表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

風邪気味。

翌日、学校に行くと、のりがまた心配そうな顔をしていた。

「大丈夫?昨日はちゃんと病院行った?」

「行かなかった。家で薬飲んで寝てた。」

心配をかけて申し訳ない気持ちはあるが、“告っちゃえ攻撃”から関心が逸れるのは助かるので、しばらく、風邪気味ということにした。

そして昨日、守と会ったことも映画の約束をしたことも、しばらくは話さないつもりでいた。そっと、しまっておきたいから。

のりのことは好きだ。大学に入って、最初にできた友達だ。優しいし、気が合う。でも、今は…守のことは…そっとしておいて欲しいのだ。

「そっとしておいて欲しい」ということを今、のりに言っても聞き入れないだろう。そして、奈々自身が、のりの気を悪くさせずに伝える自信もない。


「今日のランチは、学食じゃなくて、外に行かない?…あ。ゴハン食べられる?」

午前の講義が終わって、教科書を片付けながら、のりが言う。

「食べ放題じゃなければ大丈夫!」

…ホントは食べ放題でもいいけど、風邪気味のフリしてないと。

「ホント?釜飯の気分なんだけど、どう?」

「いいね。行こう行こう!」


駅の少し手前のバス停から歩いてすぐの釜飯屋は、こぢんまりした佇まいの小綺麗な店だった。

「味のある建物だね。」

奈々が言うと

「でしょ?彼のおすすめなの。」

と、のりは得意げにウインクした。目元からピンクのハートがはじけた。

…今日もラブラブモードだなあ。気をつけよっと。

席に座ると、もうかぐわしい香りでいっぱい。お腹が鳴りそうになるのをこらえてメニューに目を通す。とはいっても、のりが詳しく説明してくれたので、ほとんど読んでいないのだが。

二人とも人気メニューの“大入り”を注文した。のりの彼曰く、迷ったら、色々な具が入っているコレがおすすめだそうだ。ランチタイムは、お吸い物とドリンクが付くのもおすすめポイントだそうだ。釜飯にワクワクしながらも、のりが何か言い出すのではとヒヤヒヤしている奈々。

「…ところで、奈々。」

…来た!

「何?」

「病み上がりで言うのもナンだけどさ。まだ決心つかないの?」

…ほっといて~。

「つかない。このままでいいの。」

「どーしてー?」

「うまく言えないんだけど。今は、守とのことを大事にしまっておきたいの。だから告らなくてもいいやって思ってるの。」

「意味わかんなーい。」

「言うと思った。のりの気持ちはありがたいけど、そっとしておいて。」

なんとか、怒ったりせずに言い終えて、ホッとした気持ちでお茶を飲む奈々。不可解な表情で、つられてお茶を飲むのり。しばらく沈黙が続いた。


「お待たせしましたー。大入り二つ、お持ちしました。」

沈黙を破ったのは、店員さんの声だった。沈黙に困っていた二人は救われたような表情で釜飯の蓋を開ける。

「いっただっきまーす!」

「おいしー!」

口々に歓声を上げる二人。悩んでいても、ウマい物はウマい!

二人とも、がっつりと完食。


「奈々、食欲出てきたんだ?良かったー。」

「そうだね。今日はかなり調子いいみたい。」

…しまった。私は風邪気味なのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしくお願いします。☆小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ