第10話 現れない夢の国 二人のひとときは楽しくも儚く
隣の用が済んで洗濯物を取り込み、食料や下着を差し入れてくれた、塾長たち。帰り際
「なんか有ったときこの名刺を見せて、この人と仲が良いって言うんだ」
そう言って自分の名刺を数枚渡された。なんだろう?そして
「ふたりとも離れるなよ絶対に」
塾長は恋人繋ぎの俺達の目を見て、しっかりと伝えてくれた。
バイバイと手を振って帰っていくさくらさんも、きっと塾長と同じ思いだろう
アンナは洗濯物を畳みながら、マジキュア再放送。今日はクリスマスで真樹ちゃんのお店のクリスマスケーキ販売のお手伝いとパーティーの回。
そろそろクリスマスかぁ。だけど金が無いからそれも無理かも。なんか工夫してパーティーの真似事をしなくてはと思案した俺。
そして俺は貰った物を仕舞いながら、残りの食料と金をチェック。500円玉が20枚だったのが、残り10枚。レンチンご飯が今日は5個だったのが、プラス30個、レトルトも5個だったのがプラス20個。
下着は長袖、ソックスが各4枚、ピンク、紫、緑、黄色のタイツとマジキュアのエプロンが各1枚、パンツの方は男女用各2枚、それとニットの帽子に手袋、おそろいのショートパンツ、色違いのペアパジャマもあった。これらの袋にはそれぞれロビンス、しまうらと書かれている。要するに激安のさらにセール品。店の中はカオスだけれど・・・・
人々の暖かい手が差し伸べられたが、そう遠くない未来、俺達は別々にどこかへ連れて行かれる、そう改めて思った。
一緒にいられるかもなんて、かすかな希望も抱きながら・・・・
そろそろ夕飯の時間。アンナはもらったエプロンつけてルンルン気分。結構似合っているし、お嫁さんモード全開。
今日の献立は昼間の肉屋のもつ煮、キャベツの千切りにメンチカツ、レンチンご飯。
俺達本当によく食う。普通の大人の1人前の食事をしているから、食費がかさむ。ただお菓子とかはあまり好まないが・・・
食事のときアンナに
「なぁアンナ。なんでお前お嫁さんなんだよ?」
かなり真面目な表情で聞く俺。するとアンナ
「だってお嫁さんならずっと一緒にいられるでしょ。ずっとふうくんのごはんとか作れるし。私じゃ嫌?」
「嫌じゃないけど、俺達まだ結婚出来ないよ」
と俺がやはり真顔で返すとアンナ
「私何があっても離れない。塾長もさくらさんも、応援してるって言ってくれたし。それにふうくんだけじゃない、私も頑張る。だからお嫁さんってみんなに言うの」
いつになく真剣な眼差しで言い切るアンナ。
俺だってアンナと離れたくない。2人で築き始めた暖かい空間は逃したくない。
だからアンナの誓いの言葉は頼もしく思えて、まだこの空間は守れると思った。
風呂に入って色違いのペアパジャマに着替えるとまた距離が縮まったような気がした。生地の肌触りや暖かさに
「おそろいのパジャマ着てみたかったんだ。あったかいね」
「うん、それにもっと近づいた気もする」
ふとんに入り並んで合い恋人繋ぎ。そして向かい合って、見つめ合うキスも慣れた感じになった
「アンナ最近飛行船でどこかに行った?」
と気になったので聞いてみると
「このところ夢でどこにも行けないなぁ。もしかすると墜落しちゃうのかなぁ?」
「俺もそう。このところ寝るとそのまま朝。アンナと一緒に行きたいよ。どこかに。それに墜落させないように頑張る」
そう言ってアンナの背後に俺が回って後ろから抱きしめてみた。そうしたら何かいいことありそうな気がしたから・・・・
夢で一緒にどこかに行きたい。それはもしかすると叶わぬ夢なのだろうか?贅沢なのだろうか?
まして2人だけの誰もさわれない国なんて・・・・




