第0話 ~プロローグ~ せんべい布団の飛行船の着陸地の現在
日が暮れるのが早くなり、部活を終え夕闇を背に家路を急ぐ俺。国道はすでにヘッドライトのビームがきらびやかに並んだ大渋滞、駅前大通はイルミネーションやクリスマスの装い、BGMに彩られているが、それを脇目に帰宅を急ぐ人たちの列。
これらをかき分け着いた雑居ビルの最上階の玄関を開けると
「ただいま」
「おかえりなさい、ふうくん♡ごはんにする?お風呂にする?それとも私とするぅ♡」
とチューして出迎えたのは妹の安南。またかと思ったその隙に俺のカバンを持って奥に行く。どれもまだ支度終わってないだろ?そう思いつつ部屋着に着替えて風呂掃除。晩飯の時間までまだありそうだから、部屋で宿題や明日の支度をすることに。
1時間ほどで安南が「あなたぁごはんですよ~♡」と呼ばれて食卓につくと、今日の献立は里芋としいたけ、人参、こんにゃく、鶏肉の筑前煮にほうれん草の白和え、それで終わりかと思いきや安南がどこかのコントのようにふざけた調子で
「にぃらぁぴぃぃればぁいんたんめん~~(ニラピーマンレバ炒め)ぬぅぁまぁたまぁぁごぉぉぉ(生卵)」
とセロテープで鼻の穴とまなじりを思いっきり釣り上げて言ってくる。そんなにいっぱい精力つけられたら、なんかリミッターが外れて人間じゃ無くなりそうで怖い・・・
あっ紹介が遅れたけど、俺の名前は大和田楓雅、14歳中2、例の病気(中二病)はない。そして眼の前にいるのは妹の安南、同じく中2だけど、例の病気の可能性はある。
「この筑前煮俺達がこの家に来て一番最初に食ったおかずだよ」
「そう今日で丸0年だから煮たんだ。私塊の人参食べられなかったけど、柔らかく煮ると甘みが出て美味しいから何個でも食べられるんだよね、だから樹里や寿希也の兄妹もたくさん食べるんだよ」と思い出を語る安南。
「ピーマンも食えなかったけど、しっかり火を通して味もつけるから、苦みを感じないし」
「あとさぁハンバーグとか唐揚げ、フライの日は野菜畑食べてからとか」
「好き嫌いなく食いまくったお陰で俺達丈夫になったけど、安南は育ち過ぎかもなぁ」
と言うと安南は
「えっどこ?おしり?おっぱい?それってさぁ、ふうくんが毎日揉んでたから育ったんだよ」
「おいっそんなことしてないって」
と必死に否定する俺
「だってさぁ男の子って出っ張ってるのがいいんでしょ?」
とドヤ顔で胸を突き出して返す安南
「人の価値が体つきだけで決まるわけない」
と話題を変えようと必死な俺。
食べ終わって片付けを終えると安南が
「お風呂入ってきてね」
と言うからとりあえず安心して風呂場へ、しかし・・・数分後こちらに人の気配が・・・やっぱ安南が入ってきてしまった。
「おまたせぇお背中流しますぅ」
安南が俺の背中を流すが、固まるし理性を保つのに必死な俺。そりゃそうだよ身長166センチでFカップの大人の体の裸が真後ろに居ちゃぁ。改めて下半身をタオルで隠して安南の背中を流す俺。
そして湯船に浸かると、顔と体を近づける安南。小説なんかだと「恍惚の表情」って言うんだろうか?明らかに誘ってるのかもしれない、体制逆転
「いえぇぇいもみもみぃ」
ととりあえず触って
「きゃぁぁ楓雅さんのえっちぃぃ」
と安南に言わせて距離を開け先に上がるが、安南はの目は笑っている。
風呂から上がると今度は俺の部屋にクマが出没した。Fカップのシロクマが尻にクマを忍ばせて。
「なぁ安南怖くないのか?」
「何を?」
「俺達血が繋がってないし、場合によっちゃぁ」
「私ふうくん信頼しているから大丈夫」
と真面目に返すが、腑に落ちない俺。
「じゃぁなんでチューしたり、風呂に一緒に入ったり、夜一緒に寝ようとするんだ?まさか試してからかってるのか?」
真顔で俺が言うと安南も真顔で必死に
「なんかさぁふうくん離れていきそうで怖いんだ。だからつい、ごめん」
「わかったよその気持受け止めた。だからもう少し服着ようね。それから、パンツ晒しておしり枕とかやめようぜ」
安南が俺から離れる恐怖を抱いているのはわかる、少し前に実際そうだったから。
実は俺達戸籍の上では双子の兄妹だけど、血が繋がっていない。10年前二人揃ってこの家に拾われてきた。
「ねぇふうくん。私たち今日でこの家に来て丸10年だよ」
「そうだなぁ。せんべい布団の飛行船に乗って」
「そうそうふうくんが夜寝るとき、不安な私に、飛行船でクルージングに行こうって言って一緒におふとん被って私が抱きついたの」
「隣の家の怒号にビビったんだよなぁ」
「毎日パンの耳に余り物のパンや牛乳食べて」
「本当は誰もさわれない国を作って行きたかった」
飢えや捨てられ離される不安から繋がった者同士。最初から他人同士だったから、兄妹って感覚がないし、小さい頃は恋人としての比重が大きかったからボディタッチもするんだろうか?
「はいここは大人1人用ベッドです。中学生以上の乗り物利用は大人です。なので定員オーバーなのでおやすみなさい」
というと安南はちょっと膨れて
「ふうくんのけちぃ」
と言って部屋をあとにした。
一人シングルベッドであの時のことを思い出した。今でも産みの母親には腹が立つし、一切関わりたくない。
二人だけの誰もさわられない国に行きたかった俺、その道中は凄まじい乱気流や荒天続きだったこと、やがて飛行船は地平線の遥か彼方を音もなく流れ、たどり着いたのは、人々の温もりを感じられ、手を差し伸べてくれる場所だった。
恥ずかしくも、苦々しくも、清らかで、暖かかった思い出をこれから語ってみようと思う。




