第128話
森の中を、散策しているリュートたち。
カテリーナから、ゆっくりして来て、いいと、言われていたので、のんびりと、コンロイ村を堪能しようとしていたのだった。
セナたちも、早く帰ろうとしない。
品物が、いい武器や防具が、揃っていたからだ。
めったに、こういうところに、来られないので、じっくりと、見てみたと言う気持ちが、勝っていたのである。
「誰か、ミントの方へ、いった方が、いいんじゃないの?」
単独行動をしているミントを、気遣うセナ。
面倒見がいい性格が、表れていた。
「平気だろう」
容易く、リュートが、答えていたのだ。
全然、心配している様子がない。
むしろ、久しぶりのお出かけを、楽しんでいた。
それに、トリスを始めてとする面々が、同調していたのだった。
セナ一人だけが、溜息を、漏らしていたのである。
(まだ、小さい子なのに……。何? この安心しきっている様子は……)
「セナ。大丈夫よ。あれの妹なんだから」
意気揚々と、先頭を歩いているリュートを双眸で巡らし、カレンが、安心させようとしていた。
力ない眼差しを、注いでいるセナだ。
(確かに……大丈夫だろうけど、まだ、小さないのに……)
セナ以外の全員が、大丈夫と、決めつけていたのである。
「……そうね」
「でしょう」
ニッコリと、微笑むカレンだった。
コンロイ村に来てからは、少しだけ、和やかな雰囲気に、戻っていたのである。
よかったと、胸を撫で下ろしている、カーチスとクライン。
ニコニコと、皆の話に、耳を傾けているアニスに、カレンが視線を巡らす。
「ねぇ。アニス、防具でも新調する? せっかく、ここに、来ているから」
「そうだね」
逡巡しているアニスだ。
防具なども、新調したいが、コンクールに向け、いろいろと、お金も、掛かることもあったのだった。それと同時に、名立たる名工も、揃っているコンロイ村で、買い物をしたい気持ちも、膨らんでいたのである。
「予算と、相談かな」
「セナは?」
突如、振られたセナ。
「……今ので、いいや……」
アルバイトをしている身としては、ホイホイと、無駄遣いできなかったのだ。
だが、コンロイ村に、来ていることもあり、心の中では、新しい武器や、防具を揃えたい気持ちが、大きくなっていくのだった。
(もっと、バイトしとけば、よかった……)
女の子たちの会話を、耳にしているカーチスだ。
僅かに、安堵の表情を浮かべているカーチスを、カレンの瞳が捉えている。
「カーチスは?」
「……いいものがあったら、買っても、いいかな」
「クラインは、どうする?」
カーチスの双眸が、クラインを見つめていた。
何かと、学院を抜け出すことが多いので、それなりのものを、常に、買い揃えていたのである。
けれど、コンロイ村には、久しぶりに訪れることもあり、気分は、浮き足立っていたのだった。
「俺も、掘り出し物があったら、買ってもいいかな」
キラキラと、双眸が、輝いている二人だ。
二人の手元には、すでに、馴染んだ武器などがあり、全然、買う必要性がない。
十分なほど、揃っていたのである。
職人が、多い村に来ていることもあり、面白いものを見つけたいと言う心が、芽生えていたのだ。
「リュートとトリスは、どうするんだ?」
「いいものがあったら、買ってもいいな」
何気なく、リュートが、口に出していた。
その中で、セナだけが、蚊帳の外に置かれていたのだ。
誰も彼も、買う気満々な様子に、セナが、ムカついている。
(きっと、欲しいものがあったら、何も、考えないんで、買うんでしょうね)
「俺も、ダガーとかも、見たいな」
自分の必要なものを、トリスが、頭の中で、リストアップしていた。
段々と、セナ一人だけが、疎外感を膨れ上がっていく。
互いに、欲しいものを、気楽に上げていっていたのだった。
(……金ある人は、いいわね……)
場の雰囲気を、壊さないように、密かに、短い嘆息を零している。
いつの間にか、セナの隣に、来ていたトリス。
「薬草でも採取して、小金でも稼ぐ? 俺、手伝うよ」
少しだけ、自分の内情を、把握しているトリスに、ジト目になる。
そして、トリスの申し出に、僅かに、心が動かされていた。
(稼ぐ……、でも……)
「大丈夫。みんなには、言わないから。二人で、探せば、早いよ。それに、俺、薬草屋の息子だよ。薬草に関しての目利きは、任せてよ」
「……」
甘い誘惑。
非常に、心が持っていかれていく。
「明日の朝、早く起きて、薬草探しね」
ニカッと、口角を上げているトリス。
黙り込んでいるセナだった。
「いろいろと、見て、買うものを、見繕って置くと、いいよ」
「……ありがとう」
「どう、いたしまして」
トリスとセナが、話し込んでいる間も、カレンたちは、どんな防具や道具を買うかで、盛り上がっていたのである。
そうした様子をコンロイ村で、一、二を争うほど、評判の悪い冒険者グループが、見張っていたのだった。
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