表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第5章 ささやかな頼み事は大忙しに
128/389

第121話

新年、おめでとうございます。

今年、最初の投稿となります。


 穏やかで、静かな時間が、保健室に流れている。

 グリンシュと、カテリーナしかいない。

 保健室を、利用する生徒も、いなかったのだ。


 このところ、保健室にリュートたちが、頻繁に訪れていたので、利用する生徒が、減少していたのだった。

 そして、騒がしいメンバーが、いないと言うこともあり、学院全体が問題もなく、安寧の休息を味わっていたのである。


 自分で、焼いたケーキを咀嚼し、目の前にいるカテリーナに、視線を巡らす。

 晴れやかな笑顔がない。

 どこか、気鬱そうな姿だ。


 彼女が、何を思い悩んでいるのか、長年の付き合いがあるグリンシュは、理解していたのである。

 食べてくれるリュートや、ミントがいないため、若干少なく、テーブルにお菓子などが並べられていた。


「今は、ここを離れたく、ありませんか?」

 唐突な、グリンシュの問いかけだ。

 ハーブティーを、飲もうとしたカテリーナ。

 飲まず、カップを戻し、佇まいを直した。

「……はい。カイルが、とても心配です」

 ストレートに、返した。


 とても、綺麗なカテリーナの瞳。

 カイルのことを案じ、お出かけ好きなカテリーナが、学院から、離れることがなくなっていたのだった。

 だからといって、学院に残っていても、雑務をしようとはしない。

 グリンシュとの、お茶会をしていたのだ。


「……そうですか。だから、リュートたちに、お使いを頼んだのですね」

「はい。グリフィンや、スカーレットでも、よかったのですが」

「確かに」


 自身が、いけない際は、いつも、友達であるグリフィンたちに、頼んでいたのだった。

 グリフィンや、スカーレットも、いろいろと、仕事があることを気にしない。

 頼み事をするのは、当たり前なのである。


「思い出した時に、たまたま、リュート君たちがいたので」

 ニッコリと、微笑む。

 カテリーナのお願いを、聞く者は、他にも、たくさん存在していた。

 この場で、誰かと声をかければ、すぐに、誰かが、姿を見せるぐらいには。


「リュートたちも、身体を休めることが、できれば、いいのですが」

 グリンシュの双眸が、遠くに馳せている。

「そうですね。でも、リュート君たちなので、絶対に、何かに、巻き込まれるのでないかしら?」


 コテンと、首を傾げている。

 巻き込まれるのが、当たり前と言う認識が、彼女の中で存在していた。


「昔の、あなたたちのように?」

 意味ありげな眼差しを、グリンシュが注いでいる。

 どこまでも、無邪気なカテリーナだ。

「はい」


「大変そうですね」

「楽しいですよ」

「久しぶりに、皆と、遊びたそうですね」

「そうですね。いきたいですけど、無理ですからね」

 哀しげに、溜息を零す。


 カテリーナなりに、忙しいのだった。

 それに、仲間たちも多忙で、遊ぶ暇などない。

 学生時代は、よく遊んでいた。

 とても充実する学生時代を、送っていたのである。


「ですね。デュランやラジュールは、思うような実験が、できないと、何やら、検証しているようですが? リーブに関しては、なかなか、難しいでしょうね」

 同期であるデュランや、ラジュールも、彼らなりに、何かと、慌ただしい日常を、送っていたのである。


 勿論、カイルも、グリフィンやスカーレットと共に、見回りの仕事をしない、デュランたちに成り代わり、仕事をこなしていたのだった。

 苦労している三人ではあるが、その中でも、真面目なカイルは、いろいろなことを背負い込んでいることもあり、誰よりも、揉まれていたのである。


「そうなんです」

「致し方ないですね」

「はい」

 しゅんと、落ち込んでいる。

 そうした姿に、眦を下げているグリンシュだった。

「少し、ストレス発散でも、してみますか?」


 やや首を傾げている。

 その姿は、とても愛らしかった。

 手を口元に置き、思案してみせる。

「……そうですね。少し、動いてみましょうか」


「えぇ。私も、この前、動きましたが、少しだけ、スッキリしましたよ」

「そうですか」

 頬を上げ、笑顔を滲ませている。


 多くの人が、この笑顔に、魅了されていくのだ。

 スッと、カテリーナが、立ち上がった。


「では、少し、遊んできますね」

「えぇ。楽しんで、来てください」


 ゆっくりとした動作で、カテリーナが、森の中へと消えていく。

 その足取りは、いつもより、軽やかだった。

 グリンシュが、優雅な仕草で、紅茶を口にしていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ