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第8章 都市始動 周辺地域編(その2)

 同時期、リーメシア州、コロニア・リーメシア市長室


 市長室には、都市の行政を司る各長官達と共に、都市参事会の有力議員達が集まっている。

 その顔はどれも晴れやかなものとは言い難く、市長などは執務机にかけたままあからさまにしかめっ面で額を揉み込んでいた。


「市長、治安の悪化が著しく、最早我々だけでは対処できません。都市内のみであればともかく、街道や周辺村落まではとても手が回らないのです。」


 治安長官が苦しげな声を出したが、皇族が任じられている為、リーメシア州の総督代行を兼ねて務めるパーンサ市長は反応を示さない。

 続いて商工長官が口を開いた。


「明らかにシルーハのものと分かる盗賊もちらほら見受けられます。」


「シレンティウムの影響か・・・」


 そこでようやく市長が口を開く。

 最近東照の物品がシレンティウム経由で輸入されるようになった反面、海路シルーハ経由で輸入される量が減っている。

どうも東照が以前の値上げ交渉でやり込められたことを根に持って、流通経路をシレンティウム経由へと振り替えているらしい。

 嗜好品主体の東照貿易は、物自体の量がそれ程多くない為、陸路であろうと海路であろうとそれ程手間はかからない。


 それにシルーハ経由にせよ、シレンティウム経由にせよ、このコロニア・リーメシアを通り、物品は帝都方面へと運ばれるので、帝国側の商人や流通業者に不利益は無い。

そしてシレンティウム経由の方が東照物品は量も多く価格も安い。

 シルーハ商人のように足下を見て交渉してくるわけでも無く、シレンティウムの金髪の商人達は良心的であったので、むしろシレンティウム経由を歓迎すべきだと商人達は考えていたのだ。

 おかげでコロニア・リーメシアの町は好景気で湧いており、パーンサ市長としてもその意見を汲み、今の体制を維持するつもりであった。


 そんな中で専ら不利益を被っているのはシルーハの商人達。

 シルーハから入る船の商品は東照物品に代わって質の良くないシルーハの麻布や草茎紙が増えている。

 それらとて需要が無い訳では無く、帝国内で十分売れる品物であったが、高級志向の東照物品に比べれば品質や利益の面で劣る事は否めない。

 シルーハからすれば今までの良好な関係を無視し、帝国側が自らの利益を鑑みて、東照と直接交渉をして流通経路を変えたように映っているのだろう。

 ここ半年、東部国境周辺において度々シルーハと帝国間で小競り合いが起きているのもこのことと無関係では無く、リーメシア州としては頭の痛い問題であった。


「ユリアルス城の者共は何をしているのだ?」


 都市参事会議員の1人が不満たっぷりに言うと、治安長官が心苦しそうに口を開いた。


「後詰の部隊が居なくなった為に、城から動けないのです。シルーハの国境守備隊も盛んに挑発を繰り返しているようで、知らせが帝都へ行っているはずなのですが、返答はなしのつぶてだそうです。」


「なんと・・・それではリーメシア州に軍は居ないも同然では無いか!」


 治安長官の回答に愕然とする都市参事会議員。



 ユリアルス城はセトリア内海沿いの隘路に設けられた帝国側の砦で、かつては東照を激闘の末破ったリキニウス将軍が活躍した古戦場でもある。

 その後勢力を後退させた東照と、戦死したリキニウス将軍の後任を送れなかった帝国に代わって南から進出してきたシルーハ王国がこの周辺一帯を制圧した。

 文化的にはセトリア諸国に入る地域であったが、その後も帝国は本格的な進出を出来ないまま現在に至っている。


 そのユリアルス城には帝国東方管区国境警備隊と、かつてリキニウス将軍が率いた帝国第三軍団が入っているが、いわば東の抑えはこの部隊だけになってしまった為に、動けないのである。

 パーンサ市長は遂に頭を抱えた。




 北方の英雄王アルフォード王が名も無き群島嶼出身の辺境護民官に討ち取られ、町は湧上がったが、好景気と高揚感に沸いたのも束の間、軍が食料や物資の調達と徴発を始め、あれよあれよという間に、コロニア・リーメシアのみならず、帝国東北の要であるはずのリーメシア州全体から帝国軍の姿が無くなった。

それと呼応するように増え始めた盗賊や山賊、最近は何と海賊までが周辺地域を騒がせ始めている。

 市長が常駐しているような大規模な都市には警備隊や治安官吏がおり、いくら大人数になろうともおいそれと賊如きに引けは取らないが、村落や小さな町はそうはいかない。


 盗賊討伐や治安回復の嘆願はコロニア・リーメシアへ毎日のように届いており、ここ2、3ヶ月で急激に治安が悪化したことを如実に示していた。

知り合いの市長に連絡を取った所、何処も同じような情勢らしく、良い方策は無いものかと逆に相談されてしまう始末である。


「先日も北方辺境関所のアダマンティウス軍団長へ治安維持の申し入れを行ってみたが、管轄が違うとやんわり断られてしまった。有事の際の出動は、辺境護民官と相談の上応じると言ってくれたが、辺境護民官は帝国領域内に一切の権限を及ぼせないから、期待は出来ない。」


 その時のことを思い出したのか、パーンサ市長の眉間に付いたしわが一層深くなった。

 市長の言うとおり、広汎で曖昧かつ強大な権限を持つ辺境護民官は国境を越えた時点で全ての権限を失うとされている。


 辺境護民官の権限とは、あくまで帝国の領域外における裁断権なのだ。


「・・・東部国境の情勢も不安定だというこの時期に、どうして軍は南方遠征などと言う無茶を・・・」


「今の軍閥に国内の情勢が見えているとは思えない、あるのは更なる領土拡大による虚栄心だけだ。」


「国境警備も覚束ない軍に存在意義など有るのか・・・」


「南方大陸侵攻など・・・また、どっちつかずな皇帝陛下の悪い癖が出たのだろう。」


 行政官や参事会議員が口々に不満を述べる。


「・・・帝国はもう草創期を過ぎてしまった、帝国に大陸の西を制したかつての勢いは無い。今は現状維持と再構築の時代に入りかけているのだ。それを理解できずにいる者達がまだ帝国にはたくさん居るということだ。」


 以前、シレンティウム経由の東照交易策を支持した商業者組合長の都市参事会議員が最後にそう言うと、パーンサ市長が暗い顔を上げた。


「被害に遭っている町や村には悪いが、帝都へ訴状を送る以外、兵をまともに持たない我々にできる事は無い。直近で自由に動かせる最大の軍を持つ辺境護民官とはよく連絡を取っておこう。そうすれば万が一の際には援助を請うことも出来るだろう。」


「・・・万が一というのは、隣国の侵攻を差しているのですか?」


「可能性が、無いとは言い切れない以上、最悪の事態に備えるのが上に立つ者の役目だ。心構えはしておいて欲しい。」


 別の参事会議員の言葉に、パーンサはこめかみを揉みながら応える。

 誰もが暗く沈んだ顔をしていたが、これは現状考えられないことでは無い為反対意見は出なかった。


「分かりました・・・辺境護民官殿へ親書を送りますか?」


「ああ・・・要望と併せてこちらの窮状を伝える文面にしておいてくれ。」


 行政長官の質問に答えるパーンサ市長。

 そして、行政長官が一礼して部屋を出て行くと大きくため息をついた。


「動揺が動揺だけで終われば良いが・・・」


 間もなく冬が終わる。

 しかし、帝国の冬はこれから来るのだ。

 一端の政治家として、また行政官吏としてそれをひしひしと感じ、再びパーンサ市長はため息をついた。




フリンク族の城邑・ハランド、族長館



「それで、ハレミアの蛮人どもを引き込むというのか?」


 ダンフォードと相対しているのは、片眼を斬撃の跡で潰した老人。

 しかしその体躯は顔以外にその男を老人と断じる術が無いほどの隆々とした筋肉で覆われており、椅子からはみ出んばかりの巨体と相まってただならぬ威圧感を持っていた。

 ダンフォードが首を縦に振り言葉を発する。


「そうだ伯父上、そうすればフレーディアどころかシレンティウムも我らのものだ。フリードに代わってフリンク族の時代が来る。」


 ふんと、鼻でダンフォードの言葉を笑い飛ばし、膝へついていた肘を戻し、その男、フリンク族長のグランドルは椅子へ深く背を沈め、徐に口を開いた。


「そうしてお前はフリードの王となるのか?・・・それ程上手く事が運ぶものか。」


「ハレミア人どもの武力をよく知っているのは伯父上だろう?」


「それが御し難いこともな・・・馬鹿で知恵の無い蛮人と侮ることはできん。うかうかしていると、後ろにいるわしらに討ち掛ってくるような見境の無い連中だ。」


 ダンフォードの言葉に姿勢を変えること無く、グランドルは答えたが、ダンフォードの言葉は尚も続く。


「だからこそ使いようがある、あいつらを誘い込んでフレーディアへぶつければ、裏切り者のベルガンなど一蹴できるし、後詰めに出て来た辺境護民官を打ち破って王冠を取り戻すことも出来る。」


 その言葉に苦笑を禁じ得ないグランドルであったが、可愛い甥っ子のことである、自分に降りかかってくる話でも無いので、やらせてみようという気になった。

 上手く甥が政権を回復すれば、フリードの支族であるフリンク族ももう一段上への地位向上が果たせるであろう。


 フリンク族は大昔にクリフォナムへ寝返ったハレミア人の一派と言われており、文化や言葉のなまりは既にクリフォナムのものであるが、戦士達は大柄なクリフォナム人の中でも取分け大柄な者が多く、代々優れた戦士を輩出してきた。

アルフォードはその武勇を当て込んでフリンク族から妻を迎え、更には特別に貢納を免除して、北のハレミア人に対する防御を一手に担わせていたのである。

 

「・・・分かった、連絡を取ってやろう。しかし、その後の交渉はお前が責任を持ってやるのだ。わしはこの件には関知せぬ、好きににやれ。」


「・・・恩に着る!」


 ようやく言質を取り、ダンフォードは愁眉を開いた。

 これでハレミア人との交渉さえ上手くいけば、反撃の糸口がつかめるのだ。



 ハレミア人は、北方辺境の更に北の極北地域に住む真性の蛮族であり、戦いの時に鎧や衣服を着けない事で有名である。


 粗末な剣と槍で武装し、その巨躯をいかして力押しの苛烈な戦いをすることで知られており、帝国から蛮族と呼ばれるクリフォナム人やオラン人から、更に野蛮だと恐れられていた。

 文字を持たず、口伝で部族の歴史や記録を残し、農業を営みはするものの粗放的でとても自分達の食料を賄えない為に度々南下して他部族の村邑や都市を襲う。

 帝国とは接触が殆ど無く、金銀を知りはするが利用せず、馬に乗らない。

クリフォナムの英雄王アルフォードが度々このハレミア人を討伐しては討ち破り、クリフォナムの北の安全を確保しなければならなかった程の存在である。

 クリフォナム人とは不倶戴天の敵同士であり、今まで共闘したり友好関係にあったことは一度も無い。

 しかし、その常識を覆し、ダンフォードは10万とも20万とも言われているハレミア人の戦士を北方辺境へ呼び込もうとしているのだ。


 ダンフォードが館から出ると、外は雪がちらほらと舞っていた。


「雪か・・・」


「ダンフォード様。」


 護衛の戦士達が近寄ってきた。

 退却の途中、アルマールやアルゼントの族民達から奇襲を受け、数を大幅に減らし、またダンフォードらを見限って立ち去ってしまった為、ダンフォードが率いているのは今や1200名程の戦士だけ。

 妹と弟は辛うじて付いてきたが、既に諦めの境地で余り積極的に事を起こそうとしない。

 唯一フリンク族だけが母親の縁で受け入れてくれたが、それ以上の援助は無く、他部族に援助を請う使者を送ってもみたが、その返事ははかばかしくなっかった。

 フリード族は軒並み新たな北の英雄であるハル・アキルシウスの武力とアルフォード王から授かった王位を恐れているのだ。


 ばかばかしい、フリードの族民ですら無い者がどうして北の地を統べることが出来るのだ。

 正当な王の血を引く自分こそがその地位に相応しい。

 今は勢威を失っているとは言え、ここでくじけては終わりである。

 幸いにもまだ付き従ってくれる者達も居る、伯父の援助も十分とは言えないが受けられる、そして、飢えた野獣のごときハレミア人が動けば、動かせさえすれば、まだ逆転の目はある。


「館へ戻るぞ。」


 それだけ言うと、ダンフォードは護衛戦士を連れ、降りしきる雪の中を与えられた館へ向かった。





東照帝国西域州・塩畔、西方府庁舎


 石造りの建物が林立する塩畔の街並みは、東照の都市計画に沿った碁盤の目状の町作りが為されており、東照風の三角屋根には瓦が敷き詰められ、破風が設けられている。

 くっきりと区切られた街路や街路樹は、西方のものとそう変わりないが、建築物は独特で東方の文化的影響が随所に見られた。

 大陸のほぼ中心に位置する塩畔は、東照帝国が治める領土の最西端、西方府の首府として栄え、かつては軍兵10万を常駐させていたが、それも昔の話。

 本拠地である大陸東岸に興った兵乱や、その南方で旗揚げした新興国に押され、東照帝国もまた往事の勢いを失っている。


 今はシルーハとの交易路としての位置付けが大きく、逆に西方の文物を東照本国へ送る中継地点として栄えている町で、かつての軍事都市の面影は無い。

 その塩畔の北端に設けられた西方府の庁舎へ、東照の官服を身に付けた役人達が慌ただしく登庁し始めていた。

 西方帝国の廃棄都市へ城市大使として赴任した介大成からの手紙が届いたのである。




「ほうほう、まあ、あの寡兵でよう勝ったものじゃ、こやつら、なかなかやりよる!」


 伝令使から渡された介大成からの手紙を開き、“匙錬丁宇務(シレンティウム)戦勝”の文字に行き着くと、赤い東照風の前袷服を身に着け、帯を絞めた男は、でっぷりとしたその腹部をぱんぱんと叩きながら感嘆の声を上げた。

 手紙には戦勝の事実だけで無く、その作戦や指揮官の能力、兵の資質まで記されており、介大成の観察眼が人並み以上のものであることを示していた。


「黎盛行都督。」


「何じゃ?」


「他に何か言ってきておりませぬか?」


 楽しそうに介大成の手紙を読みふける都督に、しびれを切らした役人の1人が声をかける。

 都督とは、東照の官職の一つで、州をいくつか束ねた地域を治める役人である。

 西方府は配下に州が3つ有るが、いずれも人口が少なく小規模である為、帝国の州総督にあたる州牧を置かず、黎盛行が都督として3州を治めている。

 ちなみに都督に当たる官職は帝国には存在しない。


 その黎盛行、役人から言われて鷹揚に頷くと、手紙を読み直し始めた。


「おおう、そうじゃな・・・うむ、これかのう?なになに・・・おっ?」


「何とありますか?」


「おおう・・・ううむ・・・なんともはや・・・」


「・・・」


 この人はいつもこうだ。

 物事を楽しい方向へとらえようとする悪い癖がある。

 面白そうに言葉を発しつつも、肝心なその中身を言わない事に役人達の苛々が募ったのを察知したのか、ようやく黎盛行は中身へと言及した。


「介大成の奴め、シレンティウムへ土産をやれというてきたわい!」


「土産?ですか。」


 頭に疑問符を浮かべる役人達。

 抽象的な言い方をする黎盛行の術中に嵌まっているのだが、生真面目な役人達は土産と言われてもぴんと来ない。


「そうじゃ、我が東照帝国の官位と官服、それに戦勝を祝う使者を派遣せよというてきたのじゃ!」


「それは・・・!」


「うむ、まあ、西方府の役職であれば、やれんことも無いんじゃが、さすがに異国人へほいっとやれるものでは無い、急ぎ帝にお伺いを立てよ。」


 絶句する役人を余所に、黎盛行は楽しそうに笑いながら言った。


「そんな簡単には・・・無理だと思いますが。」


 指示を受けた役人が顔を青くしてこともなげに言った黎盛行へ進言する。

 しかし、黎盛行は意に介した様子も無く手を振ってその役人を追いやった。


 黎盛行が手にしているその手紙には・・・


匙錬丁宇務(シレンティウム)の盛況さと殷賑振りは近隣に並ぶもの無く、反抗勢力は今のところ取るに足らず、新たな北の英雄の誕生に北方蛮族は軒並みその膝下へ屈しつつある。

 経済政策にはかつて帝国で官吏として辣腕を振るった者が登用され、その農商工生産や施策に弾みが付いた。

 帝国は南方へ侵攻する模様であるがそれを察知した司留張(シルーハ)の動きが最近活発化してきている。

 司留張(シルーハ)の目的は我が西方府か帝国東部諸州の何れかは不明なるも、帝国の都市でありながらも北方蛮族の軍兵を自由に動かせる匙錬丁宇務(シレンティウム)を東照へ取り込めば、西方経営が安定するだけで無く、司留張(シルーハ)への牽制ともなり、更には東照本国を脅かす新興国への援助にもなる事は間違いない~


 介大成の手紙には以上の通り、その理由が述べられているのだが、いたずら好きの黎盛行はその事については触れないでいた。


「まさか?・・・介大成の言葉を鵜呑みにするのですか?異人へ官位などもってのほかです!」


「何をゆうとる、前例が無い訳では無いじゃろう?」


棒を呑んだような顔で悲鳴を上げるように反発した役人を窘めるように黎盛行が言う。

 確かに、蛮族や異国の王を東照の役職へ封じ、あるいはその王位を認めて援助を与え、更に敵対的な夷狄に対処したと言う例は、東照において枚挙に遑が無い。


「しかし・・・」


「お主は帝国の官吏に対しては前例が無いと言いたいのじゃろうが、そうは言わせん。秋留晴義とやらはフリードの王位を継承しとる。いわゆる蛮王じゃ。良いからつべこべゆわんで、さっさとせんかい。それから東方郵便協会の局長を呼んでくれ。」


「は。」


「こっちは介大成本人からの要請じゃ、シレンティウムに東方郵便協会の出先を設置して、通信の便宜を図って欲しいと言ってきた。」


 なおも言い募ろうとする役人を強引にやり込め、別の役人に黎盛行は指示を下した。


 東方郵便協会は西方郵便協会と並ぶ歴史有る郵便協会である。

 設立自体は東照帝国が行ったが、現在の運営はその手を離れ独立性を保っている。

 しかし、その成り立ちの為か東照帝国の指示や依頼については無条件で引き受ける為、西方郵便協会と連携はあまりしていない。

 せいぜい大陸の東方と西方の間で郵便の遣り取りがある時、引き継ぎ依頼をする程度である。


「まあ、今後交易で必要となってくるでしょうし、それであれば問題有りません。」


「わかったらはようせい、シレンティウムは遠いぞ!」


「は。」


「おお、それから・・・お主!」


指示を受けた役人が慌ただしく出て行くと、黎盛行はまた別の役人を呼びつけた。


「何でしょう?」


「シルーハがなにやら怪しげな動きをしとるようじゃ。やつらの様子を探ると共に兵を集めておけ。」


「了解しました。」


役人が再び慌てて出て行くと、黎盛行はにかっと笑みを浮かべた。


「介大成の奴め、やりおるわ。シレンティウムもわしの見込んだとおりじゃ、こりゃ面白くなってきたわい!」



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