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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第98話

 合コン相手の女たちとの、他愛もない会話も、だいぶ進行していった。

 親しくなろうと、下心見え見えのブラークたち。

 その口が、止まらない。

 悪い間ができないように、必死に喋り続けている。

 沈黙と言う名の間だ。


 不意に、一人の女が、学院のことを、聞き始めたのである。

 今まで、学院のことは、会話に上がっていなかった。

 女たちも、露骨に出ないように、注意を払っていたのだった。

 自分たちのがっつりが、見られないようにだ。

 けれど、言葉の端々に出て、気づいている者もいた。


 僅かに、女たちの目が変わっている。

 女たちも、優秀な伴侶を、見つけようと必死だったのだ。


 観光で、訪れる女たちの多くが、自分たちの伴侶探しと、自分たち身内の女の子たちの伴侶探しだったのである。

 便乗するように、他の女たちも、根掘り葉掘りと聞き始めてきた。

 冷めた双眸になりかかるのを、トリスとクラインが堪えている。


((出始めてきたな……))


「学院って、楽しいの?」

「楽しいよ」

「厳しいんでしょ?」

「まぁね」

「どんな授業とか、しているの?」

「普通だと、思うけど」

「優秀な人とかも、いるんでしょう? 勿論、あなたたちのように」


 さらに、鋭くなっていく女たちの眼光。

 見た目は、穏やかさを、装っていたのである。

 その奥では、獲物を狙うハンターのごとく、狙っていたのだった。


「いるよ」

「例えば、どんな子?」

「どんなって、メチャクチャ強いやつとか」

「なんて言う子? それに、どんなふうに強いの?」

「えーと、なんて言ったっけ……」

「ま、とにかく、できるやつは、多くいるよ」

「……」


 諦められない女たち。

 確実に、何人かの名前を、ゲットしたかったのだった。

 女たちも、事前にある程度、調査していたのである。

 その内容が、確かか知りたかったのだ。


「私、噂で聞いたんだけど、法聖リーブ様の息子も、いるんでしょ?」

 最も、興味深い質問を投げかけた。

 喉から、手が出るほど、ほしかった情報の一つだ。

 様々なところで、リュートの情報は、高く売れたのである。

「確かにいるね」

 あっさりと認めた。


 周知の事実だった。

 だから、カーチスたちも、誤魔化さない。

 そんなことで、嘘ついても、しょうがないからだ。


「やっぱり、凄いの?」

「凄いらしいよ」

「どんなふうに?」

「とにかく強いよ」

「半端ないよ」


 競うように、女たちが口にしていた。

 そんな彼女たちの質問攻撃に、にこやかに答えているカーチスたちだった。

 女たちと、カーチスたちの押問答を、リュートやトリス、クラインが静観していたのだ。


「将来有望?」

「勿論」

「王宮でも、どこでも、就職できそう?」

「実力的には」

「魔法科でも、剣術科でも、他にも、強い人がいるんでしょう?」

「いるよ」

「その人たちも、有望よね。例えば、どんな性格しているのかな? 後、何て言う名前なの? 聞きたいな」


 自分が知りたい情報を、手にしたい女たち。

 貪欲さが、滲み出始めていた。

 そんなことに、気づかないカーチスたち。


((ああ。露骨だな))


 横の繋がりを、構築しなかったため、質問が噛み合っていない。

 徐々に、彼女たちの中で、ばらつきが見え始めていたのである。

 それぞれが、聞きたいことを、質問していったのだ。

 そのせいもあり、彼女たちが、チラ、チラッと、互いに半眼し合う。


 彼女たちの中は、険悪な雰囲気になりつつあった。

 微かなズレが、大きくなり始めている。


「そういえば、これも、噂で聞いたんだけど、剣術科に移ったとか?」

「そういえば、そんな話も、あったような、なかったかのような」

「えっ。その話は、聞いたわよ」

「いろいろな噂が、飛び交っているからね」


 自分の話を持ち出され、不満顔のリュート。

 まさか、本人が、目の前にいるとは思わない。

 容姿に関しても、様々な噂が流れていたのである。

 そのため、目の前にいる人物が、リュートと気づかなかったのだ。


 その間も、興味の対象であるリュートの話を、深く追求していったのだった。

 カーチスたちは、リュートの機嫌も気にしつつ、話をやめようとはしない。

 少しでも、目の前にいる女たちを、自分たちに、引き付けたかったのだ。

 自分の話をするなと言えず、ただ、だんまりを決め込んでいる。

 いらつきを感じつつも、放置するカーチスたちだ。


 様々な質問が飛び交っている。

 勿論、その多くが、リュートの性格や、どういった学院生活を送っているのかだ。

 言葉を濁しつつ、答えていくカーチスたちだった。

 この場にいる、不機嫌全開の、リュートの警戒も窺いつつだ。

 余計なことを言って、リュート自身が、バラす恐れがあるからである。


 盛り上がっている会話を、壊したくないため、カーチスたちの口も、酒が入っているせいもあり、いつもよりも、若干、滑らかだ。

 それに、知られている情報を、誤魔化す必要がない。


 ブスッとしている姿に、トリスとクラインが首を竦めている。

 この手の話題になってから、二人の口が重い。

 口数少なめで、静観し始めていたのである。


 和気藹々と、話に花を咲かせているカーチスたちに、不機嫌な顔を隠すこともなかった。

 リュートの機嫌も気になるが、女たちとのお喋りをやめようとはしない。

 黙り込んだままのリュート。


(面白くない。帰るか……)


 出掛かった言葉を、飲み込む。

 カーチスたが、楽しい仲間と入られ、面白いと、話しているのを、耳にしたからだ。


(……もう少し、いてやるか)


 噤んでいるリュートの口が、僅かに、上がっている。

 会話を、途切れさせたくないカーチスたちのテンションが、上がっていった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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