っているメンバーの顔が、変わっていく。

 ただ、最初に、喋った男だけが、表情が崩れない。

 毅然としているリュートを、見据えていたのである。


「だったら、証明してくれるか? 強いってことを?」

「いいだろう」

 鷹揚に、そして、楽しげに、口の端が上がっていた。


 携えていた剣を抜き、物凄いスピードで、彼らの元へ回り込む。

 目を見張っているだけで、動かない二人を、先ず仕留めていった。

 他の三人は、やられている仲間に、目もくれない。

 減れば、増やせばいいと言う、集まりでもあったのだ。


 冷ややかな眼差しと共に、リュートとの間に、間合いを空けていったのだった。

「やるな」

 賞賛している声。

 だが、僅かだが、警戒心を含まれていた。


 自分を認めたことに、リュートが、満足げな顔を浮かべている。

「だったら、最初から、本気でこい」

「……そうした方が、賢明のようだな」

 ニカッと笑いながら、三人の男たちが、向かってくる状況を、リュートは楽しんでいたのである。


読んでいただき、ありがとうございます。

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