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酸っぱい恋  作者: シュウ
柚子編
5/19

酸っぱい恋

キスをされた日から5日目。

最近の私の頭の中には、常に楓がいるような状態が続いていた。

やっぱりキスをされてからというものの、楓のことを意識しすぎてしまっていて、まともに顔が見れそうに無い。

土日明けの今日でも、楓のことが頭から離れてなかった。

もうこれは恋というやつだろう。

でも女の子同士ってどうなんだろ?

やっぱり周りからは変な目で見られるよね・・・

ももちゃんとなっちゃんにも変な目で見られるかなぁ・・・

ってゆーか相談とかもできないよねぇ。


「はぁ・・・」

「柚子ー!」


ん? 誰だろ?

ももちゃんとなっちゃんは待ち合わせ場所にいるはずだから・・・

振り返った私の目に映ったのは、楓だった。


「えっ? なんで?」

「前に追っかけてたら、今度は名前呼んでねって言ったのは柚子じゃん」

「あ、そっか。・・・じゃなくて! なんで楓がこっちから来てるの?」

「柚子と学校行こうと思って。・・・ダメ?」


楓ってば、私がその上目遣いに弱いの知ってるのか?


「わかったよ。じゃあ行こっか」


並んで歩き始めたものの、何を話していいのかわからない。

チラッと楓の顔を見たとき、視線に気づいた楓が私を見た。

その瞳にドキッとしてしまい、視線を逸らす。


「どうかした?」

「ううん。なんでもない」


楓って私のことどう思ってるんだろう。

でも私の勘違いで、楓に変な風に思われたら困るし・・・迂闊に聞けない。


「あのさ、柚子」

「ん?」

「その・・・柚子って」

「おはよーい!」


楓が話そうとした時に、私たちの前からももちゃんとなっちゃんが歩いてきた。


「おはよー。どうしたの?」

「いやー、二人が歩いてきてるのが見えたからさー。来ちゃった☆」

「そんな可愛く言っても効果は薄いぞ」

「あら、楓は厳しいのね」

「やるならこのぐらいやらないと」


キャピキャピなポーズを取ってブリっ子を演じている楓。

綺麗系の楓がやると一周して似合わない。

それでも面白かったのか、ももちゃんは大笑いしていた。

そんな中、私は楓が言いそびれた言葉の続きのほうが気になっていた。

・・・私が、なんだろう?



昼休みになって、いつものように私のクラスにやってきた楓と一緒にお昼ご飯を食べる。


「そういえばさ、昨日のテレビ見た?」


ももちゃんが昨日のテレビの話題を繰り出す。


「あの結婚特集のやつ」

「私見てない」

「私もー」

「私も見なかったかな」

「なんだよー。みんな見てないのかよー」


残念そうな顔をしているももちゃんに、なっちゃんが話しかけた。


「そんなに面白かったの?」

「もう面白かったよ! なんかね、男同士での結婚が許されてる国があるんだってさ。で、そこで、その男同士の結婚式がやってたんだけど、これがさ、イケメン同士とかならいいよ? でも太ったやつとガリガリの男でもうなんていうか、アンバランスにも程があるって感じで、我が家全員で笑っちゃったよ!」


・・・そっか。

やっぱり普通に男と女で恋をしないとダメなのか。

なんか現実にたたき落とされた感じがする・・・


「ちょっとっ! 楓っ!」


弁当箱を見ていた視線を上げると、楓が教室を走って出ていくところだった。

私は考えるよりも早く席を立って追いかけていた。

後ろでももちゃんの声が聞こえたが、気にせずに追いかけた。

400M走時から知っていたことだけど、楓は足が早く、私の足だと追いつけなかった。階段へと曲がったところで見失ってしまった。

階段を登ったのか、それとも降りたのか。

迷ったけど、なんとなく楓が上に行ったような気がして階段を登っていく。

私の学年は3階にあって校舎は4階建てなので、上はもう1フロアしかない。4階は1年生のフロアになっている。

上に登っていくと下級生達が私のことを見ていたが、そんな視線よりも楓を探すほうが先決だった。

どこに行ったんだろう。ふと登ってきた階段を見ると、そこよりも上に屋上へと続く階段があった。

しかし屋上はもう閉鎖されていて、上に行っても何も無い。

もしかしてと思い、その階段を上へと登っていった。


「やっぱり・・・」

「・・・柚子?」


楓はそこの壁にもたれてしゃがんでいた。

そして目には涙を浮かべていた。


「どうしたの? 急に走っていったりなんかして」

「・・・もう気づいてるくせに」


バレてた。


「もう気づいてるんでしょ? そうなの。私ね、柚子のことが好きなの。はははっ。同性を好きになるなんておかしいでしょ? 気持ち悪いでしょ? でも好きなの」


蔑んだように笑いながら楓は言った。

そして腕で顔を隠しながら静かに泣いていた。


「あの、さ・・・あの時キスしたのってなんで?」

「なんか柚子と離れるのが寂しくなっちゃって、それでつい・・・」

「ついって・・・私の気持ちにもなってよ」

「ごめんなさい」


まったく。あのせいでどれだけ悩んだ事か。

私は楓の隣にしゃがみこんだ。


「でね、あれから私、考えたんだ。どうして楓が私にキスしたんだろうって。それで考えてるうちに、私も楓のことで頭が一杯になってきちゃって。でも女同士でこーゆー関係になるのってどうなんだろうとか、周りの目とかも気になっちゃうし、なにより楓がほんとにイタズラでキスしたんだとすれば、それは私の単なる思い違いであるわけで」


なんかよくわかんなくなってきちゃった。


「要するに何が言いたいかっていうと、私も楓のことが好き。周りにどう思われたって関係ない。そんなことよりも楓のことが好き」


言い切った・・・ものすごくスッキリしたのと同じくらいドキドキしてる。

楓がゆっくりとこちらを向いた。

そしてそのまま顔を近づけて来たので、私も覚悟を決めて楓の唇を受け止めた。

今度は楓のキスの意味を理解することが出来た。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかあれば書いていただけると嬉しいです。


これで一応柚子編は一区切りとなります。

次は誰編でしょうね?


次回もお楽しみに!

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