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子供の遊び場

作者: 井沼 若水

 いい天気ですね。こんな日は、公園でサボるに限るですか。

 まあまあそんなに邪険にしなくても、取って食ったりはしませんよ。

 私も同じです。気晴らしにこうやって呑気に人間たちを観察しているだけてすから。もっとも、今のご時世じゃそれも簡単にいかなくなりましたが。

 ほら、あそこを見て御覧なさい。子どもたちが砂場で遊んでいる。そんな景色をただぼぉっと眺めているだけども楽しいものですよ。

 だけども、ただそれだけの光景を眺めているだけで下手すら不審者扱い。嫌な世の中ですね、全く。


 しかし、不思議なもんですね。何がって、漫画だゲームだって昔は子供の遊びって言われていたものが、当たり前のように大人も夢中になっているというのに、あそこに大人は一人もいない。もっとも、大人が近寄ってきたって子どもたちは拒むでしょうけども。

 えっ、いたら変ですか。でも、あっちでは大の大人が犬と戯れたりしているんでしょう。ほら、寝っ転がってる。

 犬と同じ遊びが出来るんだったら、子どもとの遊びも一緒でしょうに。

 所詮、子どもの遊びだって、どこで線引きしているんでしょうかね、一体。


 行ってみます?あそこに。行きませんか。そうですか。

 砂と戯れる気分じゃ、なさそうですね。それはともかくとして。

 ここから見ていても、徐々に形作られていくのが分かりますね。ああやって作りながらも、いろんな事を想像しているんでしょうね。

 あぁ、ほらほらもうすぐ完成ですよ。


 せっかく作ったのに壊してる。なかなかのクオリティだと思ったんですが、何が気に入らなかったんでしょうかね。

 あるいは、壊すことも始めから決めていたんでしょうか。子どもは気まぐれですから、ふと思いついただけかもしれませんが。

 もし、あの砂場の中に「世界」があるとすれば、その中の人たちはどう思うのでしょう。いろいろと理由をつけて無理やり納得するんでしょうか。

 それでも、まさか子どもが支配しているとは思わないでしょうけどね。


 ……砂場に入る子どもたちは、前の使用者がどんな世界を作ろうとしていたかなんて考えたこともないでしょう。

 同じことがひたすら繰り返されたり、逆に繋がりが何にもない支離滅裂な歴史がそこに出来上がったりする。傍から見ている分には面白可笑しいですけど、中に入ってしまえば堪らない。

時々、思うんです。あんな世界の住民じゃなくてよかったって。

 でもまぁ、そこまで気にして眺めたりしたりは、普通はしませんね。


 何が言いたいって、ただの感想ですよ。深い意味なんてありません。ふと目にした景色に思いを馳せている。それだけです。

 とはいえ、面白いと思いませんか。これって、一から作り上げられたんですよね。このベンチだって、そこの花壇だって。そもそもこの地面自体が。

 もしかしたら、ここに広がっているのは漆黒が支配する真空な世界であったかもしれないのに、こんな色彩溢れる世界に染まっている。

 あそこの砂場じゃないですが、まるで誰かがコツコツと作っていったみたいじゃないですか。


 でもね、子どもだけでこんな精密な世界なんて作れるはずがありません。子どもなんて所詮、大人が与えたもので満足しているだけですからね。

 すべての材料は、大人が提供しているもの。子どもは、与えられた玩具を振り回しているに過ぎないんですよ。

 そう、砂場は大人が作った子どもの為の遊び場でしかないんです。だからこそ、ごく一部の小さな範囲内でしか存在し得ない。

 ああやって、おしゃべりに夢中でも全く問題にならないような、小さな小さな空間の中にしか置けないんですよ。

 丁度、広大な銀河の中にありながらただ一つしかない、この生命溢れる星みたいにね。


 そう考えると、地球のような星が一つしかないのも分かるような気がしませんか。生命誕生のプロセスに必要なものがきちんとそろっているなんて、偶然にしちゃあ出来過ぎでしょう。

 時折発生している災害なんて、子どもが癇癪起したようなものじゃないですか。

 結局、神みたいな連中が気まぐれに分け与えた子どもの遊び場なのかもしれません。

 そうやって、どっかで子どもが作り上げる世界をただただ眺めている。何にも手助けしたりせず、あそこの人たちのように優しく微笑みながらね。


 ねぇ、そんな風に感じた事ありませんか。




 初投稿です。

 漠然と考えていたことを形にしようと思いましたら、こんな風になってしまいました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 神の箱庭、なんて言葉がありますが、この「小説になろう」のなかにある沢山の物語もそうなのかもしれませんね。 物語り書きがふっと思う事を、きれいに文章にしていらしていると思いました。
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