ライクとラブ
「私達、お友達でいましょ」
「・・・うん」
私は渋々と頷いた。
大好きな橙子に勇気を振り絞って告白した結果振られてしまった。
橙子はおっとりした性格で、誰にでも優しい女の子だった。
その誰にでもの中の一人だった私は、橙子に優しくされているうちに、だんだんとその優しさを独占したいと思うようになっていった。
それは他の人にとっては迷惑なことなのかもしれないし、ちょっとうっとおしいと思われるのかもしれないけど、私の想いは止められなかった。
何をするにも橙子について行き、はたから見れば橙子のペットのように見えていたかもしれない。
でも私はそれでも良かった。
私には親友の加奈ちゃんがいて、よく加奈ちゃんに相談していた。
「橙子ってばまた私のこと子ども扱いしてさ。同い年なんだからもうちょっとそーゆー目で見てくれてもいいと思うんだ」
「全く。あんたはそんなんだから子ども扱いされんのよ。私から見ればただのわがままっ子だもん。めんどくさいわぁ」
「またそうやってバカにして。私が橙子に取られるのが怖いんでしょー」
「別にー。橙子があんたのことを見てくれるとは思わないけどねー」
「ひっどーい。加奈ちゃんなんかキラーイ!」
「私は真美のこと好きなんだけどなぁ」
「ライクでしょ?」
「ライクだよ? 当たり前じゃん」
そう言って男らしく笑う加奈ちゃん。
こうやって加奈ちゃんに励まされながら、橙子との距離を詰めていき、そして告白をした。
結果はダメだった。
私のことはやっぱり友達としか思えないんだって。それ以上の何ものでもないらしい。
そう言われてしまうとなんとも言えないもので、私はしょんぼりと学校を出て、校門へと向かって歩いていた。
「よっ」
声に反応して顔を上げると、校門のところに加奈ちゃんが立っていた。
私はそんな気分じゃなくて、加奈ちゃんの横を通り過ぎた。
加奈ちゃんは私の横について歩いてきた。
「どうだったの?」
「・・・・・・」
「・・・そっかぁ。残念だったね」
何も言ってないのに、なんでも理解してしまう加奈ちゃん。
私の一番の理解者なだけあると思う。
そして今も横に並んで歩いてくれてる。
きっと加奈ちゃんなりの励ましなんだと思う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何も言わずに並んで歩く。
それだけなのに、たったそれだけなのに、なぜだか涙が流れてきた。
泣きたくないのに。悔しいけど泣きたくなかったのに、涙が出てきた。
「ううっ・・・ぐすん・・・」
「・・・真美」
そう言って泣いている私の両頬を手のひらで挟むように押さえながら、顔を加奈ちゃんのほうに向けさせられた。
「泣かないで」
「ぐずっ・・・そんなこと、言われても・・・グスン・・・涙が出てきちゃうんだもん」
両頬を挟まれたまま涙を流す私。
そんな顔を笑うでも無く、怒るでもなく、ただ悲しそうに見ている加奈ちゃん。
鼻水も出てきてるのがわかる。
絶対に人には見せられない顔になっているだろう。
すると加奈ちゃんの顔がおもむろに近づいてきて、唇に触れた。
私は驚いて目を丸くした。
そして加奈ちゃんは顔を離すと、えへへと笑った。
「おまじない」
「・・・おまじない?」
「そ。涙の止まるおまじない」
「そんなの初めて聞いた」
「私が考えたんだもん」
「・・・?」
首を傾げる私に、加奈ちゃんは言った。
「私、真美が泣いてるのは見たくないな」
泣きたくて泣いてるんじゃないもん、と心の中で思った。
「私ね、真美のことが好きなんだ」
「・・・ライクなんでしょ?」
「・・・ラブだよ」
「いつもライクだよって言ってるのに」
「それは真美がいつも橙子の話ばっかりしてるから言えなかったの」
「えっ、じゃあラブってことは・・・」
「そういうこと」
そう言うと、加奈ちゃんは私の唇にまたキスをした。
ここまで読んでいただきありがとございます。
感想とか書いていただけると嬉しいです。
久々の更新となりました。
そして短編です。
もともとSSの詰め合わせを気分で書いていくものだったので、一話完結もありかなーと思って書いてみました。
なんとも言えない友達同士という設定でした。
柑橘系とはなんだったのか。てへぺろ☆