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酸っぱい恋  作者: シュウ
タバコ編
17/19

タバコから始まる出会い・パート2

竹村芽衣子(たけむら めいこ)

これがあの人の名前。

私は学校の自分の席で名前と連絡先のアドレスと番号が書かれたスケジュール帳を眺めていた。

校内は禁煙である。というか、吸ってはいけないのである。

なぜなら、私はまだ18歳の高校3年生だからだ。

今日もこうして制服に身を包んで授業を聞き流していた。


私は別に不良というわけでもない。タバコ吸っているからといって、皆が皆不良だったら、世の中不良だらけだ。

たまたま1年の頃に見た映画で、好きな俳優さんがタバコを吸っていたのを真似たのがきっかけだった。

最初はお父さんのタバコを。それからは自分で稼いだバイト代から払っている。

そうなったのも、私がお父さんのタバコを吸っているところを、お父さんにバレちゃったからなんだよね。

元々隠れて自分の部屋で吸ってたんだけど、ある日お父さんが突撃してきて、『この部屋、タバコの匂いがする』と言って、『真奈美(まなみ)。お父さんのタバコ吸ってるだろ』ってバレたわけ。

でもお父さんは、自分も若いうちから吸ってたらしくて、特に止めようとはせず、むしろ私のために買ってきてくれるようになった。

私自身、結構大人っぽく見られるせいか、タバコを吸っていてもあまり違和感はないとお父さんは言っている。そして私の友達も同じようなことを言っている。


まぁなんでこんな話をしたかというと、その竹村芽衣子さんには、私がまだ高校生であることは伝えていないのだ。

言おう言おうと思ってから、早一週間が経ってしまっている。

毎日バイトがあるわけでもなくて、でもバイトがある日は喫煙所に寄って、そこにいる芽衣子さんと少し話してからバイトへ向かう。

芽衣子さんは、21歳の大学生。カウンセラーとかを目指しているみたいで、心理学を大学で学んでいるらしい。

高三になっても未だに進路のひとつも決めていない私にとって、芽衣子さんは輝いて見える。

芽衣子さんから見た私はどんな風に見えてるんだろ。

もしかしたらカウンセラーを目指しているだけあって、私のことなんかほとんどお見通しだったりするのかな。

でも裏表がなさそうな人だから、いつもみたいにふわふわしてるんだろうか。


「まーなみ!」

「うわっ!」


スケジュール帳とにらめっこしながら色々と考えていると、私の後ろから友達の咲月(さつき)が飛びついてきた。

この子はスキンシップが多い。私の数少ない友達の一人。


「そんな声出さないの! 女の子なら、キャッとか言わないと。女子高生の名が廃るって」

「今時そんな女子高生見たことないっての」

「むっ? なんだかヤニくさいなぁ」

「その発言の方が女子校生らしくないけどね」


後ろからクンクンと私の首元の匂いを嗅ぐ咲月。

と、その動きが止まって、私がさっきまで見ていたスケジュール帳へと視線が移った。

咲月の顎が、私の肩に乗る。


「なにそれ?」

「ん? あー…友達、かな?」

「友達?」

「前にさ…」


うんぬんかんぬん。


「ってことがあったのさ」

「へぇ。なんかそれ、騙されてたりするんじゃないの?」

「あはは。私も最初はそう思ったけどさ、芽衣子さんはそんな人じゃないよ」

「一週間やそこらでわかるもんなの?」

「まぁ…勘だけど」

「そんな知らない人と仲良くしたらダメだよー」

「もう知らない人じゃないって」

「むー」


そう言って後ろから私のことを優しく抱きしめる。

咲月は私のことを心配してくれてるのか、タバコを吸い始めた時も、同じようにしてくれた。

止めはしないけど、心配はしてくれる。

いい友達をもったと思う。


「大丈夫だよ。芽衣子さんは誰かを騙したりなんてするような人じゃないから」

「むー…なんでそんなにかばうのさ。私ともと仲良くすればいいじゃんよー」

「咲月とは仲いいじゃん」

「そーゆーことじゃなくてー…はぁ。私も真奈美に愛されたいわー」

「何言ってんの。ほら、そろそろ離れろ。あっついから」

「あーん」




放課後、今日はバイトは休みだけど、駅にあるいつもの喫煙所の近くまで来てみた。

思い切って芽衣子さんに高校生であることを伝えてみようかと思った。

もし、それでこの関係が終わってしまうようなら、それまでなんだと思う。

元々付き合う気とか無いし。友達なら友達のままでいいかな。

一回家に帰ってないで、直接学校から来たから、いつもより早い時間で、芽衣子さんはまだ来てなかった。

待っている時間が、妙に長く感じてドキドキする。

芽衣子さんは制服姿の私を見てなんて言うだろうか。なんて思うだろうか。

一週間だけだったけど、知らない世界の人と会話できて楽しかった。

芽衣子さんみたいな人と知り合えて楽しかった。

少なくとも損はなかったなー。


そんなことを考えていると、正面の改札のほうから、芽衣子さんがやってきたのが見えた。

私に気づいた芽衣子さんが小走りで近づいてくる。

小さく胸元で手を振る芽衣子さん。

そして私が制服を着ていることに気がついたのか、その手がピタリと止まった。


「あれ? 真奈美…さん?」

「えっと、こんにちわ」

「えっ? えっと…えっ?」


困惑してるみたい。


「もしかして、そーゆーバイトだったんですか?」

「違うって。実は私、高校生なんだ」

「高校生…? ってことは、年下、ですか?」

「そーゆーことになるかな」

「年下…」

「今まで黙っててゴメン。騙すつもりはなかったんだけど、成り行きで言い出せなくて」

「いや、こっちこそ…ごめんなさい」


何も悪くないのに謝る芽衣子さん。


「とりあえず今日はバイト休みだから、どこか入らない? あー、このあと予定があるならいいけど」

「大丈夫です。予定なんて気にしないでください」


両手をグーにして胸の前で合わせて、気合を入れたのか、私のことを力強く見て答えた。


だいぶ間があきました。

ごめんなさい。

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