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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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閑話 7

第107話目の後の話です。

 学院指定のローブを、しっかり目深にかぶっている三人が、人通りが少ない村の中を歩いていた。

 異様な光景に、村の住人たちも眉を潜んでいる状態だ。


「「「……」」」

 気まずい雰囲気の三人。

 誰も、顔をみせようとしない。

 むしろ、隠していたのだ。


「いつまで、続ける気だ」

 ボソッと、隣を歩くカイルに、グリフィンが呟いた。

「そうだ。こんな格好をさせて」

 不満げなスカーレットだ。

 ローブの隙間から、僅かだが、赤毛が覗いでいた。


 グリフィンやスカーレットは、カイルたちの同期であり、同じ学院の剣術科の教師を務めていたのである。そして、学院に在学中は、一緒に行動を共にしていた、仲間でもあった。

「……たぶん、気が済むまだかな」

 胡乱げな眼差しを向ける二人だ。

「すまん」


 カイルの謝罪に、大きく嘆息を漏らしている。

 どのみち、引っ張り出されていたことが、想像できたからだ。

 学生の頃から、続いていることだった。


「ラジュールのやつ、今回は、どんな魔法を開発したんだ?」

 諦めモードになったスカーレットが、今回の元凶である、ラジュールの話題を持ち出した。

 少しでも、別な思考としていないと、このいでたちに、耐えられなかったのである。


「開発ではなく、改良したみたいだ」

「早く、終わらせたい……」

 遠い目をするグリフィン。

 彼らは、諜報員たちを誘き出すため、生徒の格好にさせられ、囮にさせられていたのだった。そして、生徒の格好をさせられているところを、それぞれ、生徒たちには、見られたくないと、羞恥心に駆られていたのだ。


 徐に、カイルの双眸が揺らいでいる。

「……デュランも、加わった」

 衝撃的な吐露に、グリフィンもスカーレットも目を剥いていた。

 早く話さないと抱きつつも、なかなか、打ち明けられなかったのだった。

「「!」」


「ホント、すまん」

 囮の件を、どこからか聞きつけ、ラジュール同様に、研究熱心なデュランも、今回の件に参加することになった。

「ただじゃ、すまないぞ」

「どうするんだ?」

 二人の追及に、いつも巻き込み、居た堪れないカイル。


 一人でも厄介なのに、二人がかかわると、とんでもないと、頭を抱え込んでいる二人だ。

 奇怪な動きをし始めた三人。

 さらに、周りにいる者たちが、怪訝そうな眼差しを傾けている。

 周りの視線も、気づかないほど、三人が妙な動きをしていた。


「……なるようにしか、ならない。リーブやカテリーナがいない分だけ、いいのかもしれないぞ」

 明るく場を和ませようと、浮かんだことを、カイルが口に出していた。

 あたふたとしていたのだ。

 過去の苦い記憶に、苛まれている二人を、必死に宥めようとしていたのである。


 ついつい、ジト目になる二人だった。

 不意に、カイルの視線が、宙に彷徨う。

「……すまん」


 先程よりも、二人が、盛大に溜息も吐いた。

「校長から、説教を喰らうぞ」

「喰らうだけなら、いい。減俸もあり得る」

 スカーレットの言葉に、グリフィンが破顔している。

 過去に、何度か、あったからだ。


「……祈ろう。できるだけ、穏便に済むように」

 何とも言えないカイル。

 懸命に、落ち込んでいる二人を、励ましていたのである。


 カイルたちは、すでに村の中を三十分近く歩いているが、いっこうに諜報員たちの気配を感じることができない。

「さっさと、片づけよう……」

 スカーレットの提案に、カイルも、同意していた。

「そうだな。早く終わらそう。こんなことは」

「授業の準備も、あるしな」


 重い足取りで、歩いていく三人。

 その三人の背中が、丸まっていたのだった。


 諜報員たちの気配を感じ、ラジュールやデュランが、待ち構えているところまで誘き出し、釣った諜報員たちを、二人の実験体の餌食に、捧げ続けていたのである。

 それを、五回も繰り返したところで、スカーレットが怒り出し、デュランに向かっていこうとするのを、グリフィンとカイルが止めに入り、また、大きな騒動となって、五人が校長から、説教を受ける羽目になってしまうのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。


次回、新しい章に入ります。

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