運命の出会い
昨日の放課後、私は異世界に巻き込まれた。
倒れているローブの人物――その背に映った金色の光。
何かが、動き出す予感だった。
「な、なんだお前…!!」
灰色の男の声だ。驚きからか少し声が裏返っている。声の方向を見ると男の仲間がローブの人物により押さえつけられていた。
ローブの人物がゆっくりと立ち上がる。その拍子にフードがずり落ちた。
その光景に思わず息を呑む。そこには太陽光を反射し黄金に輝く金色の髪に深い海のようなつよい意志の瞳があった。まるでお伽噺の王子様のようだ。
そう思い見惚れていると金髪の男がこちらに近づいてくる。私のそばで跪き大丈夫かと聞いてくる。バラが散っているのではないかと錯覚するほどのイケメンっぷりだ。あまりの美形に言葉が出てこない。顔が赤くなるのが自分でも分かる。そんな私の様子に彼は少しだけ困った顔で笑った。
「女性に手を出すとは男の風上にも置けないな。」
そして安心させるような明るい表情でこちらに振り向く。結い上げた金髪が、振り向いた拍子に揺れる。
「すまない。もう少し早く動けていれば君が痛い思いをしなくて済んだのに…。あとで謝礼をさせてほしい。それから安心してくれ。もう大丈夫だ。」
そう言うとニパッと効果音が付きそうなほどの笑顔をこちらに見せ再び灰色の男に向き直った。
灰色の男は突然の反撃に怯んでしまったようだ。ガクガクと足が震えている。すると後ろからナイフを取り出し金髪の男に飛びかかった。
もちろん金髪の男は丸腰である。しかしそんな力の差があるとは思えないほどあっけなく金色は灰色を抑えつけた。抑えつけられた拍子に頭をぶつけたのか灰色の男はだらんと手を投げ出した。失神したようだ。
その様子に残りの一人は怯えたようにひぃと情けない声を出し、慌てて2人を抱え逃げた。
呆気なさに失笑を漏らす。すると金髪の男も釣られたのかふふっと息を吐きだし笑っていた。しばらくして金髪の男が口を開いた。
「改めて君に礼を言わせてほしい。ありがとう、助かったよ。何か欲しいものはないか?何か礼をさせてほしい。」
そう言うと深々と頭を下げた。大したことはしてないと慌てて顔を上げるように言う。
「やめてやめて、そんな頭を下げられるようなことしてないから…!それに欲しいものなんてないよ」
そう答えると男は納得がいってないようだ。でも、しかしと食い下がってくる。
「何かないのか…?例えば宝飾が欲しいとか新しい洋服が欲しいとか。何でも大丈夫だ!!じゃないと俺の気が収まらないんだ。」
グイグイと顔を近づけて言う。何で?どうしてだ?と何度も問いかけてくる。正直、少し鬱陶しい。
そんな茶番をしていると突然、頭が割れるように痛くなった。突然うめき声を上げ苦しみ出す私に驚いたのか金髪の男は辺りをうろうろしながら大丈夫か?と聞いてくる。だがその言葉に反応できるほど余裕は残ってなかった。痛い。その感情が脳内を占めた。
その場にうずくまる。だんだんと頭痛だけではなく目眩がしてきて息が荒くなる。刹那、脳内に映像が流れ出す。
そこには見覚えのある金髪の男が光を弾き輝く銀髪の男によって体を剣で貫かれていた。剣を伝って血が流れる。
そのまま剣が抜かれ金髪の男は重力に従って倒れていく。銀髪の男は吐き捨てるように
「…信じていたんだ。俺は、信じていたんだよ…!!アンタが、まさかてめぇがそんなクソったれだったとは……これも、運命だっていうのかよ……!」
と言った。するとガザッ、ガザザッとノイズのようなものが映像に入り込む。視界が真っ赤になり何も見えない。
そしておい!大丈夫か!?と、呼ぶ声によって意識を戻される。
あまりにも衝撃的な映像であった。夢と疑うにあまりにも鮮明すぎた。それに私はあまり想像力豊かではない。こんな妄想はできるはずがない。
だが現実だと言うなら今目の前で大丈夫かとしきりに聞いてくる男はなぜ生きている。疑問は募るばかりだ。しかしどうすればいいかは不思議となんとなくわかった。
「ねぇ、アンタは私にお礼をしたいんだよね?私は一色 時流あなたは?」
金髪の男はとっても驚いた顔をしていた。 ついさっきまで具合を悪そうにしていたやつが急に名前を聞いてきたのだ驚くなという方が無理な話だ。
しかし男はすぐに自分の要求が通ったのだと理解し名を名乗る。
「俺の名前はアルトだ!どんなふうに呼んでもらっても構わないよ。それと…家名はヒミツで」
そう言うとウインクをして口を歪ませた。アイドルのような爽やかな笑顔である。その笑顔は私の心を落ち着かせた。
「そう、…アルト。私が欲しいものは一つよ。」
息を吸い込み意を決して宣言する。
「私はあなたが欲しい!!」
この人は死んでしまうと私には奇妙な確信があった。彼は絶対に死なせないと心に強く誓う。運命はまだ、未定なのだから。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話からが本番です。
面白いと思ってもらえたら、ブックマークやコメントで応援してもらえると嬉しいです。




