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酸っぱい恋  作者: シュウ
檸檬編
8/19

応援と常連

今日は一年生大会の地区大会。

市の体育館で大会は行われる。大きなコートを半分に割って、AコートとBコートに分かれて試合が進められていく。

私たちの学校は順当に勝ち進んでおり、次勝てばベスト8という試合であった。

一年生以外の上級生は会場に来なくてもいいのだが、くるみが『どうしても来て欲しいです!』とか『来なきゃ負けます!』とか言うもんだから、初日から毎回来ていて、二階のコート全体を見渡せるところから応援している。とはいっても、特に声援を送るでもなく、ただ見ているだけ。くるみ的には応援して欲しいらしいのだが、応援の仕方がよくわからないのが事実だった。

こうやって初日から同じところで応援(観戦?)をしていると、ここが私の特等席のような感覚を覚えてしまう。

試合が始まるまでは、特にすることが無くて、他校の試合をぼんやりと見ていたり、練習風景をぼんやりと見たりして時間を潰していた。

そんな私に、見知らぬ女の子が声をかけてきた。


「もしかして、立花檸檬(たちばな れもん)さんですか?」

「へ?」


急に自分の名前を呼ばれたことに驚いて、変な声が出てしまった。

声をかけてきた女の子は、まだ幼さが残る可愛い顔で、赤いジャージを着ていて、他校の生徒だということがわかる。

でも逆に言えばそれ以外はよくわからなかった。

身長は私よりも低くて・・・って私よりも高い女子生徒なんて滅多にいない。ちなみに私は178cmもある。えへん。

それで、その子は多分165ぐらいはあるとは思う。

ここにいるってことは、バスケ部なんだろうけど、私にこんな知り合いがいただろうか?

と思っていたら、その子が自己紹介を始めた。


「あっ、すみません。私、北高のバスケ部の一年で佐々木愛(ささき あい)って言います」

「あれ? 北高って確か・・・」

「立花先輩の学校の次の対戦相手です」


北高と言えば、地区大会なんか朝飯前のように優勝していくバスケの常連校だ。私も北高とは何回も戦ったことあるけど、僅差で勝ったり負けたりを繰り返している。そう考えたら、うちの学校もなかなか強いのかもなー。


「で、その・・・佐々木さんだっけ? 何か用? 私は作戦とかは何も聞かされてないから答えられないよ」

「そ、そんなことしません。ただ立花先輩の姿が見えたので、お話をと思って来たんです」

「お話?」


どういうことだろ? やっぱりどこかで会ってるのかなぁ?

そう思った私は佐々木さんに聞いてみた。


「いえいえ。会ったことなんて無いです。私が一方的にファンなだけです」

「え、ファン?」

「はいっ! 中学の時の立花先輩の大活躍を一目見てから、大ファンになってしまいました。しかし、私が立花先輩を見つけたのは、中学の市の大会の準決勝でした」


佐々木さんの話を聞くところによると、なんでも私が3Pシュートを綺麗に決めていくのに憧れたんだとか。それで私を追いかけようとして、強豪校にいると信じて北高に入学したものの、私は違う高校にいましたよ、ということだそうだ。


「どうして立花先輩は北高に入らなかったんですか!? 立花先輩ほどの実力なら北高でもすぐにレギュラーになれたのに!」


少し声を荒らげて言う佐々木さん。

まさか私が『一番近い高校だから』という理由で北高にいかなかったって知ったらめんどくさくなりそうだなぁ・・・


「いや、ちょっと学力が足りなくて・・・」

「・・・そうでしたか。大きい声を出してしまってすみません」


おっ、納得してくれた?


「いいよいいよ」

「そろそろ時間なので。これと次の試合は関係ありません。圧勝させてもらいますので」

「佐々木さんも試合出るの?」

「はい。立花先輩と同じシューターです」

「そっか。でも今年のうちの一年は手ごわいよ?」

「それでも負けません。では失礼します」


ペコリとお辞儀をして去っていった。

それにしても私のファンがいたなんて思いもしなかった。

確かに中学のころは、自分で言うのもなんだけど、結構活躍してたと思うし、ファンが居てもおかしくなのかなぁ?


「何ニヤニヤしてるんですか?」

「く、くるみ!」


横から声をかけられてそっちを見ると、くるみが不機嫌そうな顔をして立っていた。

うわっ、ニヤニヤしてるところ見られちゃったー。


「な、なんでここに? もうすぐ試合でしょ?」

「もうすぐ試合だかられもんに励ましてもらおうと思って来たのに・・・あの子は誰ですか?」

「へ? 佐々木さんのこと?」


ニヤニヤしてたのを気持ち悪がってるのかと思ったら、違ったみたい。よかったよかった。


「あの子、次の対戦相手の北高のシューターだって。本気で来るみたいだよ」

「まったく・・・私と言うものがありながら・・・」

「ん? なんか言った?」

「なんでもありませんー。もう、ちゃんと応援しててくださいね!」

「そりゃ応援するけど・・・」


なんか怒ってるのかな?


「じゃあ行ってきます!」

「あっ! くるみ!」

「もう! なんですか!?」


足を止めて振り向いたくるみに近づいていって、優しく抱きしめた。

私も中学の大会で、お母さんにイラついてた状態で試合に出ようとしてたら、その時の女の監督が『イラついていると試合に集中できないわよ』といって優しく抱きしめられたことがある。そのおかげもあってか、試合には勝てたんだけどね。

それと同じことを先輩としてくるみに実践した。


「えっ! あっ、ちょっと、れもん!? こ、こんなところでなにしてるのっ!?」

「なんで怒ってるのかわかんないけど、くるみはいつも通りのプレイをすれば大丈夫だからね」

「・・・・・・バカ」


先輩に向かってバカとはなんだ。というのは火に油なので我慢する。


「じゃあ試合頑張っておいで。ここから応援してるから」

「・・・うん。頑張ってきます。勝ったらご褒美くださいね!」


そう言って、私の腕から離れていったくるみは、いつもの笑顔で走っていった。

元気になったみたいでよかった。

それにしても・・・


「ご褒美って、高い物とかだったらどうしよ・・・」


私は小さくため息をついた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると幸いです。


れもんは普通の女子高生です。

ただちょっとバスケが上手くて背が高くてカッコよくて後輩思いな良い先輩なだけです。


次回もお楽しみに!

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