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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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閑話 6

第89話目の後の話です。

 剣術科の生徒たちを、警護している教師から呼び出され、カイルは気づかれないように、彼らの元へ駆けつけていた。

 森の奥で、少し広まっている場所で、落ち合っていたのである。

 魔法科の警備をしている教師の姿も、あったのだ。


 カイルを含め、四人の教師が、顔を突き合わせている。

「何か、あったのか?」

 急な呼び出しに、カイルが眉を潜めていた。

 そして、ここにいないはずの、魔法科を警備している教師の姿でも、何かあったことを察していたのだった。


 他の三人の表情が、どこか渋い。

 ますます、何かあったと、思い至るのだ。


「諜報員たちに、何か、動きがあったのか?」

「……違う」

 警護に、当たっている剣術科の教師が、否定した。

「じゃ、何だ?」


 魔法科の警備を、担当している教師が、カイルと視線を合わせようとしない。

 三人の顔色を、窺っていく。

 けれど、真意が掴めない。

 否定した教師に、カイルが顔を巡らせた。

 注がれる双眸。


 居た堪れない教師が、ようやく重い口を開く。

「……テロスたちが、バドに捕まった」

 吐露しても、教師の顔が、苦虫を潰したような形相だ。

「はぁ」

 目を見開き、あんぐりと、口を開けていた。


 他の二人の教師も、渋面している。

 カイル以外、把握していたのだ。


「……バドって、あのバドか?」

「あのバドだ」

「魔法科の」

「そうだ」

「……」


 カイル自身、魔法科の教師から、散々、教師や生徒を、実験体にするバドの話を、聞いていたのである。そして、実験体にされた、多くの新人教師が辞めていった状況を、聞かされていたのだった。

 無言のまま、テロスたちを救出しようと動き出すカイル。


 真っ先に、三人の教師たちが、止めに入った。

「やめろ」

「ダメだ」

「諦めろ」

 必死に、止めようとする三人の教師たち。

 邪魔だと、カイルが半眼している。


「なぜ、止める?」

 凄まじいカイルの眼光。

 三人の教師たちは、尻込みするが、彼らにも、譲れないものが、微かに残っていたのだ。

 ここで、引く訳にいかない。


「諦めてくれ」

「俺の生徒た」

「そこを、どうしても」

「無理だ」

「カイル、頼む」

「お前たち、何を言っているのか、わかっているのか」

「「「……」」」


「どけ!」

 助けに、行こうとするカイルだ。

 三人の教師たちが、立ちはだかる。

 怒り心頭なカイルに慄いているが、いっこうに、どこうとしない。


「……これ以上、新人の教師たちを、辞めさせる訳にはいかない」

「だから、生徒が、犠牲になってもいいのか?」

「「「……」」」

「テロスたちは、俺の教え子だ。俺が守る」

「……ずっと、守ってやることは、できないんだぞ」


 何だと言う、カイルの双眸。

 止めに入る教師に、注がれたままだ。


「いいか? カイル。これは、いい勉強になる。バドだって、生徒相手に、深入りはしないはずだ。だから、ここは、頼む。引き下がってくれ」

「実験体に、された者は……」


「確かに、実験体に、された教師たちの多くが、辞めていった。けれど、残っている者もいるし、生徒は、誰一人、実験体にされても、やめた者がいない」

「それは、リュートたちだから、だろう」

「……そうだが……」


 気まずくなり、僅かに視線をそらしてしまう。

 けれど、ここで折れる訳にはいけないと、もう一度、カイルに双眸を傾けた。

「ある意味、実験体にされた者の多くは、身体が、頑丈になっているぞ? いいことではないのか?」

「だからと言って、危険だ」


「カイル。お前が、バドの実験体になるのか?」

「……」

 脳裏に、仲間である二人から、未だに、実験体にされる光景を掠めていた。


「お前も、あの二人から、未だに、実験体になって、生きているじゃないか。だから、ここは一つ、大きな心で、見守ってあげるのも、教師の役目じゃないのか?」

「……お前たちが、犠牲になりたくないからだろう」

「「「そうだ!」」」


 三人の教師たちの血走った眼光。

 今度は、カイルが圧倒される番だった。


「俺たちは、あの実験狂に、新人教師を、ダメにされたくないし、まして、実験体に、されたくもない。もう、あの二人だけで、十分なのに……。バドまで、あの二人のように……。元々は、カイルが、簡単に、あの二人の実験体にされなければ、こんなことは、続かなかったかもしれないんだぞ」

「……」

 胸倉を掴まれ、何も言えないカイル。


 あの二人から、数年おきぐらいに、学院の伝統として、実験狂が出没していたのだった。

 食い止めることが、できなかったと言う負い目もあり、思わず、カイルが、三人の教師から視線をそらしてしまう。


「どう、責任を取る」

「……わかった」

「……バドだって、身体を壊すほど、しないと……思う、たぶん」

「……言い切れよ」

「……」


読んでいただき、ありがとうございます。

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