第17話 借金取りとその他やばい人種 ピンチな俺達 でそのとき・・・・
マスターとママさんの朝の風景
「今日は俺、工場と他の店まわって、夕方一緒にアパートに行って話そう」
「そうね。お昼届けたら私あの子達の普段着とか買ってくるわ」
「いよいよだなぁ。心してかからないと」
「私たちようやくお父さん、お母さんになるのね。それとね、アンナちゃんなんだけど、戸籍に入れるとき、私の一文字とって安南に変えてほしいけど、どう?」
「おお、それいいな。お前の思いを込めて一文字使うのは大賛成だ。あの子もきっとよろこぶだろう」
「私お母さん頑張るわ。あの子達誰もがみんな羨ましがるようにしたいわ」
「俺はあの子達に色々な経験を積ませて人の幅を広げてほしい」
もう絶対帰ってくんなよあのバカ女。金がなくなったからとか、男を連れ込んだりして。
今日はママさん昼にオムサンドとキャベツと人参、サヤエンドウの野菜畑、フライドポテトを置いて、夕方また来ると言ってすぐに帰った。
「たまごサンドって焼いたのもあるんだね。これすっごい美味しい」
「オムサンドも名物なんだよ。久しぶりに食ったよ、まじでうまい」
オムレツが分厚いから大きく口を開けないと頬張れないオムサンド。俺達顎の関節が外れそうになるくらい夢中で食った。
今日はまだ公園に行けないから、ママさんが買ってきてくれた絵本を読む。ピッタリと寄り添いながら、しばらくして眠ってしまった。
夕方近くに玄関を開けて公園を見たら、いつものママ友軍団じゃなく、タバコを吹かしているやばい人種が。この間の借金取りも含めて3人いる。見た瞬間
「とうとう俺もアンナもおしまいか?」
慌ててそっとドアを締めて鍵をかけたけど、なんか俺凄まじい不安に襲われている。
どうしよう、出なければ居座るだろう、家には電話がない。でもそのときはそのとき。
「アンナは奥で布団でも被って待ってて」
とりあえずアンナを奥にやって俺はスタンバイ。すると呼び鈴が鳴った。息を整え玄関を開けると
「この間はやってくれたな、このガキやぁ、ええっ。金返せこの野郎」
「早く出せよ。母親をよぉ」
この間のと、新手のやつが交互に怒鳴る。俺は一人で上着を着て玄関からわざと表に出る。するともう一人が
「雅さ~~ん。早く借金返してよ。いつまで逃げてるんだよこのこそ泥女が」
「この家の母親はねぇ、子供置いて借金踏み倒して逃げたんだよ~~」
「金返せぇぇぇこの泥棒女ぁぁぁぁ」
あいつら外に向かって吠える、吠える。これは俺の作戦。外に知れたら人が見てくれると思ったから。
相変わらず吠えまくるやばい人種たち。そこへアンナも上着を着て怯えながら出てきてしまった。その時
「通りすがりで騒がしいから来てみりゃ、何子供相手に粋がってんだよ」
って言いながら塾長がやって来た。
「やんのかこらぁ」
一人が塾長に掴みかかろうとすると、もう一人が
「止めとけ、その人この辺じゃかなりの顔だぞ」
「ったく、追い込みってのは本人にかけるもんだろ。親の借金に子供は関係ないだろ。それともあれか、お前ら子供相手にしか粋がれないヒケヒケなのか?えぇっ?」
塾長の迫力に押されてすっかりしょぼくれるやばい人種、俺にすがりついて、棒になってるアンナ。だから部屋で待ってろって言ったのに。しばらく睨み合いが続いて背の高い夫婦とスーツ姿の男性がやって来た。それは・・・・
「随分騒がしいなぁ。子供が怯えてるぞ。人が大勢見てて恥ずかしくないのか?」
「俺等は、こいつの母親の債権回収だよ。返さないなら、親族追い込むのはあたりあえだろ?」
なんかさっきより勢いがない。そこへ
「だから、子供を巻き込むなって言ってんだろうが?怯えてるじゃねぇかよ。警察に通報されてるかもなぁ」
と言って塾長あいつらを完全に包囲。そしてあとから来たのはマスター夫婦と弁護士だった。ママさんはアンナを連れて部屋へ。俺も促されたけれど、この場に残ることに。
「保証人でもないし、ましてや未成年に債務弁済の義務はない、当然俺達にも」
とマスター。続いて弁護士が
「君たちのやっていることは刑法に触れている。、脅迫だ。当然こちらが出ればアウトだな」
「返さねぇんだからしょうがねぇだろ!ここの住所で契約してんだからよ」
と息巻くけど、ちょっとしょぼくなった。そこへ、ドコドコエンジン音を鳴らした青い車がやって来て、降りてきたのはテルさんだった。
「よっ楓雅、アンナ。母ちゃんたちのところへ送っていってやるぞ。うんっ・・・なんだおめぇら、何しに来たんだ?雅の借金なら一昨日でクリアしたぞ。ほれっ」
なんか書類をみせるとあいつら、口をあんぐり。続けてテルさん
「おめぇらんとこの事務所にもきちんと処理は済ませてある。あっすいません、その封筒多分偽物です」
やばい人種とマスターに向かって言った。そして
「そろそろ警察が来るだろう。おめぇら臭い飯でも食ってこいや。まぁ塀の向こうでもやっつけられて、あれだろうなぁ」
と見下して言う。そしてさくらさんも来て
「親方こいつらっす。この間真面目そうな学生からカツアゲしようとして、あたしが止めたら、逃げ出したやつ」
「くっっなんだよお前ら女にも勝てないのかよ。それにお前らこそ、ヘマこいて借金かかえて、追い込み掛けられてるんだって?シノギも出来なきゃ、ムショ出てもどっかに売っ飛ばされて、バラバラにされて豚の餌にされるだろう」
ここまで、言われてタジタジのやばい人種、最初の勢いはすっかりなく、この間の生活保護受給者とおなじくズボンを濡らしかけていそう。
そして遠くからサイレンと赤い回転灯がこちらにやってくる。
「通報がありましたんでね」
「ご苦労さまです。未成年者への脅迫、恐喝、暴行未遂と言った感じです」
と弁護士さん。
「わかりました。刑事課に応援出して、連行します」
そうして覆面パトカーも3台来て、やばい人種は手錠をはめられ、連れて行かれた。太陽にかけろ!なら、ジーンズとかプリンスがぶん殴って、投げ倒して手錠だけど。
そしておまわりさん、俺の近くに来て
「ぼく大丈夫だったかい?」
「大丈夫。誰か来てくれると思ったから、外に出たんだ」
「そうか。よく頑張ったな」
と言って頭を撫でてくれたおまわりさん。そして弁護士さん
「実は詐欺の可能性もあるので、こちらの書類とともに私も参考人として署へ向かいます」
と言って一緒に警察へ向かった。
人気が引いて、テルさん
「行くか、支度してこいや」
「行かないよ。俺達あんな女のところ。もう二度と会いたくない。できれば消えてほしい、もし行くんだったらアイツラの荷物持っていって」
テルさん分かったって顔で
「よっしお前ら2人でやっていくんだな。荷物は持って行く。そして二度とお前らの前に出さないようにしておくよ。それから、おやつ買ってきたから、後で食いな」
と言って、ドコドコエンジン音とともに去っていった。
そして塾長とさくらさんも
「頑張ったなぁ日本男児よ。大和撫子をしっかり護って。偉いぞ」
「ほんとあんたえらいよ。良い旦那さんになるよ。じゃぁね」
と言って笑顔で帰っていった。
二人きりになり、マスターはいつになく真剣な顔で俺に向かって
「楓雅くん、大事な話があるんだ。部屋に入れてくれないか」
「いいよ。行こう」
と言って部屋に迎えた。なんだろうなぁ?一体、まさか俺達いよいよおしまい?
寒さと疲れと不安が一気に出て、部屋に入り込んでぐったりしてしまった俺。
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