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酸っぱい恋  作者: シュウ
柚子編
1/19

目と目が合う瞬間

今は封鎖されてしまった学校の屋上へと続く階段。

今は誰も来ることがないであろう階段の踊り場で私と彼女はキスをした。

その彼女の手が私のいろんなところを撫でてくる。

首筋から胸、お腹、そして・・・


「ちょっと待った!」

「ん?」

「どこ触ってんのさ!」

「いや、柚子(ゆず)がいいよって言ったから」

「い、言ったけどさ! こ、こんなとこまで触るなんて言ってないじゃん!」

「えー・・・だめなの?」

「ダメ!」


私のからだをいやらしーい手つきで触りまくっていた(かえで)は、残念そうに私からからだを離すと隣に腰掛けた。

私は乱れた制服を変に見えない程度に整えると楓と並ぶように腰掛けた。


「せっかく柚子からお許しが出たから触ってたのにー」

「だってそんなとこまで触ってくるとは思ってなかったから」

「ほんと柚子って、ガード固いよねー」

「固くないですー。これが普通なんですー」

「もう普通じゃない事してるはずなんだけどなー」

「うっ・・・」


そう。私と楓は付き合っているのだ。女同士で付き合っているのだ。







私が楓と出会ったのは今年の陸上競技大会と呼ばれる学校行事の時だった。


高校生活で2回目の陸上競技大会ということもあって、どれが楽な競技かというのがなんとなく分かっていた私は、適当にやっていても怒られない砲丸投げを選んでいた。

しかし砲丸投げというのは、他の人達が投げている間も待っていないといけないし、なによりも同じクラスの人たちからの声援がうっとおしくて、思った以上に面倒な競技だった。


「あーめんどくさいなー」


口にすると余計に意識してしまうもので、さっきよりもめんどくさくなってしまった私は、周りで行われているトラック競技を見ていた。

ちょうどスタートするところだったらしくしゃがみこんでピストルの音を待っている走者達が見えた。

同じクラスの人が見えるので、どうやら二年生の種目のようだ。

その走者を見ても、なんでみんなしてあんなに真面目にやっているのだろうかと思うぐらいで、暇つぶし程度に見るつもりだった。


パァン!


ピストルの音が鳴って一斉に走者が走り出した。

私が砲丸投げをしている場所はスタート地点から見ると、第三コーナーの辺りだった。

走者が居なくなった場所にゴールテープが張られているのを見ると、競技は一周回らなければいけない女子400M走のようだ。

去年、何も知らない私はこれに参加したのだが、あれは一番キツイ競技だ。ほとんど全力疾走で走って大きなトラックを一周しないといけないのだ。死んでしまう。

真面目に走り終わった時には満身創痍でゲロゲロ言いたい気分だったのを覚えている。

そんな哀れな競技に全力で挑んでいると思われるトップの走者が、第二コーナーを曲がって私が見ている第三コーナーに近づいてきた。

その走者が早いのか、他の走者が遅いのかわからないけど、ぶっちぎりの一位で近づいてきた。

だんだん近づいてくるにつれて走者の顔まで見えてきた。先頭の子を見てみるととても綺麗な顔に汗を浮かべて、長い黒髪を後ろで一つに束ねて、クラスカラーの緑のハチマキを頭に巻いて走っていた。

誰だろうと思って、通り過ぎる時にTシャツの胸元に縫いつけられている名前に目を向けようとした瞬間、その走者の人とバッチリと目があってしまった。

思わず名前を確認するのも忘れて固まっていると、隣に座っていた同じ競技の人に肩を叩かれた。


「次、本田(ほんだ)さんの番だよ」

「えっ? あっ、ごめんごめん」


そのまま私の砲丸投げの番が来て適当に砲丸を投げた。



無事、長かった競技大会も終わり現地解散となった。

同じクラスの友達の田中夏美(たなか なつみ)菊池百恵(きくち ももえ)の3人で一緒に近くの地下鉄の駅まで歩いていこうとしていた。

その時、後ろから呼び止められた。


「本田さん!」

「え? 私?」


誰かと思って振り返ってみると、400M走で先頭を走っていた人だった。

あの時と違い、髪は下ろしていてハチマキもしていない。あの時も思ったことだけど、とても綺麗な人だと思った。


「えーと、何?」

「あっ、えーと、あの時私のこと見てたからちょっと気になっちゃって・・・迷惑だった、かな?」


こんな綺麗な人に迷惑かと聞かれても断る理由がないので、首を横に振る以外に道は無かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると感極まって泣いてしまうかもしれません。


今回は説明口調でお送りしましたが、次回からは柚子目線でお送りしていきます。

これからもよろしくお願いします。


では次回もお楽しみに!

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