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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第106話

 急いで、カレンが、爆音がした方へ、向かっていると、その場に立ち尽くし、見上げているトリスの姿を、捉えることができた。

 無事を確認でき、ホッと、息を吐くカレン。

 徐々に、スピードを落としていった。

 上がっていく爆風や、煙などを、窺っている姿に、近づいていく。


「トリスは、大丈夫みたいね」

「カレンか」

 隣に立ち、安堵の表情のカレンに、視線を注いでいた。


 見る見るうちに、カレンの形相が変化していく。

「いい加減に、しなさいよね。あちらこちらに、罠を仕掛けて、危ないじゃないの」

「大丈夫だよ。村の中では、ちゃんと、威力は落としている。その代わり、音はデカく、鳴るように、仕掛けているけどね」

 全然、悪びれる様子がない姿に、頭を抱えていた。


 何度も、村の中に仕掛けるのを、やめるように、注意を促していたのである。

 けれど、受け入れられたことがない。


 トリスなりに、村の中に仕掛ける際は、細心の注意を払いながら、罠を仕込んでいたのだ。

 先ほどの爆音は、生徒たちを探っている諜報員が、引っ掛かったものである。

 その罠の具合を、冷静にトリスが、分析していたのだった。


「あのね……」

 ただ、笑っているだけのトリス。

 ムッとしているカレンだった。

「「「大丈夫か」」」

 カーチスたちが、駆けつけていたのである。


 三人の背後から、クラインも姿を現した。

 クラインが、小さく笑っていたのだ。

「大丈夫そうだね」

 四人で、戻っている途中で爆音がし、その方向が、トリスがいた方だと、クラインから聞き、カーチスやキムが心配し、トリスの様子を確認しに来たのだった。


「大丈夫だ」

 ニコッと、笑顔を滲ませている。

「諜報員か、先生が、引っ掛かったようだね」

 何気なく、クラインが口にした。


「「「だな」」」

「ホント。トリスが、無事でよかったわね」

 とびっきりの笑顔をカレンが、カーチスたちに振舞っている。

 ここに来て、ようやく、カレンの存在に気づく三人。


 瞬時に、凍りつく面々。

 笑顔を崩さないカレンだ。


 異様に、カーチスの様子だけ、ソワソワして、おかしい。

 気遣うような眼差しを、ブラークやキムが注いでいる。

 クラインが、トリスの姿を捉えたと同時に、カレンの姿も、確認していたのだった。


 言葉にできない三人に代わり、クラインが口を開く。

「カレンも、来ていたの?」

「えぇ」

 短い返事をし、眉を寄せているクラインから、落ち着きのないカーチスたちに、視線を巡らす。


 笑っていない、カレンの目。

 三人に、戦慄が走っていた。

 何も、命じられてもいないのに、瞬く間に、三人がカレンの前で、正座をしてしまう。

 そんな三人の行動に、クスッと、笑っているトリスとクライン。


 いつもの、何気ない、光景の一つでもあったのだ。

 冷めた双眸で、三人を見下ろしている。

 うな垂れ、三人共に、顔を上げない。

 カレンの形相を捉えることが、恐怖で、できなかったのだ。


「ねぇ。合コン、楽しかった?」

 いきなり、真をつく言葉に、三人が息を飲んだ。

 フリーズしたまま、どうして合コンのことを把握しているのかと、三人が目を見張っている。


「随分と、楽しく、会話が進んだようね?」

 笑顔を振りまく。

 だが、目の奥が怖い。

「「「……」」」


 合コンの内容まで、知っていることに、瞠目していたのだ。

 三人同時に、カレンの背後にいるトリスに、眼光を送っていた。

 喋ったのかと。


 居た堪れない状況に落ちつつも、辛うじて、咎める余裕が、出てきていたのだった。

 黙ったまま、トリスが首を横に振っている。

「トリスじゃないわよ」


(((じゃ、誰だ?)))


 犯人がリュートだと、三人は知る由もなかった。

「誰でも、いいでしょ? 必要なことなの?」

 とても冷え冷えとした空気を、カレンが醸し出している。

 行動を見透かされ、三人が、乾いた笑いしか出てこない。


「まず、じっくりと、お話を聞きたいわね」

 とても低い声音で、三人の背筋に、悪寒が広がっていく。

 笑顔のままのカレン。

 ひと際、慄いているカーチスに、顔を近づけた。

「とりあえず、カーチス」


 指名され、絶句しているカーチス。

 そして、仲間たちに、助けを求めるが、誰一人としていない。


 ブルブルと身体が震え、拒絶反応を示していた。

 形相は、必死だった。

 見捨てるなと。

 それでも、ブラークやキムは、視線を合わせようとしなかったのだ。


「何しているの? カーチス」

 優しい声音で、問いかけた。

 ほぼ、鼻が、くっつきそうな距離だ。


 ガダガダと震え、眼光が、揺れているカーチス。

 瞳の奥が、キラリと光っているカレン。


 ブラークやキムが、憐れむ顔を覗かせている。

 トリスも、クラインも、同情的な表情を漂わせていた。

 けれど、誰一人として、かかわろうとする者がいない。

 有無を言わせない、笑顔のまま、じっとカーチスを見つめている。


「……何でも、ありません」

 ようやく、観念したのだった。

 がっくりと、カーチスがうな垂れている。

「そう。行こうか」


 返事を聞かず、カレンがカーチスの首根っこを掴んだ。

 引きずるように、森の方へ連れて行った。

 声にできないカーチス。


 必死の形相で、助けを求めるが、ブラークやキムは、手を振っていたのだった。そして、トリスとクラインが、声に出さないように、頑張ってと、口を動かしていたのである。

 友達を見捨てた四人。

 誰も、怒ったカレンを、止められる者など、いなかったのだ。


「卑怯者!」

 カーチスが叫ぶが、誰一人として、動かなかった。

「うるさい。黙っていなさい」

 カレンに窘められ、黙り込む。

 段々と、二つの影が、小さくなっていき、見えなくなっていった。




「大丈夫かな、カーチス」

 少しだけ、心配げな双眸を、二人が消えていった森へ、巡らせているキムだ。

「大丈夫じゃないだろう。カレンも、相当、怒っていたし」

 僅かに、ブラークが顔を強張らせていた。


「それは、二人にも、言えることだな」

 呆れながら、トリスが突き放した。

 胡乱げな、二つの視線。

 まだ、置かれている状況を、把握していなかったのだ。


「カレンは、とりあえずって、言っていただろう」

 クラインが、答えを提示した。

「「……」」


 渋面している二人に、容赦がない二人。

「カーチスの後は、ブラークとキムだろうな」

「そうだね。ま、カーチスよりは、幾分、ラクかもしれないけど」

「だな」

「「……」」


 キムより、回復が早いブラークが、納得いかない形相を注いでいる。

 お前らも、だろうと。

 けれど、二人は、平然としていた。


「俺たちは、付き合わされた側って、カレンだって、見通しているから」

 飄々としているトリスだ。

「ブラーク。カレンに、知られた以上は、覚悟しないと」

「でもよ……」

 ブスッとしたままだった。

 クラインが、首を竦めていた。


「カーチスを巻き込むって言うことは、こういうことでしょ? ある程度は、覚悟していたはずでしょ」

 彼女がいるカーチスを巻き込み、面白くなれば、いいと、ブラークは思っていたのである。

 素直に、打ち明けない、二人に対し、意趣返しでもあったのだ。

「……そうだけど」

「しっかりと、怒られて来い」


 大きく、ブラークが嘆息を吐いた。

「わかった」

 諦めたブラークが、うな垂れているキムを促し、帰っていく。

 二人の足取りは重い。

 その後を、クラインと、罠の補強を諦めたトリスが、ついていったのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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