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酸っぱい恋  作者: シュウ
檸檬編
11/19

ちなつとくるみ

一年生大会の時に活躍していたガードの千夏ちゃんのお話です。

中学まで続けていたバスケを続けるために、高校入学と同時にバスケ部に入った。

同じ入部希望者の中には、当たり前のように初心者がいたんだけど、初心者どころか素人・・・いや、無知同然で入ってきた一年生がいた。

その子はくるみと言って、バスケをやるには小さいんだけど、可愛いくてめでたくなるタイプだった。

でも入部動機が『身長を伸ばすため』って・・・冗談だよね?

そのくるみを放っておけないのか、マンツーマンで教えている先輩がいた。

私はその二人を見て、非常にときめいたのを今でも覚えている。

私はそのころは全然普通の女の子だったし、高校生になったら彼氏を作ろうとも思っていた。

思わずというべきなのだろうか。ふと手取り足取り教えている先輩を見て、胸の奥が熱くなるような感覚を覚えた。

最初はちょっと体調でも悪いのかなーなんて思ったりもしたけど、いつも通りに動けるし、その時以外は特に変なことはなかった。

私は首を傾げながらも、その日はいつも通りに過ごした。


そしてしばらく部活を続けていくと、私は自分に起きていた異変に気がついた。

簡単に言うと、私は同性愛に目覚めてしまったらしい。

でも特に女の子が好きというわけではなくて、女の子と女の子がイチャイチャしてる(ように見える)のを見ると、ときめいてしまうのだ。

要するに百合カップルを見るのが好きなのだ。

そんなことに気がついてからは、私のモチベーションは上がりまくりだった。

バスケ部だから、それなりしっかりしているというか男らしいというか、そんな女の子がいるわけで、そんな女の子と普通の女の子が絡み合っているのを見ると、もう大変だった。

そんな中でも、例のくるみちゃんと立花先輩の組み合わせはもうたまらなかった。私の腐ってきた目で見る限りは、くるみちゃんは立花先輩に惚れていると言っても過言ではなかった。

もう他の人を見る視線が違うもん。あれは恋する乙女の眼だね。間違いない。

私はガードというパスを回すのが仕事のポジションをしているんだけど、最近の私は百合成分のおかげで絶好調だった。

そんなこともあって、私は一年生大会のレギュラーとキャプテンを務めることになった。



そして一年生大会の日。

私たちは順調に勝ち上がり、強豪校の北高との試合を迎えた。

試合の直前になって、くるみがどこかに行ってしまったので、探しに行った。トイレとかなら別にいいんだけど、迷子とかだったら困るし。

そう思って探していると通路の反対側にくるみがいるのが見えた。そのくるみに声をかけようとして小走りになった時、後ろから立花先輩がくるみに抱きついていた。


『うひょぉおおー!!』


私は心の中で大絶叫をして、通路に隠れながらその様子を見守った。会話は全然聞こえないけど、その光景を見ているだけで私は白飯3杯は食べれそうな状態だった。

そしてゆっくりとくるみを離した立花先輩が、何か声をかけてガッツポーズを送っていた。

くるみが近づいてきたけど、私は隠れたままやり過ごそうと思った。でも一応探しに来たんだし、一緒に帰らないと入れ違いになってしまったとかで迷惑をかけるのも困ると考えて、くるみに声をかけた。


「あっ。くるみ。どこ行ってたの? もう試合始まるよ?」

「ごめんごめん。ちょっとね」


何が『ちょっとね』だ。この幸せ者め!

でもそんな気持ちを隠しに隠して、くるみと他のメンバーが待つところまで戻った。

すると途中でくるみが私に向かって大きな声で言った。


「今日の試合絶対勝とうね!」

「もちろん! 勝つよ! 当たり前じゃん!」


今の言葉に興奮してしまったことを悟られないように、私も声を大にして言った。



そして一年生大会の結果は、北高には勝てたんだけど、その次の準決勝で当たったところに僅差で負けちゃった。

私は、くるみと立花先輩のおかげ(?)で大活躍だった。周りから見たら『調子良いんだなー』とか思われてたのかもしれないけど、もう興奮が覚めなくてアドレナリンが出たまま止まらないんじゃないかというぐらい興奮していた。あの日以上のプレーはしばらくできないと思う。

そんなわけで、くるみと立花先輩がめでたく結ばれたのかと思っていたら、そうではなかったようで、どうもここ何日かギクシャクしているようだった。仲の良い師弟のようだったのに、部活での必要な会話以外は話していないようにも思えた。少なくとも私の高性能レーダーには引っかからなかった。

そして3年生の引退試合があり、その時の立花先輩はいつも通りの超人バスケを繰り広げてたんだけど、くるみが酷かった。レイアップが決まらないっていうのが問題だった。途中で先輩に交代させられてたけど、試合が終わったあともすぐに帰っちゃったし・・・

あの二人が元気ないのは私的にもちょっとなぁとか思っていた。



それから何日か経った日に行われた3年生の送別会で、その二人が仲良く手を繋いで登場したときには、私は思わず叫んでしまった。

周りの人からはちょっと変な目で見られるかとも思ってたけど、私が女の子好きだというのはなぜかみんな知っていて、アハハと笑われてしまった。

その時に、くるみと立花先輩が一緒に笑っていたのが見えたとき、私は自分の事のように嬉しかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とかあれば書いていただけると幸いです。


これで完全に檸檬編が終了となります。

次回は夏編です。


次回もお楽しみに!

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