第11話 暖かくも穏やかな毎日 だけど もう終わるかもしれないせんべい布団の飛行船の旅
アンナが来てから3週間くらいだろうか?
ケンカもせず、お互い穏やかに過ごせていはいるが・・・
俺はやはり不安が拭いきれない。食料と金銭の枯渇、いつ引き離されるか、これについては今日かも明日かもしれないし・・・
俺は少し愛想笑いを含めてアンナに接することが増えた気がする。
食事も昼もパン耳が増えたが、仕方がない。それでもアンナは文句の一つも言わずに付いてきてくれる。どうしても離れたくないからだろう。
夜はせんべい布団でアンナと不安を抱いて寝る俺。経験もろくにない子供の俺が思案しても埒が明かないが、し続けるしかなかった。
数日後の昼過ぎ、呼び鈴がせっかちに鳴る。例によってアンナと恋人繋ぎで、玄関に出ると、また違ったお兄さんがいる。お兄さん慇懃無礼に開口一番
「よぉお母さんどこ行った?ええ?」
「知らない」
「嘘つけ、隠してるんだろ?なぁ出せよコラぁ、こっちも忙しいんだ、早くしろ!」
怒りの表情で凄まじい怒号にアンナは怯えて俺の後ろにうずくまってしまった。
さらに
「俺はこういうもんだ」
と言って名刺と封筒を俺に渡す。アンナは俺の後ろですっかり怯えている、なにかつらい過去を思い出すように。そこで俺この場を収めようとしたのだろう。
「本当に知らない。それと俺達この人と友達だから」
と言って塾長の名刺を見せた。するとそのお兄さん
「ちぇっしょうがねぇなぁ。覚えておけよ!このガキャァ」
と捨て台詞を吐いて帰っていった。怪しい名刺となんか重要そうな封筒を置いて。
困ったから塾長の名刺を見せたけど、どうやら塾長恐れられてるみたいだ。やばいやつにも。っていうことは塾長はそれ以上にやばいのかも・・・・・
アンナの様子を見るとまだ少し怯えているよう。もしかするとアンナの家にもあの手のお兄さんの襲撃が有ったのかもと思ったけど、掘り起こすと良くないから、こちらからは尋ねない。
しばらくアンナを抱きしめて落ち着かせる俺。1時間ほどで落ち着き始めたので、公園を見たら誰もいない。
「アンナ公園行こう」
と言うと
「うん行く。着替えよう」
とすっかり落ち着いて、早速昨日の青と赤のタイツにショートパンツ、手袋に帽子でほぼお揃い。アンナまたもごきげん。俺はちょっと恥ずかしい。明らかに丈が短いショートパンツにタイツだもん。
着替え終わると呼び鈴が鳴る。翔太くん親子。そんで今日は翔太くんも可愛らしくタイツ履いている。
「お婿さんとお嫁さん迎えに来たよ」
とアンナまたもやごきげん。4人で公園へレッツゴー。
「まじで2人とも可愛らしいよなぁ。いっそのこと姉妹になれたらいい」
と翔太くんのお父さん
「姉妹って?」
かなり不満な俺。ちょっと不満なアンナ。そこで
「お嫁さんだもん!」
ふくれた真顔で言っちゃうアンナ
「わりぃわりぃそうだったな。本当に良いお婿さんとお嫁さんだな」
すぐに頬が緩んでにっこりするアンナ。それだけ真剣なんだよなぁ。
「翔太くんもかわいいよ。娘さんみたい」
と俺言ったら、翔太くん恥ずかしそう、お父さんは少し嬉しそう。
お父さん俺達3人の写真を撮って大満足。
途中でおやつを出してくれた翔太くんのお父さん、食べながら
「プロレスラーのパンツはタイツっていうんだよ。長いのはロングタイツ。プロレスの始祖力豪山はそうだったよ」
とお父さん目を輝かせて語り、それで俺達裸にタイツのお笑い芸人
「沢頭3時40分みたいでやばいじゃん」
って笑って言うと
「いや英雄だったんだよ。だから今日は翔太にも黒いタイツを履かせた。もちろん君たちみたいに可愛くするためにもね♡」
「それと俺子供の頃試合会場で、防州大触りに行ったら さわるなコラァこのタコ って言って蹴られたよ。すごかったなぁ。昇龍はやさしかったけど」
「ええっまじで?防州やばいんだ。昇龍のほうが怖そうに見えるけど」
と語る翔太くんお父さん。なんか楽しそうだから、一度生でプロレスを見たいとこのとき思った。
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ここまで14歳の俺が語っている過去のこと。ちょっと大人びているとか思われるだろうけど、それは最初の親友翔太親子の影響から。
翔太の親父さん破天荒な小説家で色々と異性関係も有った人だった。
ギャンブルやプロレスネタがメインの親父さん。おちゃらけた感じだったけど、ガチで書く純文学は読み応えがある。だけど学校や大人は読むことを勧めない。
翔太はずっと言葉遣いが大人っぽく、作文の表現は賛否両論だったけど、それを活かし、14歳でラノベ作家としてデビューした。
俺達のことをネタにラブコメを書きたいらしいけど、それは断固阻止。
美しくも悲しくも、淡い思い出はいつまでも胸に置いておきたい、俺とアンナの出会いと絆はそんなに軽々しいものじゃないから
このころ、とあるビルの最上階の住居では、とある夫婦が俺に関すことを話し合っていたようだ・・・・・
「ねぇあなた、雅ちゃんなんだけど、もう10日経つのよ無断欠勤。本店長が電話かけてもずっと繋がらないって」
「あぁその件なんだけど、もう解雇。それと昨日児童相談所と弁護士に話した」
「楓雅くんのこと?」
「そう、承諾を貰わないと行けないけど、育児放棄だからすぐOKだって。児童相談所にも、楓雅くんのことは俺が責任を持つって言っておいた」
「そう、ついにするのね。大丈夫かしら?あの子賢いけど、なんか愛情に飢えて欲しがってそうなんだけど、こっちがなにかしようとすると、聡いから申し訳なさを感じて独りでやろうとしちゃうのよ」
「人の行動に疑念があるのかもな。段階を踏んでそういう関係だけではないこと、まず安心できる存在に俺達がならないと。それと生まれてすぐより、物心が付いた今のほうが却ってやりやすいだろう。説明もしっかりできるから」
「そういう利点もあるけど、気をつけないとね。私たち若くないし、一緒にいられる時間は少ないし、若い子に比べてやれることも限らるだろうし、ギャップもあるから」
「だけど、人生経験が深い分、若い親より伝えられることは多いかもなぁ。それと俺達のまわりには育児経験者も多いから、倣えばいい。たとえ俺達が居なくなっても、丈夫なスネの2本だけでもしっかり育ててやれば、後は独りでもやれるさ。」
「愛情だからって言って、何かを買い与えたり、わがままを満たすだけじゃないものね。しっかり独りでもお天道さまの下を堂々と歩ける子にするようにしつけるのも愛情よ」
「そうさ、手探りになるだろうけど。明日様子を見てきてくれないか?」
「オッケー。差し入れもしないとね」




