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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第104話

 戦闘の観戦を終え、仁王立ちしているラジュールの前で、三人が立たされている。

 その顔は、やや、うな垂れていた。

 そして、致命傷はないものの、身体中、傷だらけで、ボロボロだ。


 リーダーのザック以外を、相手にしていた三人。

 時間をそれなりに消費したが、部下たち全員を、倒していたのである。

 意識が失っている者や、意識がある者の、しっかりと拘束され、身動きが取れない状態になっていたのだった。


 納得できていないラジュールが、冷ややかな視線を注いでいた。

「何だ、あの動きは」

「「「……」」」

 口答えできない三人。

 ひたすら、黙り込んでいた。


 ただ、ただ、ラジュールの剣幕に、気圧されている。

 まず、顔を伏せているトリスに、眼光を巡らした。


「仕掛けてある罠に、頼り過ぎだ。相手だって、バカじゃない、お前の陽動を、見込んだ動きで、罠が、どこら辺に、仕掛けられているのか、見破られる。仕掛けた罠に頼らず、自分の腕で、相手を仕留めるようにしろ。何度、言わせればいい」

 仕掛けてある罠に、頼り過ぎの戦い方を、以前から、指摘していたが、改善される様子がなかった。


 最初は、仕掛けてある罠に動揺し、あたふたするやからがいるだろうが、罠が仕掛けられていると、冷静さを取り戻せば、トリスの動きを分析され、逆に、仕留められる可能性だってあると、ラジュールは危機感を憶えていたのだった。

 そして、案の定、何度か、トリスがやられそうになっていた。

 リュートや、クラインの瞬時の判断のおかげに、致命的なケガを、することがなかったのだ。


「……はい」

 悔しげに、唇を噛み締めているトリスだった。

 次に、身体を強張らせているリュートを捉える。


「剣を、使うのはいい。魔法も、使えるんだ。それを活かした戦いをしろ」

「俺は……」

 素直になれず、半眼しようとするが、怯んでしまう。

 それ以上の眼光を、傾けていたのだ。


「剣に拘り過ぎて、そんなに、ボロボロになったのは、誰だ?」

「……」

「魔法も、組み込んでいたら、もっと、スマートに戦えたし、もっと、早く片付いていたはずだ。もし仮に、彼らの後に、もう一団、構えていたら、どうなっていたと思う?」


 凍えるような双眸を、フリーズしているリュートに注いでいる。

 さらに、緊張していくリュートだった。


「お前の拘りのせいで、仲間を失っている可能性だって、あるんだ。その点を、よく考えろ。窮地に立たされた、お前は、以前、何をした?」

「……」

「また、繰り返すのか?」

「……」


 何も、言い返せない。

 トリスと同じように、キツく、唇を結んでいる。


 最後に、クラインに視線を傾けた。

 真摯に、説教と言う名の評価を、待っていたのである。

 潔い態度に、少しだけ、ラジュールの溜飲が下がっていった。


「……目立ちたくない、お前の考えは、尊重したいが、実力も、あるんだ。もっと、前に出て、攻撃が、できたはずだ。前に出られる、お前が出ないで、どうする? 仲間を、みすみす見殺しにするのか? お前の悪い癖だ。もっと、前に出る、スタイルを考えろ」

「……すいませんでした」




 真面目に、生徒を叱責しているラジュールの言葉を、意識している諜報員たちが、目を丸くしながら耳にしていた。


(((((どれだけのクオリティーを、求めているんだ!)))))


 彼らの目からしても、リュートたちの実力は、すでに実戦並みに、優れていたのである。

 即戦力のなると。

 けれど、納得していない姿に、ただ、ただ、目を見張っていたのだ。


(((((フォーレスト学院の生徒って、レベルが高い。リュート・クレスターって、どれだけ凄いんだ)))))


 まさか、目の前で叱責されている生徒の中に、情報を得ようとしていたリュートが混じっているとは、気づいていない。

 そのため、遊んでいた生徒で、ここまで強いならば、自分たちが求めていたリュート・クレスターは、どれだけ凄いのかと、勝手に過大評価していたのである。

 こうした彼らの思いが、上層部に伝えられ、フォーレスト学院の評価が、上がっていくのだった。




「とりあえず、お前たちは、帰れ」

 三人の目は、いいのか?と、訴えていた。

「こんな大きな騒ぎに、気がつかないのは、ただのバカだ」


 冷たく切り捨てたラジュール。

 他の教師たちを、素直に哀れむリュートたちだった。

「「「……」」」


 よく見ると、続々と、警備の者たちや、教師たちが駆けつけ、拘束してある諜報員たちを、慣れた手つきで、片づけていたのである。

 ラジュールとザックの派手な戦闘で、何かあっとことを推測し、ある程度の人数を集めてから、この場に駆けつけたのだ。

 威力の激しい戦闘に、誰が相手をしているのか、瞬時に見定め、行動していた。


「カーチスたちも含め、後で、課題を与える」

「「「……」」」

「……返事は」

 有無を言わせない形相。


リュートたちが、素直に慄いていた。

「「「はい!」」」

 元気よく、返事を返したのだった。

 この手のラジュールの形相に、立ち向かう生徒なんて、一人もいない。


「では、解散」

 三人を振り返ることなく、その場から、離れていく。

 その背中を、黙って、見送っている三人だ。

 手際よく、拘束されている者を運んでいる、教師たちのところへ、ラジュールが向かっていたのである。

 今後の打ち合わせに。




「……帰るか」

 何気ない口調で、トリスが二人に声をかけた。


 僅かに、トリスの表情が硬い。

 けれど、二人は、指摘しなかった。

 トリス自身、以前から、戦いの仕方を模索していたが、自信がある罠に拘り過ぎて、意固地に陥って、変えることをしなかったのである。


「そうだね」

 苦笑しているクライン。

 黙ったまま、ムスッとしているリュートだった。


「どうする?」

「カーチスたちが、心配だから、追いかけるよ。他にも、いる可能性があるからね」

「そうだな」

 千鳥足で、帰っていったカーチスたち。

 その光景を、トリスが思い返している。


「で、リュートは、どうする?」

「帰る」

 ぶっきらぼうに、口にした。


「俺は、念のため、罠の補強しにいく」

「怒られたばかりなのに?」

 しょうがないなと、クラインが首を竦めていた。


「……罠は、悪くない。俺の戦うスタイルを、指摘されただけだ」

「そうだけど……」

 やや不貞腐れ気味なトリスを、クラインが窺う。

「とにかく、補強しにいってくる」

 スタスタと、トリスが二人の前から、離れていった。

 背中が、話しかけるなと、言っていたのである。


「随分と、トリス、落ち込んでいたね」

 隣にいるリュートに、双眸を巡らす。

 トリスに、眼光を向けたままだ。

「そうだな。珍しく、ラジュールも、トリスに怒っていたからな」


「そうだね。ついてあげなくても、いいの?」

 消えていった方を、気遣うような眼差しで、リュートが窺っている。

 けれど、動こうとはしない。

 その場に、立ち尽くしていただけだ。


「大丈夫だ」

「そう。じゃ、カーチスたちの様子を見ながら、帰るよ」

「そうか」

 二人も、それぞれに帰っていった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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