第4話 幕間 4歳の私 どこにも居場所がなかった アンナ目線
私はいつどこでどうやって産まれたのか?
残った記憶を辿っても、父親は出てこない。母親はロシア人の両親から産まれた日本人で、私が物心着いた頃から夜の世界の人だった。
朝私が起きると、母親は夢の中、なので気付かれないよう部屋の中で過ごすか、そっと外へ出るかだった。
しかし外へ出ても行く場所がない。母親の店が部屋を借りていた団地に居たけど、団地の中の公園は日本人のママ友軍団が聞えよがしに
「水商売の子よ。しかも外人、悪さでもされたら怖いわね 帰って」
と言われるから入れない。
実際昔水商売の子供がママ友軍団の子どもと喧嘩になって、怪我をさせたり、水商売の親とママ友の諍いも耐えなかったそうだ。
それで自然と水商売の親子は公園から締め出された。
公園の外には神社にくっついた公園も有ったけど、そこも同じようなもの。
どうやら外人は日本では悪いことをするとか、色々言われ憎悪の対象になっていたよう。
ちなみに私の国籍は日本、髪の毛は黒いけど、瞳は碧色、肌の色はだいぶ白いから、日本人の子に交じると浮くのがよく判る。
しかも私は日本語しか話せない。ロシア語は全くだめ。
だから団地の軒先くらいしか外の遊び場はなかったけど、母親のお店の他のロシア人の子達がいると、排除される。ツリ目のアクションで
「Уходите!(あっちへいけ)」
「Уродливые глаза!(ブスツリ目!)」
何言ってるのかわからないけど、すごい剣幕で言ってくるから、歓迎されてないと思った。
ロシアの人と関わるのは嫌。だって見下すか、睨まれるかだから。それは日本のママ友軍団も同じ。
だからいつも、玄関前で軒先を覗いて居なくなったら行くか、諦めるかだった。
ある日、公園も神社も自分の塔の軒先もだめで、隣の隣の棟へ歩いて行ったら、一人の女の子に声を掛けられた。
「ねぇ遊ぼう」
一瞬固まった私。だって笑顔で誘ってくるから。そんなの初めてだったし。
恐る恐るその子に近づくと
「私エマ。あなたは?」
「ア、アンナ」
「よろしくね」
「う・・うん」
明るく太陽のような屈託のない笑顔。初対面でうつむき加減の私に声を掛けてくれたエマちゃん。私は気後れして、ついたどたどしい返事をしてしまった。
遊んだ場所はもちろん団地の軒下。彼女も外国人の顔しているから。
「エマちゃんどこの国なの?」
と私が聞いてはやばいと思いながら、恐る恐る聞くとエマちゃん
「わたしフィリピンだよ。ママとかスペイン系らしいよ」
「そうなんだ」
このとき私はフィリピンやスペインがどこかわからなかったけど。ロシアとは違う陽気さや温かみが有ったような気がした。
「アンナちゃんは?」
と聞かれたので
「私はロシアだけど、日本人でロシア語が話せない」
するとエマちゃん
「私も実は日本人なんだ。私も日本語しか話せない」
「じゃぁ私たち同じかもね」
「うん、そうだね。これからも一緒に遊ぼうね」
しばらく一緒に遊んだ時間はあっという間だった。
夕焼小焼が鳴ってそろそろお店に行く時間だから、明日また遊ぶ約束をして部屋に戻った。
エマちゃんいいなあぁ 私とは正反対で、明るいし
そう思ったのも束の間。私は母親に連れられお店に行く。
あの香水と男の人の欲望と、女の策略が渦巻く戦場へ・・・・・




