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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第5章 ささやかな頼み事は大忙しに
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第128話

 森の中を、散策しているリュートたち。

 カテリーナから、ゆっくりして来て、いいと、言われていたので、のんびりと、コンロイ村を堪能しようとしていたのだった。


 セナたちも、早く帰ろうとしない。

 品物が、いい武器や防具が、揃っていたからだ。

 めったに、こういうところに、来られないので、じっくりと、見てみたと言う気持ちが、勝っていたのである。


「誰か、ミントの方へ、いった方が、いいんじゃないの?」

 単独行動をしているミントを、気遣うセナ。

 面倒見がいい性格が、表れていた。


「平気だろう」

 容易く、リュートが、答えていたのだ。

 全然、心配している様子がない。

 むしろ、久しぶりのお出かけを、楽しんでいた。


 それに、トリスを始めてとする面々が、同調していたのだった。

 セナ一人だけが、溜息を、漏らしていたのである。


(まだ、小さい子なのに……。何? この安心しきっている様子は……)


「セナ。大丈夫よ。あれの妹なんだから」

 意気揚々と、先頭を歩いているリュートを双眸で巡らし、カレンが、安心させようとしていた。

 力ない眼差しを、注いでいるセナだ。


(確かに……大丈夫だろうけど、まだ、小さないのに……)


 セナ以外の全員が、大丈夫と、決めつけていたのである。

「……そうね」

「でしょう」

 ニッコリと、微笑むカレンだった。


 コンロイ村に来てからは、少しだけ、和やかな雰囲気に、戻っていたのである。

 よかったと、胸を撫で下ろしている、カーチスとクライン。


 ニコニコと、皆の話に、耳を傾けているアニスに、カレンが視線を巡らす。

「ねぇ。アニス、防具でも新調する? せっかく、ここに、来ているから」

「そうだね」

 逡巡しているアニスだ。


 防具なども、新調したいが、コンクールに向け、いろいろと、お金も、掛かることもあったのだった。それと同時に、名立たる名工も、揃っているコンロイ村で、買い物をしたい気持ちも、膨らんでいたのである。

「予算と、相談かな」

「セナは?」

 突如、振られたセナ。


「……今ので、いいや……」

 アルバイトをしている身としては、ホイホイと、無駄遣いできなかったのだ。

 だが、コンロイ村に、来ていることもあり、心の中では、新しい武器や、防具を揃えたい気持ちが、大きくなっていくのだった。


(もっと、バイトしとけば、よかった……)


 女の子たちの会話を、耳にしているカーチスだ。

 僅かに、安堵の表情を浮かべているカーチスを、カレンの瞳が捉えている。

「カーチスは?」

「……いいものがあったら、買っても、いいかな」


「クラインは、どうする?」

 カーチスの双眸が、クラインを見つめていた。

 何かと、学院を抜け出すことが多いので、それなりのものを、常に、買い揃えていたのである。

 けれど、コンロイ村には、久しぶりに訪れることもあり、気分は、浮き足立っていたのだった。


「俺も、掘り出し物があったら、買ってもいいかな」

 キラキラと、双眸が、輝いている二人だ。

 二人の手元には、すでに、馴染んだ武器などがあり、全然、買う必要性がない。

 十分なほど、揃っていたのである。

 職人が、多い村に来ていることもあり、面白いものを見つけたいと言う心が、芽生えていたのだ。


「リュートとトリスは、どうするんだ?」

「いいものがあったら、買ってもいいな」

 何気なく、リュートが、口に出していた。


 その中で、セナだけが、蚊帳の外に置かれていたのだ。

 誰も彼も、買う気満々な様子に、セナが、ムカついている。


(きっと、欲しいものがあったら、何も、考えないんで、買うんでしょうね)


「俺も、ダガーとかも、見たいな」

 自分の必要なものを、トリスが、頭の中で、リストアップしていた。


 段々と、セナ一人だけが、疎外感を膨れ上がっていく。

 互いに、欲しいものを、気楽に上げていっていたのだった。


(……金ある人は、いいわね……)


 場の雰囲気を、壊さないように、密かに、短い嘆息を零している。

 いつの間にか、セナの隣に、来ていたトリス。

「薬草でも採取して、小金でも稼ぐ? 俺、手伝うよ」


 少しだけ、自分の内情を、把握しているトリスに、ジト目になる。

 そして、トリスの申し出に、僅かに、心が動かされていた。


(稼ぐ……、でも……)


「大丈夫。みんなには、言わないから。二人で、探せば、早いよ。それに、俺、薬草屋の息子だよ。薬草に関しての目利きは、任せてよ」

「……」

 甘い誘惑。

 非常に、心が持っていかれていく。


「明日の朝、早く起きて、薬草探しね」

 ニカッと、口角を上げているトリス。

 黙り込んでいるセナだった。


「いろいろと、見て、買うものを、見繕って置くと、いいよ」

「……ありがとう」

「どう、いたしまして」


 トリスとセナが、話し込んでいる間も、カレンたちは、どんな防具や道具を買うかで、盛り上がっていたのである。

 そうした様子をコンロイ村で、一、二を争うほど、評判の悪い冒険者グループが、見張っていたのだった。



読んでいただき、ありがとうございます。

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