演劇・とある大食いコンテストを達成したご褒美
弓長晶:
「私達はゲーム会社であって、演劇は本職じゃないですよ」
依頼者:
「そう言わず。報酬は弾みます。楽しい作品を一つ、ちゃちゃっと提供してください」
弓長晶:
「楽じゃないです。小学生のためになる作品など……最近は純粋さを失っているような」
酉麗子:
「あら?私は乗り気よ。子供のように私達だって、作り出すことも大切な基本でしょ?ゲームってのは本来、子供のためにあるじゃない」
弓長晶:
「……なんでもかんでも引き受けて……酉さんらしいところですが」
酉麗子:
「そーいうわけで明日!弓長くんが台本作って、レッツショーよ!」
弓長晶:
「出演者揃えるところから詰みます。それと私が台本ですか」
◇ ◇
工藤友(ナレーション):
「乗り気のなかった弓長晶であったが、20分程度で作品を作り上げるなど、実は本人はとても乗り気であった」
弓長晶(台本&監督):
「そこまでナレーションしないでください。恥ずかしい」
林崎苺(女性シェフ):
「練習時間とかそんな話じゃなく、今から小学校で演劇ですか!?」
三矢正明(嫌~な店主):
「ほぼボランティアじゃないか!」
酉麗子(大食いチャレンジャーその1):
「そこが良いじゃない。子供に食事に対する大切さ、人間関係の大切さを伝える演劇をするのよ。面白いじゃない!」
松代宗司(大食いチャレンジャーその2):
「その通り!しかし、なんで俺と酉さんが結ばれる演劇にならないんだ?」
瀬戸博(大食いチャレンジャーその3):
「僕、こんな役できないよ。元々、人前で劇をするのは無理!」
弓長晶:
「そー言わず。瀬戸くん、この物語は林崎さんと瀬戸くんが結ばれるエンドです」
林崎苺:
「それが嫌です!」
瀬戸博:
「これはただの拷問入った恋愛じゃないかーー!」
工藤友:
「というわけでもう残り時間20分。早く役者は成りきるように」
三矢正明:
「友ちゃんはその役でよかったみたいだな」
◇ ◇
ブーーーーーッ
パチパチパチパチ
工藤友(ナレーション):
「あるところにはある。チャレンジャー歓迎の文字」
松代宗司(大食いチャレンジャー2):
「早食い大食い料理。30分で激モリ焼きそば、食べきったら無料か!ここにするか!俺の胃袋は無限大だぜ!」
ガラララララ
三矢正明(嫌~な店主):
「いらっしゃい」
松代宗司:
「店主さん、あの焼きそば大食いチャレンジをやらせてくれないか?」
三矢正明:
「おー?あれやるの?脱落者いっぱいの、ウチの自慢の大食いチャレンジ。失敗したら5000円だよ!」
松代宗司:
「おたくも忘れるな。食べ終えたら、無料だというのをな」
ズルズルズルズル
工藤友:
「飲食店の看板、大食いチャレンジ。今、金を使わず、胃を満たす人間が増えてきた」
三矢正明:
「あーっ!やられたよ!」
松代宗司:
「親父さん、ごちそうさん!」
工藤友:
「特注の大皿を一杯にしても食べきる若者。それは元気の証拠。ただ、店側にとっては無料で7人分の焼きそばを食われたとあっては、大損。1人がクリアをすれば、その量はまた1人分増えていきました」
ガラララララ
松代宗司:
「おーい!あの大食いチャレンジをまたやらせてくれ」
三矢正明:
「いいだろう!今は10人前だよ」
松代宗司:
「じょ、上等だよ!」
ズルズルズルズル
ズルズルズルズル
ピピピーーーー
三矢正明:
「はい終了ー!残念!挑戦料、10000円」
松代宗司:
「ぐふっ……キツイ」
ガクッ
工藤友:
「こうした難しくなる大食いチャレンジに、次第に挑戦者はいなくなったと思いきや」
ガララララララ
酉麗子(大食いチャレンジャーその1):
「あの、そこの大食いチャレンジをして宜しいでしょうか?」
三矢正明:
「お?現在、11勝中の我が大食いチャレンジをやるのかね!?10人前だよ、お嬢さん、できる?失敗は10000円だよ」
酉麗子:
「大丈夫ですよ」
ズルズルズル
工藤友:
「颯爽と現れた謎の大食いチャレンジャー」
酉麗子:
「ごちそうさまでした」
三矢正明:
「やられたーー!?あっさり食べ終えたーーー!?」
工藤友:
「翌日」
酉麗子:
「大食いチャレンジをやらせてください」
三矢正明:
「望むところ!今日は甘くないよ!」
ズルズルズル
酉麗子:
「ごちそうさま」
三矢正明:
「またやられたーー!?2日連続!?」
工藤友:
「翌日」
酉麗子:
「大食いチャレンジをしに来ました」
三矢正明:
「今日も来たの!?」
酉麗子:
「美味しくて、無料ですから」
工藤友:
「お店は、突如現れた謎の大食いチャレンジャーによって、1週間連続で大食いチャレンジをクリアされました。そのチャレンジャーはとても平静としていて、15人前の焼きそばを前にしても、パクパクと食べているだけ。時間制限があっても、味わって食べきるほど」
三矢正明:
「あ、あ、あんな人間がいるなんて思わなかった」
工藤友:
「お店側は、その人のチャレンジを止めることは不可能と思いました。何十と積み上げても、食べられてしまう。そんな恐怖を感じて、臨時休業を3日ほどしました」
三矢正明:
「このチャレンジを失くすか……。いや!食べるこそが、成長の基礎!沢山食べてもらいたいから始めた企画なのだ!私が折れてどうなるものか!?しかし、……」
工藤友:
「店側も思う。10人前以上を1時間でペロリと食べあげるのは、絵的にも、道徳的にも相応しくない。そんな時、店主の娘さんがアイデアを出しました」
林崎苺:
「提案があります!大食いで勝負するのは止めましょう!」
三矢正明:
「?どーいうことだ?」
工藤友:
「娘さんのアイデアは翌日には反映されるのであった」
ガラララララ
酉麗子:
「どーいう事かしら?3人前の焼きそばで大食いチャレンジなどと」
三矢正明:
「ふふふ……いくら、君でも無理だよ。見たまえ」
松代宗司:
「う、うぐぐぐ……もう、ダメ」
瀬戸博(大食いチャレンジャーその3):
「お、お、お腹痛い……」
三矢正明:
「かつての挑戦者達は1人前でドロップアウトだ!その3倍など、できるわけがない!失敗したら15000円だ!」
酉麗子:
「そんな雑魚達と一緒にしないで欲しいわね」
工藤友:
「例の大食いチャレンジャーは店主の自信など、なにも感じてはいませんでした。しかしながら」
酉麗子:
「うっ。もう……ダメ……」
工藤友:
「その人もまた1人前の焼きそばでギブアップしました。あれだけ食べられた人がギブアップ」
酉麗子:
「味が、変じゃないかしら。野菜の味付けがダメじゃない」
三矢正明:
「娘の料理だ!味が落ちるのは当然だ!」
工藤友:
「この大食いチャレンジ。なんと、メシマズ3人前。いかに大食いチャレンジャーとて、それがマズければ食べられるわけがない」
三矢正明:
「よーし、ようやく。あの悪魔を追い払った!」
工藤友:
「店主はとりあえず、出禁なんて恥ずかしい事で勝つのではなく、なんとかして勝った事実を残して追い出したかった。このメシマズチャレンジ」
酉麗子:
「ま、参りましたわ……」
松代宗司:
「ぜってー、できねぇ……」
工藤友:
「いくつものチャレンジャーを葬り去り、元に戻ろうとしていました。そんな中にあって」
ピピーーーー
三矢正明:
「はい、そこまで!残念だったね」
瀬戸博:
「ぐぅ、今日もダメだった……」
三矢正明:
「よく食べるね。初めて、2人前を食べられた」
瀬戸博:
「……いえ、日に日に美味しくなってますよ。もう胃薬はいりません」
三矢正明:
「褒めているかな?それ?」
工藤友:
「1人だけ、その大食いチャレンジに挑み続けました。お金に糸目もつけず、毎日のように大食いチャレンジに挑みます」
ズルズルズルズル
ゴクゴク…………
林崎苺:
「……………」
瀬戸博:
「………あ」
林崎苺:
「あの、美味しい……ですか?父から聞きました」
瀬戸博:
「それはもう!時間なんてなければ、食べられます!」
林崎苺:
「そうですか。うれしい」
瀬戸博:
「あ、あの!こ、こ、こ、こうして!!初めて話したばかりなのですが」
林崎苺:
「は、はい」
瀬戸博:
「い、い、一食とは言わず!朝、昼、夜!俺に飯を食わせてください!付き合ってください!!」
林崎苺:
「へぇっ!?」
瀬戸博:
「今度の大食いチャレンジで!食べ終えたら!お付き合いを……僕と付き合ってください!ワザと大食いチャレンジの料理を不味くしているのは分かってます!優しい嘘をついているのは分かってます!だから、そんなあなたを救いたいんです!父親もそうではないですか!?」
林崎苺:
「…………あははは、バレちゃった。父親の料理がマズイなんて広まったら、本末転倒だから」
瀬戸博:
「ダメですか!?」
林崎苺:
「……いえ、約束を守ってと言うのなら、ホントに次。大食いチャレンジで食べ終えたら、付き合ってもいいですよ。私も、嘘は好きじゃないから」
瀬戸博:
「!や、約束ですよ!僕はいつでも食べたいですから!!」
工藤友:
「こうしてただの大食いチャレンジから、一つのカップルが誕生したのであった。人生は色々あるけれど、そんなことが人生なんですよ。オシマイ」
ブーーーーーーーッ