全体行動?
松本先生の指示があり、リーダーを中心としてカバンを拾い、焚き火に必要になる物を集めていく。秀次達は煉耶と舞のカバンも持って拾いに行った。
「秀次君、木の枝はこれ位でいいかな?」
「いいと思うぜ。後は葉って言うけど普通は枯れ葉でやるものだからな~。この時期に落ち葉なんて無いから、青くてもいいから拾っとこうぜ」
「はい、わかりました。」
「りょ~か~い」
秀次は制服の上着を脱ぎ、そこに葉っぱを入れて集めていく。瑠璃は両手いっぱいに小枝を持ち、悠姫と仁は葉っぱを拾っては秀次の上着へと置いていく。5分もすると十分な量が拾えたため、元の位置へと戻っていく。広場を見渡すと井上と谷口のグループは既に帰っていた。それから野崎、平山のグループと松本先生が帰ってくる。それぞれが葉っぱと木の枝を置き、話し始めた。
「よし!では代表はここに集まってくれ!」
松本先生は全員が落ち着いた時を見計らって招集をかけた。5人のリーダー達は松本先生の元へと集まっていく。
「お前達は何かあった時すぐ指示が出来るように近くにいてくれ」
松本先生の指示通り5人は近くにいるが、彼らは誰とも話そうとしない。そんな状態で1時間30分も経った頃、煉耶と舞が帰ってきた。煉耶の手には棍棒が握られていた。
「不知火!森崎!無事に帰ってきたか!ちょっとこっちに来い!」
煉耶と舞は自分のカバンの中に水筒をしまい、棍棒は持ったまま松本先生の元へ向かった。
「不知火、森崎無事で良かった。それよりなんだ、その手に持つものは」
「これは川を発見した時にその川にいた生物の持ち物です」
「その生物とはなんだ?それにそれは盗ってきたのか」
「名称はわかりません。容姿は体長1m程の全身緑色の人型の生物でした。そいつはこちらの音に気づいて襲ってきました。なのでこちらも反撃し、奴は死にました。なので使えそうだった棍棒を拾って帰ってきました」
「殺したのか、不知火!」
「なら先生は棍棒を振り回し近くにくる奴に反撃するな、と言うのですか。これからサバイバルをするのに怪我は致命的ですよ」
「いや…しかし、……そうか」
「ねぇ不知火、聞いてもいいかな?」
そこで発言したのは谷口だった。谷口はいわゆるオタクという奴でオタクグループのリーダーだ。体は細く色白で、前髪で目が隠れる位に伸ばしている。
「なんだ谷口」
「それはゲームとかであるゴブリンじゃなかったのかい?」
「まあ、姿で言えばゴブリンが一番似ているだろうな」
「フヒヒッ、そうかい。そうなのかい。ああ、やっぱりここは異世界だ!俺達は異世界転移したんだ!!」
「おい谷口。キモい事言ってんじゃねぇよ。それに不知火もゴブリンって何だよ」
「キモい事なんて言ってないよ。俺が言っていることは全て事実だ!それに何よりの証拠はステータスがあることだ!!」
「谷口君、ステータスってなんだい?」
「そうよあんた。ふざけた事言ってんじゃないよ」
ここに来て、サッカー部の井上、テニス部の野崎、女子グループのリーダー平山が次々に言っていく。
「ふっ。ステータスっていうのはだね、自分の情報を文字にしたものさ。頭の中でステータスと念じれば出てくるよ」
「あんた、頭可笑しいんじゃない」
「騙されたと思ってやってみなよ」
そう言い谷口は目を瞑った。それに続きステータスの事を知っている煉耶、秀次、舞もステータスを見る。野崎は戸惑いながらもやり、井上、平山、松本先生もしぶしぶながら目を瞑ってみる。
「おっ!なんだこりゃ!」 「えっ!」
井上と平山は驚き声を上げるが他はただ静かに目を開くのだった。
「谷口、あれがステータスなのか?」
「そうですよ先生。見えた物が先生のステータスです」
「ならスキルというのは何かな谷口君?」
「スキルはね、個人が持っている技能みたいな物だよ。ちなみに野崎はどんなスキルがあったんだい?」
「僕かい?僕は身体強化Lv1と空間把握Lv2だね」
「スキルの効果は?」
「効果なんて分かるのかい?」
「そう思えば出てくるよ」
「ああ本当だね。えっと、身体強化は身体能力を強化してくれて、空間把握は僕の頭を中心として半径1mの空間が理解出来るという物らしいよ」
「そうなのかい。つまりその2つが野崎の使える能力だよ」
谷口だけは薄く笑っているが、他の面々は黙ってめを瞑っている。煉耶達もスキルの詳細が知れるとは分かっていなかったため、再度確認する。全員、自分のスキルの確認が終わったのか目を開ける。
「よし、これからの行動について言うぞ。各グループで各自スキルを確認し、不知火か森崎は各グループから1人か2人連れて水場まで案内しろ。行く奴はスキルで格闘や機動力に優れている者をグループで選出しろ。では解散」
リーダー達は自分のグループに帰って先程知った信じられないような事実をメンバーに話していく。一番すんなり行っておるのは谷口のグループで半分がオタクということも影響してるだろう。煉耶達も瑠璃と悠姫の元へ帰っていく。
「お帰り煉くん、舞!」 「お帰りなさい2人共」
「ただいま」 「ただいまっ!」
「よし、じゃあ煉耶達も帰ってきたことだし、リーダーは煉耶でいいか?」
「いや、それは秀の方が良いだろう。秀は看破も持っていることだし」
「そうか?なら俺がリーダーだな!そうそう瑠璃ちゃんと悠姫ちゃん、スキルは効果まで分かるらしいから見ておいてくれ」
「うん、わかった。煉くんと舞は水、見つけられた?」
「ええ、見つけたわよ。けど途中に魔物のゴブリンに遭ったわ」
「ええっ!大丈夫だったんですか!」
「全然大丈夫だったわよ」
それから舞はゴブリンに遭ってからの事を話し、ゴブリンを殺したこと、魔物には魔石があること、棍棒を持ち帰ったことを話した。
「そうだったんだ。煉くん。煉くんは1人でもゴブリンに勝てるの?」
「ああ、……そうだな。あれと同じレベルなら奇襲をせずに余裕で殺ることが出来る」
「マジかよ煉耶。やるなお前!」
「そうだ秀。この棍棒はお前にやるよ。魔物にも血は流れていた。なら撲殺も当然のように可能だろう」
「そうだよな。いつかは俺もやるんだな」
「そうよシュウ。あんたはこの中で2番目に力があるんだから。それに棍棒なんて私達じゃ長時間持てないわよ」
「分かった。棍棒は俺がもらうよ。いざとなれば俺がこの棍棒で殺ってやるよ!」
「頑張れよ秀。じゃあ俺はこれから他の連中引き連れて川までいく。荷物と瑠璃達よろしくな」
「私は行かなくていいの?」
「体力は俺の方があるからな。舞は休んどけ」
「そう。ありがと。頑張ってきなさいよ」
「じゃあな」
「おう!任せとけよ」
「またね。煉くん」 「いってらっしゃい」 「ガンバー」
煉耶は松本先生の所へ行き、準備が出来た事を報告した。後は各グループから選ばれたのを待つだけだが、それが長く20分してようやく決まった。野崎のグループからは野崎と竹刀を持った女子、渡辺。井上のグループは井上と野球部の西山。谷口のグループからはアニオタの日浦とthe普通という感じの村木。平山のグループからは地味系女子の佐藤だ。おそらく佐藤は押し付けられたのだろう。
「よーし。集まったな。不知火案内してくれ。道は覚えてるよな?」
「問題ありません。木にナイフで傷をつけてきましたから」
「では先頭不知火で最後尾は私だ。この場に残る者は余り動くなよ」
煉耶達一行はもりの中へと行っていった。