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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第5章 ささやかな頼み事は大忙しに
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第125話

 襲い掛かってくる、諜報員の攻撃。

 ギリギリのところで、ローゼルたちが受け止めていた。

 しっかりと、諜報員の攻撃を受け止めても、周りの状況を、見る冷静さも、欠けていない。

 それぞれの場所で、戦闘が始まっていたのだ。


 唐突な戦闘により、この場が、瞬く間に、乱戦になっている。

 激しい戦闘に、一部の者を除き、余裕なんてない。

 隙を見せたら、一瞬で、やられる勢いだ。


 派手な呪文などを使用せず、的確な魔法や攻撃を、諜報員たちが、仕掛けてきたのだった。

 燃費がよく、見事な連携に、舌を巻くブラークたち。

 予測以上に、手強い相手だと、認識を改めていたのである。


 乱れている状況に、ダンも、余裕がないものの、パウロのことが気になっていた。

 だが、パウロに視線を傾ければ、相手に、パウロを気にかけていることが、バレてしまい、狙われる可能性も、捨てきれなかったのだ。

 だから、あえて、そんな鉄を踏まない。

 グッと堪え、威張っているバドに、預けるしかなかった。


(頼むぞ、バド)


 預けられたバドは、きちんと、パウロのことも、視界に捉えていたのである。

 いいタイミングで、フォローをしていたのだった。

 ブラークとキムの連携も、以前よりも、進化しており、いいキレを見せていた。


(ほぉー。いい腕になっているではないか? 伊達に遊んではいないのか)


 二人は、近くにあるトリスの罠も、しっかりと活用し、しっかり相手に、動揺を与えていたのだった。


(まだ、大丈夫そうだな)


「フラガ、キトレ。もっとだ」

 更なる発破に、眉を潜めつつも、二人は反抗する意志もみせない。

 剣術科のローゼルたちにも、声をかけようとするが、止まってしまう。


(……そう言えば、名前、決めていなかったな)


「……前衛二人。もっと、力を出せ。段々と、押されているぞ」

「「……」」

 叱咤された、ローゼルたち。

 ムッとしつつも、反論できない。


 相手の方が、圧倒的に強く、喋っている暇がなかったのだ。

 それを見兼ねるように、ブラークが、一瞬の隙を狙い、ローゼルたちが、相手にしている諜報員に向かい、援護の魔法を放っていた。


(ブラークたちの方が、少し、余裕があるな。ローゼルたちの方は、持ちそうもないか……。随分と、手馴れているし、容赦しないか……)


 相手の諜報員の優秀さに、舌を巻きつつ、目の前の諜報員三人を、バドが、圧倒的な強さで蹴散らしている。

 表情に出ていないが、バドが相手している諜報員は、微かに、焦りが出始めていたのだった。


(とにかく、片づけるか)


 バドとパウロは、三人の諜報員を、相手にしていたのだ。

「おい。あまり前に、出るな」

 突然の指示に、素直にパウロが従う。


 強い相手に、疲労の色が濃い。

 いきなりの実践訓練に狼狽えながらも、パウロなりに、必死に喰らいついていたのだ。


「少し、目測を誤ったか。ま、いい。俺が、少し、本気になれば、いいだけだからな」

 まだ、全力を出していない、バドの言い方。

 三人の諜報員が、僅かに、眉を動かしている。


 そして、無言の合図で、諜報員たちの動きも、先ほどより、増していたのだ。

 舐められる訳には、いかないと。

 圧倒的な力の元で、ターゲットを捕まえないと言う矜持が、くすぐられていた。


「おい。俺の後ろにいて、来た攻撃だけを捌け」

 言われたパウロが、バドの後方に下がる。

 自分に仕掛けてくる攻撃だけを、受け止めていた。


「……いいのか? 前衛の者を下がらせて? あちらとは違い、飛び道具がないようだが?」

 諜報員の男の視線の先には、トリスの罠などを駆使した、ブラークたちがいた。

 諜報員たちは、バドたちの特性を、見抜いていたのだ。

「構わない。俺には必要ない。特に、お前たち相手ではな」

「「「……」」」


「お喋りは、終わりだ。行くぞ」

 有言実行。

 途轍もない、魔法の速さなどで、バドが、鷹揚に一人ずつ、仕留めていく。

 一人ずつ、倒され、バドの前には、もう一人しか、残っていない。


「……」

「言っておくが、逃がさないからな」

 味方が、学生相手にやられたことで、湧き上がる怒りを、抑えることができない。

「遊んでいる暇が、ないんだな」


 すでに、詠唱を終わらせていた魔法を、解き放っていた。

 双眸を傾けなくても、劣勢であるあちら側に、向かってくる気配を感じ取っているバド。

 だが、動くことはしない。

 目の前のいる諜報員は、すでに、仕留めることができるからだ。


 仕留めたと同時に、新たに、バドの目の前に、一人の男が、立ちはだかっている。

「やるな」

 バドのことを、賞賛していた。


 仕掛けてきた、諜報員たちの隊長の男だ。

 仕留められ、意識のない仲間の諜報員に、目もくれない。

 まっすぐに、余裕で立ち尽くしている、バドを縫い止めている。


「当たり前だ」

「お前が、リュート・クレスターか?」

 隊長の男の眼光は鋭い。

 とても、学生に向けるものではなかった。

 れっきとして敵に、傾けているものだった。


「いや」

「……そうか。随分と、フォーレスト学院には、優秀な人材がいるんだな」

「そうだな」

「名は?」

 口が、結ばれたままだ。


「うちに、来ないか?」

「断る」

 思考する暇もなく、即答したバドだ。

 ますます、バドのことを、気に入っていく。


「早いな。もう、決まっているのか? 行くところが?」

「どこにも、所属はしない。私は、研究者になる」

 バドの発言に、信じられないと言う眼差しを注いでいた。

 その実力があれば、引き手あまただったからだ。


「……研究もさせる。だから……」

「断ったはずだ」

「……そうか。残念だ。でも、また、声をかけさせて貰おう」

 隊長の男と話している間に、ローゼルたちが押されていた。

 そして、ブラークたちも、劣勢になっていたのだった。


「俺一人を抑えれば、勝てると、思っているのか?」

「そう思っているよ」

 ゆったりと、隊長の男が、微笑んでいる。

「そうか。それは、随分と、甘い考えだ」

「そうやって、いられるのも、いつまで、いられるんだろうな」


 視線の矛先は、目の前のいる隊長の男に、巡らせたままだ。

「フラガ、キトレ。たるんでいるぞ、もっと、身体を鍛えたいのか」

 声をあげた途端、ブラークたちの動きが、よくなっていく。

 押していたものが、逆に押されていたのだ。

「……」


「どうだ?」

 不敵な笑みを、バドが漏らしている。

「……だが、向こうの方は、もう、もたないぞ」

「そのようだ。もっと、修行が必要なようだな」

「俺たちに、素直に投降する気は?」

「ない」

「そうか。残念だ」


 鷹揚に構えたまま、動きを見せないバド。

 突進していこうとした瞬間、大きな爆音で、思わず、音がした方へ、隊長の男が顔を巡らせていた。

 徐々に、煙が、霧散していく。


 すると、ローゼルたちと、諜報員たちの間に、大きな窪みが、でき上がっていたのだ。

 突然の出来事に、両者が、フリーズしている。

 圧倒的な威力と、寸前まで、気づけなかった気配に。


「そこまでです」

 森の奥から、ゆったりとした動きで、カテリーナが姿を現したのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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