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黄金の剣とNo.7

アルトの剣が夜空に輝く――。

守るべき人を背に、彼は正体不明の暗殺者・No.7に立ち向かう。

黄金の光が闇を切り裂く夜、運命の刃が交わる。

アルトと暗殺者、両者の剣がぶつかり合い火花を散らす。アルトは私を背に庇い暗殺者からの攻撃を受け流している。

すると、暗殺者がフフッと上品に笑い出した。


「こんばんわ、貴方とってもいい。きっと将来は立派な剣士になれたでしょうに…可哀想。代わりと言ってはなんだけど私の中に刻み込んであげる。」


アルトは不愉快そうな顔を隠しもせずに女を睨みつけた。


「あぁ、そうかい、嬉しい言葉だけど今は遠慮しておくよ。それにしても君みたいなお喋りな暗殺者は生まれて初めて会ったよ。」


その言葉を聞いて女は更に口を歪め、眉を下げ笑い出す。


「ウフフ、だって貴方とはもう会えないじゃない。今お話しなきゃ死ぬまで出来なくなっちゃうでしょ?」

「随分と、自分の腕に自信があるようだね…!」


剣と剣がぶつかるたびに金属音が耳を刺す。アルトの肩が少しずつ後退し、額に汗が光る。私は胸の奥が痛くなるような感覚に襲われた。

――何とかしなきゃ、アルトを失いたくない。私が咄嗟にした行動は助けを呼ぶことだった。


「バトラー!!何処にいるの!?……バトラー?」


いくら呼んでも反応が来ない。どうしても最悪の未来を想像してしまう。目の前の暗殺者の動きをみるたびにあり得るのではないかと思ってしまう。顔が青ざめていくのが自分でも分かった。


そんな私の様子を心配してかアルトが一瞬、こちらを見て口を開いた。


「……シグレッ!今は自分に集中しろ!!…戦場で他人のことを心配するな、足元を掬われるぞっ!」


次々とくる攻撃を受け止めながら攻撃の隙を伺っているが、相手は一切の隙を見せない。アルトの足が床を擦って後ろに下がっていく。


その光景に女は恍惚とした表情を浮かべた。


「あぁっ……すごくかっこいい。勝てないと分かっていても逃げないのは後ろの彼女を守るためなのね。まるでお伽噺の王子様みたい…!」

「不愉快だっ!!君はそれ以上喋るな!」


それに、と吐き出すように呟いた。


「誰が、“勝てないと分かってる”だって…?」


重い声が辺を静寂に導いた。いつもの優しい声ではなく冷え切った声。アルトとは到底思えないような声に、今の声は赤の他人が発したのではないかと錯覚してしまう。


その声に怯んだのか女は瞬時にアルトとの距離を取る。

――だが遅かった。

アルトは1秒も経たずに一瞬で間合いを詰め、剣を持つ女の手を斬り落としたのだ。彼女の左手からは血が少量零れ落ちた。

そして落とされた手はコツンっと軽い音を立てて床に落ちた。


直後に、ザザッと脳に霞がかかった気がした。

手が落ちる軽い音と共にゴツンっと鈍い音が聞こえた。

嫌な予感がした。

ギギギっと古びた玩具のように首を動かし、音の方向を見る。そこにあったのは、見覚えのある髪と、閉じられた瞳が床に落ちていた。赤い血が水溜りのように大きくなっていく。


思わずその場に力なく座り、叫んでしまった。身体が震える。アルト、アルト、アルト、アルト。さっきの映像が脳にこびりついて離れない。

顔に生暖かい物が流れる。それが血かたまた涙なのか、錯乱している頭では分からなかった。


「シグレっ!!」


その声で、世界が弾けた。

床に広がっていた血は消え、冷たい石畳だけが残る。落ちていたはずの髪も、閉じた瞳もない。

代わりに――

女の鎌が、アルトの首元へ振り下ろされようとしていた。

さっき見た光景の、直前。ここから先を、知っている。同じ未来だ。

息が詰まる。言わなきゃ。

でも――

喉が凍る。

未来視と現実の狭間が分からない。これもまた、未来なのではないかと疑ってしまう。

さっきの映像がフラッシュバックして脳を体を、口を震わせる。


「……避けて!!」


それだけを、振り絞るように叫んだ。

アルトが反射的に身を引く。

鎌が空を裂き、石を削る。

ほんの数本、金色の髪が宙に舞い落ちた。


女の瞳が細まる。


「今のは……偶然?」


シグレの膝はまだ震えている。

さっき見た。確かに見た。首が落ちた未来を。

「……生きてる。」

自分に言い聞かせるように、呟いた。 


「……残念。仕留めれたと思ったのに、お嬢さんに邪魔されちゃった。命令にはないけど、厄介そうだし貴方から殺そうかしら。」   


私を見ながら舌舐めずりをした。見定めるようにジッとこちらを見つめてくる。


その気分が悪くなるような視線とさっき見た映像を思い出して身体が震え目に涙が滲んだ。

するとアルトが前に立ち、後ろの私を隠すように片腕を大きく広げた。


アルトは一歩、前に出た。

いつもより背中が大きく見える。

「俺から三つ、言わせてもらう」

声は静かだった。

「彼女の前で喋るな。不快だ。」

まるで世間話でもしているかのように淡々と話す。

「彼女の視界に入るな。目障りだ。」

ほんの少しだけ間が空く。

「……それと」

女をまっすぐ見据える。

瞳から温度が消える。

「彼女に触れてみろ。斬り刻む」


女が頬を赤らめ笑う。


「ふふ、いい顔。壊したくなるわね。」


彼は苛立ちを隠すことなく舌打ちをし、地を這うような声で「殺す」と呟いた。


いつもと違う様子のアルトが少し怖くなって広げていない方の手に縋るように掴まった。


「…アルト。」


確認するようにゆっくりと呼ぶ。

すると、顔だけをこちらに向けて、口を少しだけつり上げいつもの見慣れた笑顔をしてみせた。


「すまない、怖がらせて。でも、もう大丈夫だ。」


そう言うとアルトの剣から光が溢れ出す。まるで昼間なのではないかと思うほどに黄金に光り輝いていた。

アルトは胸に構えた剣をしばらく見つめ、前に突き出す。


「先祖代々伝わる秘伝をここで使うことになるとは思いもしなかったよ。敵ながらあっぱれだね。最後に、お前の名前を聞いてもいいかな?」


女はキョトンと目を丸くしたがすぐに薄い唇を歪めて目を細める。


「あらあら、さっきまで怒っていたのに…。忙しい人ね。いいわ、私の名前教えてあげる。」


鎌を握り直し、刃をこちらに向けてくる。それを月明かりが照らし青白く光っていた。


「私は“No.7”」


芯とした声だった。まるで機械のような、冷たい声。


問の答えを聞きアルトが呟く。


「No.7、か。」


アルトは小さく息を吐いた。


「覚えておこう。」


その瞬間、地面が爆ぜた。黄金の閃光が一直線に走る。ライオンの咆哮のような音が辺りに鳴り響き反響する。

遅れて、衝撃音。

視界が白に染まった。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話は、アルトとNo.7の戦いの行方、そしてアルトの正体が明かされます。

面白いと思ってもらえたら、ブックマークやコメントで応援してもらえると嬉しいです。

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