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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第100話

祝100話目です。

これからも、頑張ります。


 下で、窺っていた三人の男を、周囲に気づかれず、鮮やかな手さばきで、トリスとクラインが伸していった。

 そして、見つからないように、隠蔽も施した。

 むやみに、周囲が騒がれると、面倒だからだ。


「お疲れ」

「後は、中だけだな」

 上機嫌に、頬を上げているトリスである。

「帰すだけだから」

 穏やかな表情を、漂わせているクラインだった。

「だな」

 普通の足取りで、酒場に戻っていく二人だ。




「ほら、起きろ」

「いつまで寝ているの。帰る時間だよ」

 二人掛かりで、カーチス、ブラーク、キムを起こしている。

 けれど、なかなか起き上がらない。


 段々と、容赦しないで、起こしていくトリスとは違い、クラインは変わらず、揺すって起こしていく。

 リュートは、起きているものの、呆然と座ったままだった。

 飽きてしまっていたリュートは、先に眠ってしまっていたが、カーチスたち三人は、クラインが仕込んだ眠り薬により、眠らされていたのである。


 クラインがしたことに、三人は気づいていない。

 トリスとクラインに強く促され、重い頭を振りながら、ようやく起き上がるのだった。

 ズキンと、痛みが走る。

 頭を押さえながら、周囲を窺うカーチス。


 随分と、店内にいた客たちが、少なくなかった。

 先ほど、喋っていた女たちの姿もない。


「あれ? 他の子たちは?」

「帰ったよ」

 眠らした三人を起こす前に、男たちの仲間の女たち三人を拘束し、空いている部屋に押し込んでいたのである。

 勿論、店主に、自分たちが帰った後に、通報してほしいと頼んでいたのだ。

 関係のない、残りの女たちも、優しく起こし、帰していった。

 最後に、カーチスたちを起こしたのだった。


「マジか」

「マジだよ」

「何人か、いい子がいたのに……」

 痛む頭を気にしながら、ブラークが悔しがっていた。

「そうだね」

 顔を歪めながら、キムが頷いている。


 三人とも、上手くいなかった現状に、落胆の色が浮かんでいた。

 そんな姿に、トリスも、クラインも、呆れ顔を覗かせている。


((俺たちの、苦労も知らないで))


「別に、いいじゃないか。それぐらい」

 五人が話し込んでいる間に、リュートが覚醒していた。

 痛くも、痒くもないといった、涼しいリュートの顔。

 ブラークとキムが、面白くないと言う顔を滲ませている。

 カーチスだけが、あっさりと、そうだなと認めていたのだ。


 裏切り者のカーチスを、睨んでいる二人。

 けれど、そうした視線に気づかない。


「ところで、支払いは?」

 トリスか、クラインが、先に、支払いをしたのかと巡らせ、カーチスが尋ねたのだった。

「彼女たちが、楽しい話が聞けたから、自分たちが払うって、払ってくれたよ」

「そうか」

 それ以上、何も思わないブラーク。

 実際は、自分たちを捕まえようとした男たちから、巻き上げた金で、トリスが支払っておいたのだった。残った金は、別な部屋で、拘束している女たちに、返しておいたのである。


「久しぶりに、合コンができた感想は、どう?」

 酒の飲み過ぎで、顔を顰めているブラークたち。

 そんな彼らに、にこやかな顔を滲ませながら、感想を聞くクラインだ。

「「……楽しかった」」


 少しだけ、顔を和らげるブラークとキムである。

 そして、クラインの顔も、少しだけ緩んでいた。


「俺も、みんなといられて、よかった」

 口角を上げているカーチスだった。

「それは、よかったな」

 満足している三人に、トリスが小さく笑っている。


 最近、付き合いも悪かったと言う理由もあったが、カーチスたちの喜ぶ顔も、見たいと言うのも理由にあったのだ。

 満足そうな三人の姿に、嬉しさが込み上がっていく。


「また、しようよ」

 のほほんとしているキムが、再度することを提案した。

 ブラークたちが、安易に賛同している。

「そうだな」

「いいかもな」

 どこまでも、のん気な三人だ。

 ひと仕事しているトリスとクラインが、疲れた顔を漂わせている。


((いつになったら、バカげた真似をやめるんだ?))


「パス」

「俺も」

「何で?」

 冷めている二人に、口を尖らせるキム。

「どうしても」

 言葉と、視線で、拒絶を滲ませているトリスだ。


(後始末が、大変なんだ。当分、いい)


 ニコッと、いい顔をしているクライン。

 だが、その目は、笑っていない。

「次の合コンよりも、精霊呪文を会得しようか」

 容赦ないクラインの言葉。


 三人が、不満げに黙り込む。

 けれど、クラインも、意志が揺るがない。

「もう、手を貸さないぞ。俺も、トリスも」


 強気なクラインの眼光。

 咄嗟に、三人が傍観していたリュートに、視線を巡らす。

 安易に、近場にいた者に、助けを求めたのであった。


「リュートにも、させない」

 容赦しないトリスの言葉が、降りかかった。

「ズルいぞ、トリス」

 二人がダメなら、リュートに頼もうとした、浅はかな三人を、押さえ込んだ。


 逃げ場のない三人組だ。

 その顔は、渋面している。

 頼む人間を、頭の中で探すが、見つからない。

 まさか、リュートがカレンたちを手ほどきし、ほぼ仕上がっているとは見当もつかなかったのだ。


「リュート。三人に精霊呪文を教えてって、懇願されても、教えちゃダメだからね」

 いい顔をしているクラインに、リュートが釘を刺された。

 二人からの視線。

 わかったと、素直に応じるリュートだった。


「「「リュート!」」」

「悪いな、三人とも」

「「「……」」」


 トリスたちと、睨み合っていたカーチスたちが、先に根負けしていった。

 そして、盛大な溜息を漏らしたのである。


「「「……わかった。精霊呪文を会得します」」」

「よくできました」

 にこやかな笑顔を、クラインが覗かせた。

 しっかりと、確約を取ったからだ。


「頑張れ」

 気軽に、エールをリュートが送っている。

 それをジト目で、三人が窺っていた。

 ほのぼのとする光景に、トリスが笑みを漏らしていたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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