第13話 4歳の私 ずっと一緒にいたいから・・・ アンナ目線
初めての公園。2人だけだから、誰にも気兼ねせずにブランコもシーソーも滑り台も心ゆくまで楽しめる。これが毎日できると思うと、また一つ人並みに近づけた気がした。
夕焼け小焼けで、部屋に戻ってマジキュア再放送。私はパン屋さんの真樹ちゃん、和菓子屋さんのあきのさん、お弁当屋さんのなつこちゃんが好き。美味しそうで両親が力を合わせてお店を切り盛りして、いつも見守ってくれていそうだから。
夕飯はレトルトが多いけど二人揃って向かい合って
「いただきま~す」
の合掌で食べられる、そしてここでも妨害を気にする必要はないから、美味しく食べられる。
楓雅くんがふとんを敷いてくれて、おやすみタイムだけど
「ふとんは夢の飛行船。どこかに連れていてくれるんだ。海とか山の近くとか」
「行ってみたい。お月様とかお星さまの近くに」
「よっしゃ。飛行船出発~~」
飛行船は離陸をした、けれど突然隣から怒号の乱気流に。私は恐怖で震える、そこで楓雅くん
「アンナちゃんふとんに潜ろう、で俺に抱きつてしっかりつかまって、そうしたら怖くないよ」
そう言われて無我夢中で楓雅くんに掴まる私。掴まった瞬間、楓雅くんの暖かさに包まれ恐怖が消え去ると同時に、誰にも癒えない背中の傷跡を感じ始めた。
そしてそれと同時に私の中で芽生え始めた楓雅くんへの感情。それは今まで唯一の恋心。ずっと一緒にいたい。だから私も頑張らないとと思った。
しばらくお互いそわそわ楓雅くんも明らかにそうしている。私たちは両想いなのかも、だったらもう離れたくない。ずっと一緒。そして
楓雅くん正座して背筋を伸ばして告白。私も同じようにしてお互い
「よろしくお願いします」
この瞬間今までにないときめきを覚えた私。ふうくんとぴったり抱き合って、見つめ合って長い長いキス。これは永遠の誓いの印。
完全に恋人同士になった私たち。ふれあうたびに心が満ちて、昼の明るい日差しと同じく、これからそうなると思ったけれど・・・・
恋人同士になってから飛行船に乗っても、旅に行ける日は少なくなった。まだ同じ場所にも行けていない。ふうくんの言う 誰もさわれない二人だけの国 なんてなおさら・・・・
だけど朝は目覚めがいい。やっぱお酒や香水の匂いや、脱ぎ散らかした服や下着姿で寝るあの女や連れ込んだ男がいないから、それにふうくんといつも抱き合って一緒だから、よく寝られるようにもなった。
だけど困難はつきまとう。日が増すにつれふうくん時たま不安の表情を見せるようになった。お金や食料のことだろうけど、コワモテの人たちが隣に来たときは、荷物の運び入れや洗濯の取り込みを手伝ってくれたり、さくらさんがコロッケやお弁当を買ってくれ、暖かい服を着せて神社に連れて行ってくれたり、色々な人たちが手を差し伸べてくれるようになった。
食料が満たされても、いつまで続くか判らない。私はどうしたらいいか判らない。
私にできることはなんだろうか?
今日はふうくんが先に眠りについた。パッチリして長い睫毛の瞳を閉じ眠るふうくん。可愛すぎて思わず抱きしめる。そぉぉっと背中を撫でて頭もそぉぉっとほんほんと。そして私は胸にふうくんの顔をあてて
「うぅぅんかわいいふうくん。お腹すいたでしょ?ミルク飲んでね」
ミルクなんて出るわけがない。だから私の心の栄養のミルクを飲んで、穏やかになってね
「今日はなんの味かな?コーヒーかな?いちごかな?バナナかな?一番好きなのは白いのだよね。沢山飲んで元気になってね。大好きだよ、大好き、大・・・・」
うっっごめん私、このこと思い出すと今でも涙が止まらない・・・・・・
何も出来ない私。ふうくんも普通に憧れ、母親の愛情に飢えている。それをこらえて頑張っている。だから出来ることはこれくらい。少しでも落ち着いて穏やかにしてくれたらって。
これを時たまやっても、何もないのかもしれない。だけどこのときはほんの少しでも癒えてくれたら、そう思って・・・・
それから私エプロンをもらって完全にお嫁さんになったつもり。お嫁さんなら簡単に離れてはいけないし、旦那さんをしっかり支えて足手まといになってはいけないと思ったから。
お嫁さん宣言は私の意思表示。
今14歳の私、お嫁さん修行中だけど、毎日色々な経験を積んで、学んで、得てきちんとしたお嫁さんを目指している。お金だけむしり取って何もしない泥棒女は嫌だ。シンマで水商売の母親なんてもってのほか。
お嫁さんの役割は旦那さんが安心して働けるようにすることだろうし。
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