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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第97話

 合コンが行われている酒場では、カーチスたちのテーブルにいた、女性一人が中座し、人ごみから離れ、隠れるように裏口から外に出ていった。

 誰にも、気づかれないようだ。


 入口とは違い、裏口に人影がない。

 静かなものだった。

 そして、突然、人影が、女性の前に姿を現す。


 どこにでも、いそうな顔をした男性だ。

 繋ぎを取るため、事前に決めておいたのだった。

「どうだ?」

 男が、進展具合を確かめてきた。

 店内にいるリュートたちを警戒し、外で待機していたのである。

 慎重に、事を運ぼうとしていたのだ。


「順調に、進んでいる」

 ニンマリと、女が微笑んでいた。

 だが、男に、油断したところがみえない。

「気を引こうと、必死になっている」


 喋りの勢いが、激しいブラークたちだ。

 彼らの滑稽な姿を、思い返していた。

 先ほどまで、熱心に話しかけていたのだった。

 そのため、なかなか中座できなかった。

 頃合いを見て、ようやく、ここに姿を見せることができたのである。何度、離れようとしても、弾丸のように話しかけてきて、話を折ることができずにいた。


「そんなに、必死なのか?」

 嘲笑の声音だ。

 ようやく、男の顔が崩れたのだった。

「ああ。酷いものだ」

 うんざりとした顔を、女が滲ませていた。

「……若いな」


 男は、すでに三十前半だった。

 今回の仕事で、リーダーと務めている訳ではなかったが、それに近い立ち位置にいたのだ。


「後、どれぐらいで、連れ出せそうだ?」

 仕事の内容としては、六人全員、捕獲するのではなく、一人か、二人を誘き出し、そして、捕まえ、情報を聞き出そうとしていたのである。

 手堅く、事を進めようと画策していた。

 女たちの役目は、一人か二人、もしくは数名を、外に誘き出すことだった。

 誘き出した者を捕まえる算段が、しっかりとでき上がっていた。


「もう少し、掛かるだろうな。しつこいからな」

「そうか」

 どこか、思案する男。

 そんな彼の様子が気になる。

「何か、問題でもあるのか?」


「近くに、別な諜報員と、警備の者たちがいる」

 男の話に、眉を潜めている。

 手にする情報は、自分たちだけのものに、したかったのだ。

 他の諜報員に知られれば、争うか、手を組む方法しかない。

 せっかくの旨みは、独り占めしたかったのである。


 胡乱げな顔を、女が窺っていた。

 そして、女が男を視界に捉える。

「捕まえるのか?」

「いや。怪しまれ、増員されても、困るからな」

 最もな意見に、頷くしかない。


「放置は、難しいんじゃないのか?」

「……」

「生徒たちが、ここにいると言うのは、時間の問題だろう?」

 その通りなので、男は何も言えない。


 だが、自分たちが動くことにより、知られる可能性もあったのだ。

 その際、情報の一部を、開放する可能性もあったのだった。


「警戒しつつ、放置するしかない」

「私たちは、どうする?」

「引き伸ばせ」

 意外な行動に、眉間のしわが濃くなる。

 急かされるのかと、巡らせていたのだ。


「引き伸ばして、大丈夫なのか?」

 思わず、不安が顔に出てしまう。

「その間に、やつらを、別なところへ、誘導しておく」

 逡巡し、女の口の端が上がっている。

 目の前の男を、双眸に捉えていた。


「……わかった」

 その後、細かい段取りを決め、女がリュートたちの席に戻っていった。

 男も、仲間と段取りを決めるべく、仲間たちの元へ、帰っていったのである。


 その間も、近くにいる、自分たちとは違う諜報員や、警備している者たちを、窺うことは忘れない。

 念入りに、自分たちとは違う、諜報員たちの背格好や、特徴、何人体制でいるのかを、咄嗟に、頭に叩き込んでいったのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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