大事ということ。
片思いの切ない気持ちを書いてみました。
鮫島守と青木奈々は、高校時代の塾仲間。今は別々の大学に通う大学1年生同士だ。
この二人、仲は良いが友達らしい。しかし、周りには守が奈々に気があるようにしか見えない。
守は、いつの間にか奈々の側にいるようになった。「どう見ても鮫島守は青木奈々に気がある。」なんて周りが言い出して、奈々は周りのそんな言葉に自惚れている部分もあったが、守は、いつも隣にいて、優しくしてくれたので、奈々は守が大好きだった。
奈々が入院したときには片道一時間半かけて何回か見舞いに来てくれたし、誕生日にはプレゼントを贈ってくれた。
しかし最近は、ほとんど会っていない。お互いに大学生活が始まったから。家も学校も離れているので、なかなか会えないようになってきていた。
守はマメなタイプではない。メールだと返事がなかなか来ないため、連絡はたいてい電話だ。電話してみると「お前、週末ヒマ?メシ行こうか。」と、あっさり決まる。
いつもそんな感じで会うことが出来ていたので、それ以上は望んでいなかった。…つもりだったが、会えなくなってきた今、確認したい。
「私をどう思っているの?」
頻繁に会うことができた時は、どうでも良かったことだけど、離れた今は、自分の場所や立ち位置を知りたい。
どうやって?もし、これが原因で友達ですらいられなくなったら?会えなくなったら?
でも…。
友達で甘んじているうちに、守に彼女ができてしまったら?
考えていたら、涙が滲んできた。
「奈々~。おはよー。」
という声とともにドサッと隣に座ったのは同じゼミ生の友人、“のり”こと高畑紀子。そう。今は大学の授業前。入学式から意気投合して、いつも一緒にいる。恋バナも出る。しかし、奈々は守のことを話していない。気づいたら、“好き”というよりは“大事”で、大事過ぎて、誰にも話せずにいる。
「のり〜。おはよー。」
「どしたの?目、赤くね?」
「あくびしたところ。」
慌ててごまかすと、ツッコミが入った。
「さては、夜遊びだな〜?白状しろ!」
「ヒミツ!」
笑ってごまかす奈々。
本当は、夜遊びなんてしていない。バイトだって、近所のコンビニで9時まで。男友達はいるが、遅くに連れ回すようなことは滅多にない。
「奈々ってさあ、恋バナしなくない?ホントのところ、どうなの?こないだも、告られたのに断ってたじゃん?」
昼休みの学食で、紀子が聞いてきた。このところ、紀子からの探りが続いている。紀子は話してくれているのに、奈々が隠しているのは、後ろめたい気持ちもあった。でも、どう言おう。
「んー。彼は、いないよ。実はね…。」
「実は?」
紀子がかぶりつくように聞いてくる。
「好きっていうより、大事に思っている人がいるの。」
「好きっていうより、大事…?」
紀子は驚いた顔で繰り返す。
「そう。大事。」